第17話 底知れない力


 ドラゴンから一通り、神が目指している目的についての説明を聞くと、表現のしづらい感情が湧いてきた。

 でも、今気になるのはそこじゃなくて。


「お前、なんでそんなに詳しく把握してる?この世界には来たばっかりで、記憶も飛んでいるんだろう?」


 話が一気に進み過ぎて、俺も少々戸惑う。


「私に神が直接、力を与えたようだ。だから言葉を発せるようになったし、物事を分析する力もついた。だが一方でそれが裏目に出てしまったのか、神とやら自身の考えまでもが私に伝播してしまったみたいだな」


 神か。本当に実在したんだなと思うと同時に、自分の首を絞める形になった神が哀れだ。


 神の世界と現実世界の連結――極めて壮大な思想であると言っておきたい。


「まぁ・・・騙しだまし、やっていくとして。そういえばお前、名前はなんていうの?聞いてなかったけど」


「エルシャ、だ」


「よろしく。俺のことも凛って呼んでいいから――あっ!」


「どうした?突然、声を上げて」


「まずくない?エルシャの話によれば今までの会話、きっと神に筒抜けだよ。だってむこうは監視もしてるんでしょ?」


 迂闊だった。第三者に聞かれては全く意味がないではないか。自分に腹が立って苛立ちが募る。


「やれやれ。せっかちというか心配性というか。凛は案外すぐに慌てる・・・私が何の対策もなしに話を進めていたとでも思っていたのか?」


 と、自信ありげに話すエルシャ。

 既に何らかの手は打ってあるらしい。エルシャは続けた。


「安心しろ。私たちの周りにだけ、あらかじめ特殊な結界を張っておいた。私と凛以外の声は外部に漏れない」


 ここまでくると高度な魔法に値するのか?結界なんて、そう易々とできるものじゃないぞ・・・!

 俺はエルシャの底知れない力を感じた。


「エルシャ――お前、何者なんだ?」


「言っただろう?誇り高きドラゴンの一種、だと」


 エルシャは涼しい表情で答えた。


 翌日、エルシャと共に扉の前に行くとシレナが先に待っていた。


「一晩経ちましたが、何かこの子に変化はありましたか?」


「いや、ダメ。まだ何も。ただ、エルシャっていう名前だけは決めた。呼ぶときも名前ないと不便だし」


 嘘ついてごめん、シレナ。俺が命名した体にしておいて。


 と、彼女に向かって心の中でひっそりと詫びを入れておいた。少しだけ心苦しかった。


「よい名前を授かったではありませんか、エルシャ。天道さんに感謝をするのですよ」


 シレナの問いかけに対し、エルシャは分かっているとでも言わんばかりに「グァ」と鳴いて返事をした。

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