第16話 知りたいことは
「さて、と。手始めにどうするかな」
託されたはいいものの、まずはどこから手をつけたらいいのか考えていた最中、ドラゴンの体全体が光った。
「ん⁉なんだ⁉」
逸らしていた目を再びドラゴンに向けるが、これといった変化は見られない。
しかし――次の瞬間、本当の意味で驚いたのはここからだった。
「天道凛、とか言ったな。早速だがお前に話しておきたいことがある」
「し、しゃべった⁉」
「驚くのも無理はない。私も心底不思議で仕方がないのだ。急に体からふつふつと活力がみなぎってきてな」
あろうことか、子供姿の見た目とは正反対に、己を冷静に分析している。しぶめの調子で話す声に少しばかりギャップを感じるけれど。
でも今はそれどころじゃなくて。
「話す前に、こっちから聞かせてよ。君はいったいどうしてここに来ちゃったの?やっぱりどっかから迷い込んだか何かなの?」
「ここに来た経緯はまるで分からぬ。ただ私は誇り高きドラゴンの一種。すまないが、その点までしか思い出せないのだ。どうやらここでは記憶の一部が欠落してしまうきらいがあるようだな」
置かれている状況の分析も早い。
誇り高きと自負するだけあって、もともと持っているレベル?が違ったりするのか?
分からないが、驚く以外の感想が浮かばない。
「俺も実は来た当初は記憶がなかったんだ。けど教えてもらったんだよ、この場所を管理している人に全部」
敢えてシレナの名前は口にしないでおいた。「ほう」とドラゴンは尻尾を左右にゆっくりと振り動かしている。
「その者はここの全てを知っているのか?あと私の過去も、同様に教えてくれるのだろうか?」
「うーん。どうだろう?俺の場合は、前にいた原点となる場所がここと繋がりがある所だったからなぁ・・・教えてくれるかどうかはちょっとなんとも言えない」
「なら――・・・期待は薄いと分かれば、あまりしない方がいいだろう」
「どうしようか?」
これから行動を共にしていくとなると、ドラゴンが通ってきた道は知っておくべきだ。
「なに。過ぎ去ったものなど、いくらでも取り返せる。今後、どこかで知る機会は訪れると私は推測している。それより話は戻るが、天道は知っているのか?杖に隠された裏の事情を」
「裏事情?」
なんだそれは。
俺は、握った杖を改めて見やる。これに、秘密があるというのか・・・
「天道、お前は利用されているのだぞ。杖を通じて、な」
「え」
利用されている?
事態が呑み込めない。同時に打ちひしがれた思いだった。
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