第4話:プリティスの誤算。

ルークはイケメンに成長していた。

ルークの家は彼が幼い時、両親が離婚したため父親がいなくてプリティスと同じ

母子家庭だった。


その肝心のルークがプリティスのことをすっかり忘れていた。

子供の頃、将来を誓い合った仲のに、なにも覚えてないって・・・。


「さあプリティス、そこに掛けて」


母親はキッチンの椅子を彼女に進めた。

プリティスは母親の勧めのままに椅子に座った。


「ねえルーク、何も覚えてないの?」


そう言いながらルークの母親はプリティスに暖かい紅茶を出してくれた。


「覚えてない・・・」

「俺って子供の頃の記憶あんま、ないんだ」

「君・・・ごめんね・・・君のことも、子供の時いたのかな〜くらい・・・

それも漠然とだけど」


ルークのあいまいな態度・・・子供の頃あんなに遊んだのに・・・。


プリティスは、ときめきを抱えてこの地球に来たことを思うとなんだか、

恥ずかしくて、情けなくて、悲しくなってきた。


(本当に私のことなにも覚えていないんだね?)


「あの・・・私、帰ります・・・」


プリティスはてっきりルークが自分のことを、暖かく迎えてくれると思って

夢見ていた・・・。

それゆえルークが自分のことを覚えていなかったことがルフィアにはショック

だった。


「そんなに急がなくても・・・」

「せっかく遠いところから来たんだから、しばらくこの家でゆっくりすれば?」

「来たばかりで疲れてるでしょ、帰るにしても少し落ち着いてからにしなさい」

「もしかしたらルーク、何か思い出すかもしれないし・・・ね」


「俺、夢みたいで、あやふやなんだ・・・時間があれば、もしかしたら

思い出すかも・・・」


ルークがぼそっと言った。


「子供の頃のことなんて・・・すぐには思い出せないよ」

「なにかさ、きっかけでもあれば思い出すかもしれないけど・・・」


そう言いながらルークは自分には関係ない話だと言いたげに、

二階の自分の部屋にさっさと上がって行ってしまった。


「やっぱり私帰ります・・・」


お茶を飲み干したプリティスはそう言って立ち上がっ た。


「お騒がせしました・・・お茶美味しかったです、 ごちそうさまでした」


ルークの母親が止める間もなくプリティスはお辞儀をして急いで玄関を出た。

すぐにルークの母親が後を追ってきた。


「本当に帰っちゃうの?」


「はい・・・ありがとうございました」


「ねえ、そんなに急がなくてもいいんじゃない?・・・」

「今晩うちに泊まって帰るのは明日にしたら?」


「いえ、いたら辛くなるだけですから・・・」

「すごく期待してここに来たんですけど・・・そう思った私が悪いんです」


そう言ったプリティスは意気揚々とこの地に来た自分がバカみたいに

思えて、このまま長居をしたら悲しくてまじで泣いてしまいそうだった。


「明日になったらルークの記憶が戻るかもしれないわよ」

「慌てて帰らなくても・・・」


プリティスはこれ以上話すと本当に涙がこぼれ落ちそうだった。


「さよなら、ルークのお母さん・・・お世話になりました」


「あ、私、ソフィアって言うの・・・元気でねプリティス」


「さよならソフィアさん」


プリティスはもう一度お礼を言って、呪文を唱えた。


《ムーンナイトアルシモネス・・・》


すると空間からキラキラ輝きながらムーンナイト「杖」が現れた。


「あなたも・・・あなたも、あなたのお母さんみたいに空を飛べるのね」


「はい、エルフの里まで休憩しながら五日くらい飛べば帰れます」


外でプリティスと母親の声が聞こえたので、ルークはなにげなしに

窓の外をガラス越しにのぞいた。


つづく。


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