「次」の転生先はどこですか?~巡りめぐって転生の道先案内人になりました~

葵 京華

第1話 次は・・・?


「う・・・あれ?ここ・・・どこだ?」


 どうやらしばらくの間、気を失っていたらしい。

 ゆっくりと体を起こし、顔を上げる。

 

 朦朧としていた意識がようやくはっきりしてきたと思ったら、もはやお馴染みとなってしまった光景が目の前に表れたのだった。


 ・・・?


 俺はひとり首を傾げる。


 ここ?


 視界の先には、大きな扉がどっしりと鎮座している。

 が、もういちいち驚いたりはしない。からだ。


 周囲は暗い。

 しかし、今俺がいる場所だけがスポットライトを当てられたみたいに、円形の光が差し込んでいる。

 これもやはり同様。


 扉に向かってそっと手を差し伸べてみたが、固く閉ざされたまま開く気配は微塵も感じられない。


「開かない、か・・・」


 誰もいない場所で、ひとりぼそっとつぶやく。


「その扉は開きませんよ」


 不意に声が聞こえてきた。女の人の声。透き通った声だ。

 どこから?

 気になったが、予想はできた。


 上を見上げると、声の主が俺の前にふわっと舞い降りてくる。

 重力などものともしない静けさで。


「扉の先に行くことができるのは、です。あなたはまだ転生先を案内されていないでしょう?」


 彼女は訥々と説明をする。


「あー・・・いや、そのー・・・」


 説明はもう受けてますよと言いたげに、少しおどけた調子をみせる。俺のそんな仕草を見て誰が来たのかを確信したのか、彼女は打って変わってやれやれといった表情に豹変する。


「あっ・・・あなたっ・・・また来たんですかっ⁉」


「――みたいだなぁ・・・」


「みたいだなぁ、じゃないですよ⁉まったく!」


「でも聞いてくれよ、。おかしいんだって」


「・・・なにがおかしいというんですか?」


 肩を落としつつも、それでも一応話は聞いてくれた。


「俺さ、なんにも覚えてないんだよ。いや、思い出せないんだ。不思議なことに。シレナや、この場所の記憶だけは残ってるのにそれ以外は全然。どうしてまたここに来ることになったのか分からない」


「話は終わりですか?」


 聞かれて俺が頷くと、シレナは何度目か分からない溜息をつきながらこう言った。


「簡単ですよ」


「教えてくれるか」


「あなたが、極めて異例だからです」


「異例?」


 その場合、どうなるというのだろうか。


「あなた、自分で分かってます?ここに来たのが、果たしてなのか」


「えっと――三回目、かな・・・?」


「その通りです。三回目。ということはですよ?今回が実に三回目の転生に当たるわけです」


 三回目。


 薄々分かってはいたが、いざ実際に耳にするとやはりあまりいい響きとはいえないな。


 俺はそんな印象を抱いた。


 




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