(3)

 皇宮とは基本的にお役所だ。

 政務が行なわれている「表」のみならず後宮もそうだ。

 書類無くしては、皇国の統治は愚か、千人を超える人間が居る皇宮の秩序さえ保つ事は、おぼつかない。

 昼食後、すぐに出た筈なのに、宿下がりの許可の書類を5箇所で確認してもらうのが終る頃には、まだ十分に明いが、日は沈みかけている刻限になっていた。

 まずい。

 ただでさえ、今晩中に証拠を集めないといけないのに、時間が無い。

 皇宮前の広場では、人だかり。

 「華の民」の服を着ている者が多いが……5つの主要民族以外の少数民族の服も、ほんの少しとは言え居るには居る。

 更には、遠い異国の黒い肌や白い肌に明るい色の髪や目の者達さえも……。

 ドタ……っ。ドタっ……ドタっ……ドタっドタっ……。

 背後から妙な足音がする。

 人の足音では無い。

 音が大き過ぎる。

 周囲の人々は、その足音の主を見て、ざわめいているようだ。

 馬・牛・駱駝……いずれとも違う足音。

 一番近いのは……まさか……。

 南方の国から献上された象や犀……ほんの何度かしか聞いた事が無いが、それに……違う……。

 足音の拍子リズムが……体が大きい動物のものだが……妙だ。

 何かが……そうだ……。

 振り向いた時、ようやく違和感の理由に気付いた。

 

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