第4話

「どうした?

遠くを見て」


縁側に座る八夕が、将棋盤から

視線を起こし、メガネを なおし

ながら、背を向け 庭に立つ

ゴンボースキーに 聞く。


「あっ

はい 八夕師匠

故郷の 両親のことを

考えて いました。」


少しだけ、振り返り 八夕に

視線を向け、また 虚空を

見つめる ゴンボースキー

青年の、背中に 哀愁が

漂う。


「そうか

ところで 将棋のルールは

覚えたか??」


少し、しんみりなりそうな

空気を感じ、話題を変える 八夕


「いえ

すいません」


八夕に、教えてもらったの

だが、ボロ負けするので

やりたくない ゴンボースキー


「そうなのか」


数年前


中央アジア

デルスタン


「まだ 帰って来ないのかな」


屋内に作られた、ガレージには

黒い砂利が、敷き詰められ

ヒンヤリと、している。

少年は、父親の帰りを

待ち続けている。


「もう 3日だぞ」


少年の名は、ゴンボースキー

父親、ヌーホの帰りを

首を長くして、待っているの

だが、近隣の ウクライナから

帰って来ない。


「遅くても 2日で帰って来る

のに なにやってるんだよ」


万が一の、事態も 想定して

心配する ゴンボースキー


その頃


「♪追い越したんだよー」


呑気に、鼻歌を 歌いながら

トレーラーを、運転して

いる 男。


「おうおう

どんどんパスして行け」


荷物の重量が、重すぎて

どんどん、車に 抜かされて

いく。


「やっぱり 2両は

重すぎたなぁ」


無茶をしたと、後悔する 男。

ゴンボースキー少年の

父親、ヌーホだ。


「よーし

もう少しだ」


ゴゴン


唸りを上げ、坂道を上がる

トレーラー。


「パパだ」


エンジン音で、判断して

ヒョイっと、立ち上がり

出迎えに行く ゴンボースキー


プシューン


「帰って来たぞー」


運転席から、飛び降りる

ヌーホ


「おかえり

今度こそは 巻き込まれて

死んだかと 心配したよ」


ロシア軍が、ウクライナに

侵攻して、しばらく

たつが、ますます戦闘は

激化している。


「なぁに

大したことはない

今回は 2両 持って帰って来た

から スピードが

出なくてよ」


シートの、掛かった荷台を

ポンポンと、叩く ヌーホ


「えーっ

2両も 持って帰って来たって

もう 100両くらいあるのに」


ヌーホは、壊れて 使いものに

ならなくなった、戦車などの

車両を、自分の家の裏庭に

大量に、並べている。


「違うな

今回で 120両に なった」


自慢げに、話す ヌーホ

ほぼ、ロシア軍が

ウクライナに、放置した

モノを、タダで集めて

いる。


「そんなの どっちでもイイよ

売れなきゃ ただの 鉄クズだ」


イラ立つ ゴンボースキー


「そのうち 売れるだろ

でも 今回のは タダじゃあ

なかったぜ

1両につき 3ドル取られた

ヤツらタダで仕入れといて」


どうやら、前回と違って

ウクライナに、直接入って

持って来たのでは、ない

らしい。


「オレは 国連ハンターに

なりたいんだよ

1万ドル 必要なんだよ??」


夢を、語る ゴンボースキー


「まぁ

この 戦車たちが

全部 売れたら それくらいには

なるさ

見てみろ」


ファサ


そう言うと、荷台に 掛けられた

シートを、勢いよく外す ヌーホ


「ロシアの 最新型と 骨董品の

新旧戦車だぜ」


最新鋭のと、対称的な ボテッと

した、戦車が 仲良く並んでいる。


「すごい キレイな状態だね」


ボディに、さわってみる

ゴンボースキー


「ああ

ロシア軍が ウクライナに

攻め込んで すぐに 鹵獲した

のを 盗んだらしくてな」


盗まれたモノを、さらに

盗んだという。

めちゃくちゃだ。


「それじゃあ

ウクライナ軍の人

困ってないかな??」


余計な、心配をする

ゴンボースキー


「まぁ 元々ロシアの

だったワケだし」


ニコッとする ヌーホ


「返して あげた方が

イイんじゃないかな」


少々、小声で言う

ゴンボースキー


「返すったって

どっちにだよ」


難しい質問を、する ヌーホ


「うーん」


腕組みして、考えこむ。


「イイか

これ売って 偽造パスポートを

作って 国連ハンターに

なる

それしか お前の夢を

実現する方法は ねえ」


すごく、真っ当なことを言う

ヌーホ


「・・・うん

わかったよ」


しぶしぶ、納得する

ゴンボースキー


「わかったなら

下ろすの サッサと

手伝えっての」


「はーい」


ゴゴゴン


轟音を、たてて エンジンが

かかり、真っ黒い排気が出る。


「ホントなら

博物館に あるような

代物だから 慎重にな」


「うん

わかったよ」

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