第3話 見た目は赤子、頭脳は大人

まあ、囁きもとい洗脳を受け続けてから2年が経った。僕も二歳になったというわけだが、今生の目標である「気兼ねなく関われる友人を探す」という目標は今だ達成ならず。そうだよな、だってまだ二歳だもん。外に出るどころか、人と話すということ自体あまりしていない。一応拙いながらも単語は喋れる年になったのに。まあ、でも僕は出来れば無口に生きたい。ということで、サブ目標の「無口に生きよう!」は順調だ。


母親は未だに洗脳をかけてくるし、父親は会いに来ないし、まあ現状あまり変わったところはない。僕に完璧を求める母親は英才教育をついに受けさせることが決まったみたいだが。年が早ければ早いほどいいらしい。まあ、でもこれ自体は助かる。だって「体は赤子、頭脳は大人」の僕は一日中幼児向けのおもちゃで一人で遊ぶという行為は退屈だ。ものすーんごく。だから、頭を動かすという刺激自体今の僕には飢えていたものだったのだ。



ということで、今日は家庭教師との顔合わせがある。母親は優秀な家庭教師なだけでなく、僕にも合った勉強方法を教えてくれる家庭教師という基準で選んでくれたそうだ。僕が気に入らなかったら突き返しても良いと事前に言われている。


そうなのだ。母親は夜の囁きもとい洗脳が無くなれば普通に良い母親なのだ。教育熱が高すぎるというだけで。父親は知らん。あったこともないし。



そして、家庭教師(僕への初めてのお客さん)が来るということでいつもより身だしなみにこだわってしまうものだ。僕の部屋には大きなドレッサーがある。その引き出しに化粧水や美容液、乳液や日焼け止めなどのスキンケア用品がずらりと並んでいる。また、その隣の引き出しにはワックスや櫛などのヘアケア用品もある。実はこれも母親の方針だ。曰く、男児あろうといえど身だしなみには気を使いなさい、ということだそうだ。


僕はメイドを呼びつけて髪を整えてもらう。なんか、あれだよなあ。人にドライヤーをして貰ったり、髪を整えてもらったりするのってとても心地がいいんだよなあ。


僕はだんだんうとうとしてくる。鏡にも少し眠たそうな僕の姿が映りこんでいる。そんな僕の様子にメイドはニコニコと笑って言った。

「お坊ちゃま、寝てはいけませんよ。せっかくセットした髪が崩れてしまいます。あと、いつもの美少女ぶりも。」

おい!僕は男だ!!そう思いながらメイドを睨みつけるとまたニコニコ笑う。このメイドはいつも失礼なのだ。容易く僕の地雷に触れてくる。クビにされるのが怖くないのだろうか。まあ、クビにできるわけないが。本当のことだし。


そうなのだ。僕の容姿は非常に女々しい。初対面の人が僕を見たら百発百中女の子と思うほどに。まあ、女々しくてもちゃんとした美形なのだが。初めて自分の容姿を見たときはびっくりしたものだ。ショタコンではないにしろ、この容姿には惚れ惚れした。


艶やかな黒髪に母親似の目元の黒子、ぱっちり二重にぷっくりな唇、中性的な顔立ち。二歳ながら将来を約束されたような容姿だった。



ああ、そうそう。”母親似”で思い出したが、母さんが二人目を妊娠した。僕はお兄ちゃんになるそうだ。


なんか不思議な感じだ。転生して2年。父親に会ったことがなければ、母親も時々しか会いに来ない。正直に言えば、前世よりも家族仲は希薄だ。前世も家族に言いたいことも言えない。そんな仲だったが、今世では会うことすらあまりない。


生まれてくるのが弟にしろ妹にしろ、可哀そうだ。こんなんでは親の愛情すらまともに受けられないだろう。だから、僕だけは構い倒してやる。そう決めている。






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