第7話

「かゆいところは

ございませんか~」


結局、飛車角ぬきで やっても

将棋で、八夕には 勝てなかった

多香緒だが、この家に 住み込みで

働くことになり、ゴンボースキーは

妹が、出来たように よろこび

八夕も、毎日 お風呂で背中を

流してもらい、うれしそうだ。


「おおっ

もう少し 右側の」


多香緒に、指示する 八夕だが

最初の頃より、だいぶ打ち解ける

ことが、出来たようだ。


「こうですか」


八夕の、背中を洗うタオルを

横へと、ずらす 多香緒


「おう そうそう」


すごく、気持ちよさそうな

声を、出す 八夕


「それで あの~」


八夕の、耳元で ささやくように

言う 多香緒


「なんじゃ?」


小声で、聞き返す 八夕


「あさってから 2学期が

はじまるんですよ」


こうなったら、なりふり構って

いられない。

この、テコでも 動かない 八夕という

男を、前進させて オソウメンを

倒さないと、という 使命感に

動かされる 多香緒


「うむ・・・

えーと たしか 高校生だったか ??」


少し、上の方を見て 思い出す 八夕


「はい 高校1年です」


アイドル活動の傍ら、高校生でも

あるので、北海道で このまま

のんびりとも いかない 多香緒


「・・・そうか」


察して、少々 さみしくなる 八夕

この数日で、北海道の観光地を

あちこち、3人で 回って

おいしい北の幸も、たくさん

ご馳走に、なった 多香緒


「それで なんで オソウメンを

すぐ 狩らないのか

そろそろ言ってくれても

イイんじゃないかなって」


二人して、なにかを隠している

ことは、見当が ついたが

どうも、核心に 迫ることが

出来ない。


「うむ

では 少しだけ 話すとするかのう」


満を持して、説明する気に

なってきた 八夕


「はい」


身を、乗り出す 多香緒

いよいよ、前進するかもと

期待する。


「一緒に 湯船で 話そう」


「はい」


返事するやいなや、脱衣場で

全部脱ぐ 多香緒


「あ゛ーッ」


ゆっくりと、湯船に浸かる 八夕

多香緒も、洗面器で かけ湯をして

入る。


「・・・それで」


向こうを、向いている 八夕を

振り向かせる 多香緒


「ああ そうだな

ゴンボースキーが おるじゃろ」


ゴンボースキーも、この一軒家に

一緒に、暮らしている。


「はい 彼がなにか ??」


どうやら、ゴンボースキーが

原因だったらしい。

盲点だったと、思う 多香緒


「うむ ゴンボースキーの

親戚の 女の子が 行方不明になってな」


小声で、話しはじめる 八夕

周囲を、警戒している。


「えっ ??」


ビックリする 多香緒

一緒に、暮らしていて そんなこと

一言も、クチに しなかったからだ。


「ゴンボースキーの

2こ下だったか ちょうど お主と

同い年では ないかな」


だいたい、多香緒と同じくらいの

年齢らしい。


「それって まさか」


とても、いやな感覚


「そうじゃ

オソウメンが 絡んでおる」


行方不明ということは

拉致して、臓器売買している

可能性が、濃くなった。


「それじゃあ

すぐにでも 救出をしなくちゃ

いけないんじゃ ??」


臓器が、取り出される前に

助けなくては ならない。


「うむ

そういう考えもあるが

人質を 取られているという風に

とらえることも 出来るだろう」


下手に、突入すれば 証拠隠滅の為に

口封じする、蛮行に出る可能性がある。


「・・・そうですよね」


唇を、噛む 多香緒


「その子の名が ファジレ

そして その子を 探す為に

オソウメンの 配下に

スパイを 送りこむことに

成功したのじゃ」


なにも、動いてないワケでは

なかった。


「それで こんなに

時間が かかっているのですね」


やっと、理由が わかったが

悩ましい 多香緒


「そうじゃ

わしも すぐにでも オソウメンを

血祭りに あげたい」


本音を、吐露する 八夕


「そうなんですね」


こんな、感情的になった 八夕を

見たのは、初めてだ。

いつもは、ニコニコしているが。


「じゃが

そう 急いで 万が一 ファジレの身に

なにかあって ゴンボースキーが

闇落ちするのは 避けたい」


ゴンボースキーの、今後を考えると

頭の痛い 八夕


「そうですよね・・・」


どうすれば、イイのか わからなくなった

多香緒


「お主にも

すぐに 言いたかったのじゃが

オソウメンという男は

恐ろしく 狡猾なヤツだから」


声に、つまる 八夕


「はぁ」


首を、かしげる 多香緒


「もしかして お主がスパイでは

ないかと 警戒しておったのじゃ」


いきなりあらわれた、多香緒のことを

疑っていた 八夕


「あたしがですか ??」


また、ビックリする 多香緒


「うむ すまんかった」


謝る 八夕


「スパイって 勤勉な人が

やることでしょ

あたしには 向かないなぁ」


苦笑いする 多香緒


「そうなのか」


首を、かしげる 八夕


「それで こっちの スパイは

なんて言ってますか ??」


最新の、情報を 知りたい 多香緒


「いまだに ファジレの

消息が つかめないらしい」


表情が、暗くなる 八夕


「そうですか

あたしは 一旦 東京へ帰って

北海道には また来ます」


そういう事情なら、すぐに

行動することはないと、判断する

多香緒


「おう

詳細が わかったら こちらから

メッセを 送るからな」


申し訳なさそうな 八夕


「はい」

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