第6話

「なに 話せばイイんだよ・・・」


安達太良は、本部が 妙に気を使って

くれたことに、恨みを感じている。

南米に行く為に、一旦 ロサンゼルスに

向かう飛行機に、乗って気がついたが

安達太良の右の席に、かななん

左に、ねるなのちゃんが 座っている。


「・・・落ち着いて寝れねぇ」


ねるなのが、寝返りで 安達太良の

左肩に、もたれかかる。


「ヒッ・・・・・・」


「楽しそうね」


斜め前の座席で、サングラスを

かけた ビショップが

顔の上だけ、背もたれから出して

安達太良を、見つめている。


「ごッ

誤解だよ ! 全然」


ブワッと、汗が出る 安達太良

まるで、針のムシロだ。


「ふーん」


その頃


「こんにちわ~」


北海道で、八夕師匠が 根城にしている

一軒屋に、多香緒が 訪問すると


「ああ 君が 話しは聞いてるよ」


縁側で、腰かける 初老で 和服を着て

メガネを、かけている 男と

庭で、スクワットを している 男が、いる。


「はい はじめまして

高尾多香緒です よろしくお願いします」


ペコリと、頭をたれる 多香緒


「おお ハキハキと イイ子じゃ

わしは 八夕

そっちに おるのが ゴンボースキーじゃ」


縁側に、座っている 八夕が

庭に立っている 男を紹介する。


「はじめまして ゴンボースキーさん」


ニコッと、笑いかける 多香緒


「うん はじめまして

ウワサは かねがね耳に

しているよ」


安達太良とは、うってかわって

目付きの、優しそうな 青年だ。

その様子を見て、安堵する 多香緒


「ウワサですか?

どんなんでしょうか??」


いたずらっ子ぽく、笑いながら

聞く 多香緒


「アイドルを やりながら

ハンターを やっているってね

すごいよね」


おべっかを言う ゴンボースキー


「アハッ

よかったです 悪い ウワサじゃあなくて」


ホッとする 多香緒


「時に 将棋の ルールは

知っておるかの ??」


多香緒に、いきなり 将棋を

やろうと、誘う 八夕


「えっ

はい パパと よく 二歩ハンデルールで

戦って いました」


父親との、日常を なつかしむ 多香緒


「二歩ハンデとな ??」


ローカルルールに、興味を示す 八夕


「はい

あたしが パパの 歩を取ると

どこでも 歩が 置けるルールです」


公式な、ルールでは 一発で

反則負けとなる、二歩。


「なるほど

普通なら 歩の先に 歩は置けないが

置けるのが ハンデなのか

面白い わしと やろう」


やる気マンマンな 八夕


「イヤ 遊んでいる場合じゃあ

ないでしょ」


なんで、縁側で お茶を すすりながら

ボーッと、しているのか理解できない

多香緒

こんなことを、している間に

命が、失われていく。


「遊んでいるわけでは ないぞ」


チラッと、ゴンボースキーを

見る 八夕


「それじゃあ なんで

オソウメンを 放置しているんですか??」


よほどの事情があるなら

聞いておかないと、支障が

あるかも、知れない。


「時が 満ちるのを

待っておるのじゃ」


なにかを、隠すように

明言を、避ける 八夕


「へっ?

それじゃあ 将棋で あたしが

勝ったら すぐ オソウメンを

狩りに行きましょう」


こっちは、2学期が はじまる前に

片付けたいと、あせる 多香緒


「うむ

それも 一興」


余裕綽々な 八夕


「ハンデもらっても イイんですよね??」


ほほえみながら、ねだる 多香緒


「もちろん 変則ルールで

構わんよ」


孫を、あやすような顔になる 八夕


「やったー」


両手を、上げて よろこぶ 多香緒


「喜ぶのは 勝ってからな」


メガネが、キラリと光る。


「はい 八夕師匠」


一瞬、八夕の もう1つの面を

垣間見た気がする 多香緒


「外国人の オレが言うのも なんだが

八夕師匠は 強いぞ」


ゴンボースキーが、気をつけるよう

進言する。


「ルール 知ってるんですか??」


そう、多香緒が聞くと


「少々ね」


人差し指と、親指の間隔を

少し開ける ジェスチャーをする

ゴンボースキー


「そうですか

後で やります?

ノーハンデで」


この人なら、ハンデ無しで勝てそうと

思う 多香緒

将棋のコマを、並べながら聞く。


「弱いので 逆に ハンデが欲しいです」


多香緒に、ハンデを 要求する

ゴンボースキー


「そうなんですねー」


ゴンボースキーが、下手に出てるので

気分を、良くする 多香緒


「よし それじゃあ はじめると

するかの」


コマを、並べ終える 八夕と 多香緒


「先攻 やってイイですか??」


少しでも、有利に動いて

歩を、取りたい 多香緒


「おう もちろん

むしろ 飛車角は そのままで

よいのか??」


ハンデの定番と言えば

強い人の、飛車角抜きと決まって

いるのだが


「本当は 欲しいですけど」


初対面で、実力も わからない

相手に、いきなり大きな

ハンデは、気がひける 多香緒


「遠慮が 命取りに なるかものぅ」


メガネを、クイッと上げる 八夕


「おどしますね」


ニヤリと、笑う 多香緒


「ワシが 勝ったら なんでも

聞いてもらうぞ」


腕組みする 八夕


「えーっ」


いきなり、飛び出た言葉に

驚く 多香緒


「ハンデまで 付けておるんだぞ」


優しく言っているようで

そうじゃない言い方。


「うん・・・出来ることなら

やりますよ」


どこで、気分を害するか

わからないので、素直に従う 多香緒


「やっった もう 八夕師匠の

背中流さなくてイイんだ !!」


突然、ゴンボースキーが

大声を、上げる。


「えっ??」

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