貴女の夫、奪ってやったわ!

うにどん

本編

『貴女の夫、奪ってやったわ!! 今、私と一緒にホテルに居るの! 早く離婚届書いてよね!』


 キャハハハハ!! と十年前、私より結婚するなんて許せないと一方的に絶縁してきた幼馴染から久しぶりの電話から発せられた言葉に私は信じられないと言った顔で隣にいる夫を見る。

 夫は私の顔を見て何があったのか察したのだろう、小声でスピーカーにしろと言ってきた。

 そう彼女が奪ったという夫は今、私の隣に居るのだ。


 幼馴染である彼女はいつも私を見下して、私を下げる発言ばかり。

 周囲は早く彼女と縁を切れと言ってくれたけど、母が幼馴染をとても気に入っていおり何かあると幼馴染の肩を持つため離れにくかった。

 でも、結婚する前に母が亡くなったこと、そして結婚を理由に彼女から一方的に絶縁されたから私は後腐れなく彼女と縁を切った。当然、夫を彼女に紹介なんてしてないし結婚式にすら呼ばなかった。だから、彼女は夫を知らない。

 今の時点、彼女の隣に居るのは私の夫を名乗る不審者ということになる。

 夫の言われたとおりスピーカーにして、夫と共に話の続きを聞く。


『驚いたでしょ? でもね、私より結婚したアンタが悪いのよ。これでおあいこにしてあげる』

「ねえ、夫とは何処で会ったの?」


 楽しそうな彼女に私は冷静に質問する。

 そんな私が気にくわないのか彼女は盛大に舌打ちをした。


『相変わらず、嫌な女! 昨日、アンタが私を結婚式に呼ばず引っ越したから文句を言いにわざわざアンタの家を探して来たら家の前をウロウロしてたのよ。それで話しかけたら、アンタの夫だって言ったのよ』


 一方的に縁を切ったくせに結婚式に呼ばれると思っていた事と文句を言うためにわざわざ地元より遠方のこの地に探してまで来た事に引く。

 そこまでして私を罵りたいのかと呆れていたら、夫は見てくると玄関の方へ向かった。玄関に設置されているカメラの映像を見に言ったのだろう。

 昨日は連休ということもあり家族で旅行に出掛けていた、その為、家には誰も居なかった。


――もしかしたら、泥棒かもしれない。


 そう思い、彼女にそれを話そうとしたとき。

 夫が血相を変えて、明日、警察に行こうと言ってきた。

 夫の表情を見て、私は遠方に引っ越すことになった理由、玄関にカメラを設置した理由の存在を思い出し、血の気が引いた。

 私は深く息を吐き、彼女にこう告げた。


「あのね、貴女の隣に居る人は私の夫じゃない。私のストーカーよ」

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