第10話 とことんまで


「使用は可能です。ただ、与えられるスキルは人によって変わってきます。えっと、天道さんに与えられたスキルは――・・・」


 ごくりと喉を鳴らす。

 いったいどんなスキルだ?


 個人差がある、つまり言い方を変えれば当たりとハズレが存在することを意味している。


「『スキルを失敗させずに発動できるスキル』ですね」


 ――ん?


「失敗しない?もともとスキルは得たら自由に使えるんでしょ?」


「下位の案内者のためのスキルと言えますね、これは。なぜかというと駆け出しの案内者は、たとえスキルを会得しても完全な形で発動できないパターンがあるのが現実だからです」


「そのための・・・救済措置?」


「・・・はい」


 うーん。確実な発動を可能にできる、か。

 結果的に吉と出たのか凶と出たのか、なんとも判断し難い。


 俺の心配をよそに、シレナは説明を続ける。


「さて。天道さん、自身の持つ杖に丸い玉が埋め込まれているのが分かりますか?」


「あ、これ?ずっと気になってたけど」


「それが、宝玉になります」


 宝玉と呼ばれたそれは、見た目の悪い杖であってもひと際強い存在感を放っている。紅く輝く、紅玉ルビーだ。


「宝玉は杖と一心同体です。杖の強化と比例して輝きは増していく。宝玉は特殊な素材で制作されているゆえ、輝きに磨きがかかってくれば発動できるスキルの幅も広がっていきます。宝玉と杖の連携から生まれる力をよく理解し、実践していけば自ずと中位や上位階級への道も見えてくるはずです」


 シレナの説明を聞き終えた俺は今一度、宝玉を眺めてみる。

 球体に反射して自分の顔が映った。


 何もかも全てが自分次第でどうとでもなる、っていう解釈でいいよな、要は。


 俺にできるだろうか?


 いや、やるんだ!

 やらなきゃあとがないのだから!


 拳にぐっと力を込めて気合いを入れ直す。


「シレナ!!」


「なんでしょう」


「俺に、教えてくれ!!案内人の世界を!!」


「――・・・楽では、ありません、よ?」


「平気だ!もうこうなったら――上の階級だろうが、モンスターだろうが、なんでもかかってこい!とことんまでやり切ってやる!!」


 いい目をしています。その心意気、忘れないでいてくださいね――シレナは心の中でそう願っていた。




 その頃――『神による世界』では、とある心配を危惧する声が挙がっていた。


「神!本当によろしかったのですか⁉あのような者に、我々神の一族にのみ代々受け継がれている大切な杖を託してしまっても!!」


 神の側近として仕える者が、声高に投げかける。

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