第18話 宝玉の変化
――いい時を見計らって鳴いてくれるなぁ・・・俺からしたら完璧な演技だ。
「今日はどうするの?」
「流れは昨日と同様です。基本的には私の補助として入ってください。で、時間に余裕が生まれるようでしたら実践するという形式でやっていきます」
シレナの言葉に従い、俺は場数をこなしていっては、ひたすらに杖に経験値を蓄積させていく日々を送っていった。
杖を一歩ずつでもいいから進化させていく傍らで、エルシャは一日の終わりの、ふたりだけになった際に限定して俺に助言をくれた。
その助言は確かなもので、おかげで呪文などを含めて着実にできる範囲は広がっていった。
エルシャの方も変に怪しまれぬよう、あくまで徐々に成長を遂げている姿勢を貫いていた。忘れてはならないのが徐々に、の部分。突飛な成長はダメだから。その点が肝心ってことで。
まぁ、色んな意味で考えれば一種の裏技みたいなものだけど、ね・・・
真実を知らないシレナ本人ではあるが、俺たちを賞賛してくれた。
「驚くべき成長速度です、天道さん。ポテンシャルは秘めたものを持っているではありませんか」
単純な話、できることが増えてくると喜びも見出せるというもの。案内を始めてから時間に換算して一ヶ月が経つ頃には、下位級ならば困らずに案内をこなせるまでになった。
ちなみに、時間に『換算』という言い方をしたのは、俺たちがいるこの場所はどうやら多少時間の感覚が違うらしいからだ。詳しい仕組みまでは知らないけれど。
いわゆる『駆け出し』だったり『見習い』といった、ゲームとかをプレイする際に最初から付いている、あのありがた迷惑的な称号とはきっぱりおさらばできたと言っていいだろう。だから今後は強い称号に書き加えていくだけ。
さて。
そんな、とある一日の出来事だった。
俺は今日も案内をしては杖に経験値を蓄える行程を繰り返していたのだが、突然杖の象徴である
なんだなんだ?
蒼く輝く――
「見て、シレナ。宝玉の色が蒼色になった!」
「おめでとうございます。宝玉の変色は天道さんの成長を表す何よりの証です」
と、シレナは目を細める。
あっ、そうか。最近は忘れていたけれど、そういえば宝玉は俺と一心同体も同然なんだった。
とにかく、前進はしている。
ここで全うするしかないし、もう一回は通用しない。今一度俺は腹をくくった。
蒼色に変わった宝玉も、いい方向に向かっていくはずだ。とりあえずはエルシャも味方についているんだし。
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