第15話 表れたものは②
「だから?」
「分かりませんか?案内された後も、この子にとっては困難が待っている可能性があるのです。天道さんのもとに導かれた以上は」
「要は、今はまだ案内するのは時期尚早ってこと?」
「『様子見』です。来るべき時がくるまでは天道さんの傍にいさせてあげてください。一緒にいるうちに何か発見できる点が見つかるかもしれません」
シレナは様子見と言うが、俺はもっとこの子に対して真摯に向き合いたいと思った。たとえ、人間とドラゴンという種族の違いこそあれど対話はできるはずだと信じていた。
対話を重ね、互いの理解を深めれば不運続きの俺にも明るい材料が舞い込んでくれると思いたいのだ。
それに、せっかく出会ったドラゴン。個人的にも興味は大いにある。
「分かった。俺が、責任持ってこの子を引き受けるよ」
「よろしくお願いします。なにか問題等あれば相談にのりますから」
今日の案内は全て終了しましたので私は先に失礼しますとシレナは言い残し、ワープ系の魔法を用いて俺の前から去っていった。
で。結果的に残されたのが、俺ひとりと子供ドラゴン一匹になる。
俺はドラゴンに、あくまでやさしく声をかけた。
「改めて、よろしくな。俺は天道凛だ」
自己紹介したところで、どうせ返事など返ってこないのは分かっていたけれど、俺の声が一応耳に届いたらしく「グァ」と小さく鳴いた。
一方。再び神のいる世界では。
「神、あのドラゴンはどこから流れてきたのでしょうか?一見あまり見かけない種族かと思われますが」
神の側近が天道を監視している画面を見つめながら、渋い表情を作る。これまで幾度となくドラゴンを相手にしてきたが、身に覚えがないのである。
ドラゴンの一族は、戦闘はもちろんあらゆる能力に長けている。側近を行っている者も全員、力はあるのだがドラゴンともなると話は別。万が一に備え、警戒すべき対象にほかならない。
「天道凛は、ますますわしどもをひっかき回してくれるな」
「では神もご存じない、と?」
「分からぬ。が、このドラゴン、使いようはあると見た」
「と、いいますと?」
神はニヤリと笑って、右手を画面上に映るドラゴンに向かってまばゆい光を放った。
「たった今、あのドラゴンに対してわしの魔力の一部を与えた。これで能力は飛躍的に向上する」
「な――・・・よ、よろしかったのですか⁉謎多きものに神が直々に力を与えるなど⁉」
「これも天道凛の秘めた力をいち早く引き出すためだ」
と、神は頑なに言う。
神も神だ。少し天道凛を買いかぶり過ぎではないか?
喉元まで出かかった言葉を、側近はぐっと抑える。いくらなんでも立て続けに懸念が増えすぎで困る。
「・・・仰せのままに」
しかし、相手は神。司る者。絶対権を持っているのだから従う以外ない。最終的な結果が良いか悪いかどちらに転ぼうとも。
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