第6話 そして新学期なわけだが
新学期。
本来ならワクテカな夏を過ごした後の、自慢大会みたいなんだろうな。
けど、俺はバイトしかしていない。
あげく、病気もなおってない。
泊まり込みで海の家のバイトも一週間やってみたし、色々ブルンブルンしてるお姉さんたちに囲まれたりもしたのに、めっちゃ冷静に対応した――どころかナンパされてるブルンブルンブルン美少女とかも助けてしまった。
ヒーローや。
わい、ヒーローみたいや。
なのに、わいのもう一人のヒーローは一人でエンディング迎えてるんや。
「病気になってから、イベント起こりすぎる……神は意地悪なのだ……いや、それとも俺を治療してくだすっているのか……」
なお、俺のエセ関西弁は、仲の良い叔父さんの影響なので大目にみてくれ。
「あー! 霜崎くん、おはよー」
通学路。
背後から声を掛けられた。
「エ、エリカちゃん……!」
そこには相変わらずカワイイエリカちゃん一名。
ツインテールが揺れる肌が、ほんのり焼けている。
俺の告白なんかなかったみたいな眩しい笑顔。
「あ、これ? 海にいったら、少し焼けちゃって。跡も残っちゃった……みないでね?」
「みない、みない!」
かわいい!
ビキニの跡とか意識させるエリカちゃん、まじ小悪魔!
俺の体のどこかがカッと熱くなるが――それだけだった。
テンションは戻ってくれるが、体は戻らない。
うう……俺、あのころには戻れないの……?
エリカちゃんはふっと別の方向を見た。
「あー! タクマっちおはよー!」
そして駆けていく。
「あ、エリカちゃん……」
その先に、男一名。
やっぱりうっすらと焼けているが……一緒に海へ行った仲だろうか?
「あー! カズくん!」
その先に、また男一名。
やっぱりうっすらと焼けている……あいつも海へ行ったんか?
「あー! みっくん! おはよ!」
その先にまた男一名。
やっぱりうっすらと焼けている……何人と海行ったんだよ……!
「あれは、男を誑かすとどんどん光っていくタイプ」
背後からまたもや声。
振り返れば、やつがいた。
「白銀さんか……」
「残念そうにされると、ちょっとイラっとするな……」
「人を悪く言うからだよ」
「悪くは言ってない。ただ、友達にダメージを与えた人間を観察してみただけ」
「友達ね……」
「そう。ボーイフレンド」
「人畜無害な、フレンド」
「それは友達として治す努力をする。治療に体を使うことだって、当然する。友達のためだし? だからわたしのあの夜の発言は失言でもないし、この出会いは何かを変えるってこと。わたしの計画進行中」
「わかった、わかった。体とか使われても治らないと思うけどな……」
俺の心の傷は、深いのだ……。
俺は歩き出す。エリカちゃん見えなくなっちゃったよ……。
すると白銀さんもついてくる。
「それにしても、エリカちゃん? って子、勉強になるわね。ああやって、男に囲まれてもバランスをとる才能はすごいな」
「エリカちゃんは天才的小悪魔だからな。男三人と海へ行くことだってありうるんだ」
「アッチも3人同時……? 職人技……?」
この人、男嫌いで有名な孤高の美少女らしい(四組男子調べ)けど、実はたいそうな残念女子なんじゃね……?
ちなみに、エリカちゃんは、そんなことはしません。
あと、普通に喋れたのも、よかったな。
人間とはたくましいものなのだ。
かといって、治ったわけでもないのが、逆にやばい気もするけども……本当にこの自称ガールフレンドは、俺の治療薬になってくれるんだろうか……?
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