第5話:君はあの時のエルフ。

「お母さんによろしくね」


「はい、ありがとうございます・・・じゃ〜・・・さよなら」


そう言ってプリティスは、宙に舞い上がった。

それを見ていたルークが・・・何かを思い出して、叫んだ・・・それは

突然のフラッシュバックだった・・・。


「プリティス!!」

「プリス」


「そうだプリスだ・・・思い出した・・・君はあの時のエルフだ・・・」


プリティスが宙に舞い上がった姿を見て、ルークの閉じられた記憶の扉が開いた。

ルークは思わず窓を開け放って叫んでいた。


「プリス・・・待って・・・」

「空を飛ぶ女の子なんて君しかいないよ」


プリティスは、声のする方を見て宙にとどまったまま、ポカンとした顔で

ルークのほうを見ていた。


ルークが右手を上げて今にも窓から飛び出しそうにして必死でプリティスの

名前を呼んでいた。


ルークがなにかを思い出したことで、地上に降りたプリティスは、帰ることを

一時、どどまった。


で、今プリティスはルークの部屋にいた。


「約束したよね、大人になったらいっしょになろうねって・・・」

「将来を誓い合ったでしょ、私たち」


「ごめん、、それは・・・それは覚えてないんだ・・・」


「そこが肝心なところなのに、なんで覚えていないの?」

「私はその約束を果たすために遠いところから来たんだよ」


「そんなこと言ったって、子供の頃の約束だろ」

「子供の頃なんて、みんなそんなこと言いあったりするもんだよ」


「ほら、女の子が大きくなったら、お父さんのお嫁さんになるんだって

よく言ったりするだろ・・・」

「それと同じだよ・・・」

「そんな子供じみた約束のために僕は君といっしょになるの?」

「ままごとだよ」


プリティスは落胆した。

でもルークの言ってることも筋は通っていた。


「そんなふうに思ってるんだ・・・子供じみてるって・・・」

「そか・・・ごめんね・・・押しかけてきて」

「私がここにいると、ルークには迷惑なんだよね・・・」


「分かった・・・やっぱり、私帰る・・・一眼でもルークに会えてよかった」


プリティスの目から大粒の涙がこぼれ落ちた。


「ごめん・・・泣かないでよ・・・悪気はないんだ」

「それに迷惑だなんて思ってないよ、君のこと迷惑とか嫌だって言ってる

わけじゃないんだ・・・」

「あまりに突然のことだったからね、俺にだって心の準備ってものがあるだろ」


「いきなり来て、約束したからいっしょになろうって言われても困るし・・・」

「こんな経験はじめてだし・・・君を受け入れる自信だってないし・・・ 」


「​そうだよね、いきなり来て将来を約束したでしょって言われてもね」

「よく考えたら、私だってきっと戸惑うと思うから・・・」

「ほんとは子どもの頃、ルークと別れてから今日まで、お互いのこと何も

知らないんだもんね」


「そうだね、こういうのって相性ってもんがあるだろ?」

「子供の頃、気持ちを共有できても大人になるにつれ性格だって変わって来るし」

「お互いの相性が合わなくて長く続かなかったら悲劇だよ」

「だからってね、君に帰れって言ってるんじゃないんだよ・・・」


「じゃあ、どうすればいいの?」


「だったら君はしばらくここに居て俺たちと一緒に暮らしてみるってのはどう?」

「君はここにいて俺とお母さんと一緒に生活してみて、 それで俺が君が思ってる

ような男じゃなかったら、その時は帰ればいい」


「一緒に生活すればお互いのいろんなことが分かってくるだろ?」

「君は可愛いいし・・・その・・・イケてるし・・・」

「俺としては、できたら君にここにいてほしいって・・・思ってるんだ」


実際ルークは成長したプリティスをはじめて見た時「可愛い」と思った。

そしてプリティスが光のエルフだと言うレアなこともルークの心を刺激した。

人間とエルフの交流があまりないことからエルフ自体まず人間界では見る

ことのない存在だったからだ。


つづく。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る