第23話 閑話:紅葉姫
「どうやら、間に合ったようね」
ノクタリア王国に設置された【
隣に座す【森林王】がゆっくりと背中を撫でると、「もう、大丈夫よ」呼吸を立て直して、老婆が微笑む。
【紅葉姫】が【
その間ずっと【紅葉姫】は相方である【森林王】と共にノクタリア王国を護ってきたが、それももう限界に近いだろう。
「無茶をするだけの価値があったか? あの
長年の相方の口を、【紅葉姫】はそっと指で塞ぐ。少女の頃から、この娘は何も変わらないな、と【森林王】は溜息を吐いた。
いつもそうだ。二歳ばかし早く生まれたからって、いつもいつも【紅葉姫】は【森林王】を子供扱いする。
「【
「しかし、それは諸刃の剣でもある」
フィーノス、タリアサスの両国は異例の速さで陥落したが、その手段にはどうやら欠点があったようだ、というのが
だからそれを、残る六国に対し
「この命はもうフィーノス王国奪還まではもたないでしょうし、子供たちにはなるべく多くの可能性を残しておきたいのよ」
「当たり前のように自分の死を語るな。残される者の寂しさを少しは考えろ」
厳しい顔で指摘された【紅葉姫】は素直に謝罪を口にした。だが、それは変えようのない事実でもある。
「【紅葉姫】、【街並姫】、【風花姫】、【青波姫】、【鋼鉄姫】、【夕立姫】。紛れもなく歴代最高の
「歴代最高は常に更新されるものよ。心配いらないわ」
立ち上がろうとした【紅葉姫】を、そっと【森林王】は抱き上げた。照れる彼女の抗議を無視して、病室へと送る。
「次なる世代よ、どうか私たちを超えて行く様を彼女に見せてやってくれ……」
【紅葉姫】を病室のベッドに寝かせて退室した【森林王】は自室に戻って一人、そう静かに涙した。
最高の六姫の時代は、もうすぐ終わる。願わくば、【紅葉姫】が最期に希望を抱いて旅立てますように、と。
黒泥の姫と硝子の王 朱衣金甲 @akai_kinkou
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