第2話 彼女の理由
シレナは長い髪を優雅に払いながらこう言った。
「
「へぇ。知らなかったな。シレナってそんなに長いこと案内役やってるんだ。初めて聞いたよ」
「転生者の案内は極めて重要な役割なのです。ですから、当然それなりの責任も負う義務があります」
「だろうね」
と、俺は賛同してみせる。
「あと、言わせてもらいますが天道さんも非常にいい迷惑になってますよ」
シレナは『非常に』の部分を強調して言った。嫌味がこもっている感じがしないでもない。
穏やかな雰囲気をまとう彼女の口調が思わず変わってしまうほど、俺は異例なのか・・・
「でもさ、どうしてシレナはこうして案内役になったの?何かきっかけとかがあったの?」
話を上手い具合に少し逸らしつつ、ついでだから気になったことを聞いてみた。
このままいけばシレナに何をされるか分かったものではないからだ。
「私もかつての転生者でした。ですが最初から今のように案内をしていたわけではありません」
「じゃあ、どうして?」
「お導きがあったからです。神からの」
「神?導き?」
意外な言葉に、俺は反射的に反応してしまった。
「もともと転生する行為自体、神聖なものとして扱われています。そのため、案内は神に代行して行っているといった位置だと言えるでしょう」
「それで?」
俺は先を促す。
「私は転生先でも、祈りを捧げることだけは止めませんでした。自分がどんな状況に陥ろうとも。もっとも私が過去に転生した世界は、常に争いが絶えないーーそんな場所だったのです」
「だから――祈り続けた?」
シレナは、はい、と首を縦に振る。
「いわゆる、協和や平和と呼ばれる状態にはほど遠くなるばかり。しかし私には祈る以外の方法など思いつきませんでした。いつかきっと、いつかきっと叶う日が来るとひたすらに信じるしかありませんでした」
心なしか、シレナは寂しそうな表情になった気がした。あまり思い出したくなかったのかもしれない。
「シレナも大変な目に遭ってたんだな・・・ごめん、なんか俺、軽々しく聞いちゃったりして」
シレナの気持ちをここは汲み取る。
確かに毎日祈りを捧げる善良な心の持ち主ならば、仲間はもちろん同じ人間同士、傷つけ合う姿をただ呆然と眺めるなど見るに耐えないものがあるに違いない。
「構いませんよ・・・この話をすれば、今一度私自身も身が引き締まる思いがしますので」
その言葉に、一切の嘘偽りはない――
俺は彼女の、本当の意味での強さを感じた。
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