第2話:古ぼけた洋館。

プリティスが年頃になって、お婿さんを探しに行くことになった時、 子供の頃、

自分の記憶にあったこの地を迷わず選んだ。


母親も賛成してくれた。


そして今日、プリティスは念願の彼のいる場所に降り立ったと言うわけ。

訪ねる家の場所は母親に書いてもらった地図が頭に入っていた。

その家は山の中腹にあたりの森の中にあるはずだった。


「たしか、このあたり・・・」


プリティスが空を飛ぶときはムーンナイトって言うワンド「杖」に跨って

空を飛ぶ。

普段、ムーンナイトは分子分解された状態で空中に浮遊している。

プリティスが必要になったとき、呪文を唱えると杖の形をなして空中から

現れるのだ。


プリティスはそのあたりをぐるっと巡ってみると森の中に隠れるように

古ぼけた二階建ての洋館が建っていた。


「きっと、ここだ・・・」


その家は母親が教えてくれた場所に、たしかに建っていた。


プリティスは、家の周りをぐるっ と一回りしてみた。

子供の頃の記憶が蘇ってきた・・・覚えがあるって思った。

その古びた洋館はプリティスにはとても懐かしい記憶の中にあった。


家の裏手に小さな小屋があってヤギが二頭いた。

このヤギは何代目かは分からないが、プリティスが子供の頃にもヤギが二頭いた。


ここのヤギの一頭は白ヤギでツノが大きくてヒゲが生えていた。

もう一頭はツノもないしヒゲもない・・・。

ヒゲのヤギさんは男の子でヒゲのないヤギさんは女の子・・・だよね・・・。

プリティスはそう思った。


「女の子は白ひげさんの奥さんかな?」


よく見ると女の子のヤギさんはお腹が大きく膨らんでいてどうやら、

お腹に赤ちゃんがいるようだった。


(この家だ、間違いない・・・)


同じくヤギ小屋の横に屋根のある駐車スペースがあ って、そこに軽の

SUV車が一台止まっていた。

プリティスの里にはそんな文明の機械はない、移動は未だに徒歩か馬車。


その横にはマウンテンバイクが一台。

プリティスが初めて見るものだった。

前と後ろに車輪がついてるから乗り物なのかな?ってプリティスは思った。


ひと通り周辺を見たプリティスは玄関の前まで来たが、ドキドキして

なかなかドアを叩けず落ち着きを取り戻そうと二度ほど深呼吸した。


そして恐る恐る木のドアを叩いた。

ちゃんとドアの横の壁にチャイムがあったのにプリティスは気づいていなかった。


しばらくして女性の返事をする声が家の中から聞こえた。

待っていると玄関のドアが開いて、この家の主人であろう女性が いぶかしそうに

プリティスを見た。


「はい、なんでしょう?・・・」


そう言って女性が見ると、そこに金髪ロングにひっつめ三つ編みで耳が異様に

尖った女の子が立っていた。


つづく。


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