第4話 一回目は?
「じゃあ、シレナは神の言葉を受け入れて、案内者になる決意をしたんだね」
「案内者が神聖なるものの理由が理解できましたか?」
「うん。ばっちり」
「では」
シレナは両手を胸の前でパンッと叩いてから、加えて言った。
「さて。私の話はここで終わりです。本題といきましょう。どうして天道さんの記憶が欠けているのか、これから教えます」
やけにあっさりと言うものだから、逆にかえって心配になる。
「え⁉原因っていうの?は、分かってるの?」
「私を誰だと思ってるのですか?今、聞いたでしょう?神の代行者ですよ。分からないはずがないじゃないですか」
だって、あまりにも溜息ばっかり吐くものだから――と思ったがもちろん口にはしない。
「じゃあ、改めて聞かせてよ」
「天道、凛さん、あなたは自身が三回目の転生としてここに来たのはもうご存じですね」
「う、うん、分かってる」
「はっきりと言いますと、天道さんは過去二回、非常に無残な死に方をなさっています・・・」
「無残な死に方って、なにそれ?」
分からないが、ひどく嫌な予感がしてならない。自然と眉間に皺が寄ってしまう。
「まず一回目。天道さんがもともと過ごしていた、現実世界での死です。当然ですよね、最初は誰でもそこが起点となるので。その現実世界において、天道さんは自動車事故に巻き込まれて不慮の死を迎えます」
「自動車事故、かぁ」
なんだか他人の人生を聞かされているみたいだな。記憶がないので自分のものだという実感が湧かないせいだろう。
「天道さんは仕事を終えてからの帰宅途中、歩道に突っ込んできた乗用車にはねられたのです。事故直後はまだ意識があったのですが、搬送先の病院でお亡くなりに」
「っていうか、どうして車が突然突っ込んでくるの?まずはそこじゃない?」
「事後調査で、犯人の運転手はアクセルとブレーキを踏み間違えたと話したそうです」
「うわー・・・めっっちゃ、よくあるやつ!」
理由を聞いて、思わず『めっちゃ』の部分を強調した言い方になる。
さっきのシレナの話し方が移ってしまった。
「あと、他にも犠牲者は何人か出ましたが、いよいよ死んだのは最終的に天道さんだけでした。なので、不慮の死という言い方をさせてもらいました」
「不慮というか、運が悪かったってことだよね⁉それ⁉」
「捉え方は人それぞれですので」
とシレナは意見してこなかった。
何やってんだよ、俺・・・どうせよそ見でもしながら、ぼんやり歩いてたんだろ・・・
過去の自分に対して、諦めに似た感情を抱く。
はぁ、とため息が出るほどだった。
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