第29話:なんで帰したんだよ。

プリティスがルークのところに来ていなかったら・・・ ルークは

すでにこの世に存在していなかったかもしれない。

ルークにとってプリティスは命の恩人、運命の人だった。


プリティスからしてみれば、未来の旦那様の命を救うことは自分にとって

当たり前のことだった。


本来ならプリティスは自分の伴侶を求めて他のエルフの里の男性エルフを

探しに行くか、はたまたアテのない旅に出なくちゃいけないところだったが

ルークという彼がいたから彼女は、その苦労をせずに済んだ。


元来、他の里の男性エルフはプライドが高く情に薄く、女性のエルフを下に

見下してる傾向にあるから、ミルウィーズの女性エルフは男性エルフがいる

里には極力行きたがらない。

だからプリティスは運が良かったのかもしれない。

子供の頃から運命は決まっていたんだから・・・。


いくら魔法が使えても、自分の旦那さんは出せないからね。


さてルークが完治してからチャーリーはまた頻繁にルークの家に遊びに

来るようになった。


今日もチャーリーが原付バイクに乗ってやってきた。

チャーリーがルークの家にやって来た時、ちょうどルークが庭で車を

洗っていた。


生まれた赤ちゃんヤギ、アリエラも元気で野っ原を駆け回っていた。


「ヤギちゃん、元気そうだな」


「おお、チャーリー・・・」


「ルーク、もうすっかり元気だな・・・ 」


「ああ、プリスがいなかったら、ヤバかったけどな」


「プリスは?」


「帰ったよ・・・自分の里に・・・」


「そうか・・・帰ったのか・・・」

「え?、うそ!!」

「まじで?」

「なんで?、どうして?・・・」

「帰ったって?・・・」

「なんで帰したんだよ?」

「ってか、彼女が帰ったって言うのに、なんでおまえそんな呑気に車なんか

洗ってんだよ?」


「待てよ・・・もしかしておまえら、もう夫婦喧嘩か?」


「あのな、まだ結婚もしてないのに、そんなことあるわけないだろ」


「じゃあ喧嘩以外何があるってんだよ」


何も知らずに、あたふたしてるチャーリーを見てルークはおかしかった。


「あのな・・プリスは、もろもろの中間報告に一時、里帰りしただけだよ」

「お母さんに私たちうまくいってるよって報告に帰ったんだ」


「中間?・・・報告???」


「・・・なんだよ、一時的な帰郷かよ・・・戻ってくるのか・・・

あ〜びっくりした」


「なんで、お前が驚くんだよ、関係ないくせに・・・」


「関係なくはないだろ、いろんな危機をかいくぐってきたぜ、俺たち」


「まあな、病気になった時は心配かけたな・・・いろいろ感謝してるよ」


「まあ、俺は見てただけだけどな・・・プリスが全部頑張ったことだし・・・」


「いやいや・・・ちゃんとプリスのエスコートしてくれてたことに感謝してる

って俺は言ってるんだよ、チャーリー」


「おまえに、お礼なんか言われたら寒イボが出るけどな・・・」


「俺いつもおまえをからかってるけど、今回は正直な気持ちだよ」


「プリスがいなかったら俺じゃ、おまえを助けられなかったよ」


「そうだな、彼女がいなかったら俺はここにいなかっただろうからな」

「プリスにも感謝してる・・・」


「さあて、プリスが帰ってきたら、本格的になるな・・」


「え?、なにが本格的になるって?」


つづく。



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