第30話:君は奇跡のエルフ。

「え?、なにが本格的になるって?」


「だから婿として向こうの親に挨拶だろ・・・娘さんをくださいって・・・」

「それに式場も決めないといけないし・・・新婚旅行だってあるし・・・」

「たとえば海外とか?・・・」


「まじで言ってる?・・・おまえ、まだ学生の分際だぞ」

「学業をおろそかにして結婚だと・・・・俺が許さん」


「別におまえの承諾なんていらんわ」

「さっき、離婚したのかって言っといて・・・なんだよ」


「でも、おまえは本当にいいやつだなチャーリー・・・」

「おまえが親友でよかったよ」


「だから寒イボが出るって・・・それに俺がいいやつって今頃気づいたか?」


「今さっき言った結婚だとか新婚旅行だとかって言ったことは全部冗談だよ

・・・結婚なんてずっと先の話だ」


「いやいや、おまえなら、やりかねないからな」

「今度遊びにきた時にはプリスのお腹がでかくなってるかもしれないしな・・・」


「ははは、おまえも未来が予知できるのか?」


「めでたいことなら現実になったっていいだろ?」


「たしかにな・・・」


「俺、思うんだけどさ・・・」

「きっとプリスは俺の命を救うために俺のところにやってきたんだと思うんだ」

「あの子供の時、将来を誓い合った時、あの時から彼女は全部予感してたんだ」

「きっとそうだ・・・」


「そうだな、そうかもな・・・」


ルークはそう言ってプリティスを探すように青く広がる空を見あげた。

それを見たチャーリーも空を見上げて言った。


その頃プリティスは母親への報告と用事をすませて再びルークの元に

向かっていた。

これからは本気でルークと暮らす・・・もう、故郷には当分帰らない。

プリティスはそう自分に誓った。


チャーリーはプリスが帰って来たら、また来るからって言って暗くなる

前に原付で山を降りて行った。


その日の夜遅く、ルークはプリスが帰ってくるだろう方角を窓から見ていた。


すると、星空に混じって、ひとつだけ輝く光がふっと見えた。

その光はどんどん近づいて大きくなって、やがてルークの家の前に降り立った。


「ムーンナイトだ・・・プリス」


ルークは大急ぎで飛ぶように階段を駆け下りた。

その勢いにディナーの用意をしていたソフィアさんがびっくりした顔で

ルークを見た。


「なに・・・え?、ルーク?、どうしたの?」


「プリスが帰ってきたんだよ」


ルークは急いでドアを開けて外に飛び出した。


「プリス!!」


「ただいま、ルーク」


「お帰り、プリス・・・疲れたろ?」

「さあ、早く家に入って・・・」


「うん、でもその前に・・・」


そう言うとプリティスはルークに抱きついた。


ソフィアさんはルークのあとに外に出てきたが、すぐに家の中に

引っ込んだ・・・ふたりの邪魔しちゃいけないと思ったみたいだ。


「お母さんに全部報告して来たよ・・・」


「うん・・・で?どうだった?賛成してくれた?お母さん」


「お母さんは最初っから賛成だよ・・・ルークのところに行きなさいって

私の背中を押してくれたの、お母さんだもん」


「素敵なお母さん」

「なんてたって奇跡の娘を育てたお母さんだもんな・・・」


「奇跡?」


「そうだよ・・・君は奇跡のエルフだよ・・・僕にとって君は命そのもの」

「君と僕は一心同体・・・だから一生離れることはないんだ・・・」

  

「あのさプリス・・・俺、学校卒業したらバイク買って旅に出ようと思うんだ」

「もちろん後ろのシートにプリスを乗せて・・・それで旅の目的地はプリスの

故郷エルフの里ミルウィーズだ」


「どうしてもお母さんに会って僕があなたの娘さんのお婿さんですって

ご挨拶しとかなきゃね」


プリティスはもう一度、ルークに抱きついた。


「ねえルーク、キスしていいって聞かないの?」


「聞くのはファーストキスの時だけだよ・・・でも、キスしていい?」


プリティスはクスって笑った。


彼女が「いいよ」って言う前にルークはプリティスにキスしていた。


お幸せに、💝


つづく。




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