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「冬子の葬式の時に来た三人の同級生、彼女らが冬子と喧嘩をした三人なんだけど、覚えてる?」
「ああ」父は思い出しながら頷く。
「あの三人の泣きっぷりは大嘘だった。それどころか、葬式に来てた人をパパ活してて、それを自慢してたんだ」
酷いだろ。秋人はいった。父もそれを聞くや明らかに眉を釣り上げる。
「冬子の葬儀でパパ活か。彼女らは母さんも私も好意を抱けなかった。格好も葬儀には似つかわしくなかったしね。そもそも彼女らは学校を代表して来たんだ」だから学校の制服で参列していた。「パパ活か」父はもう一度呟いた。
「冬子は友達にも恵まれなかったらしいな」いうと父は両の拳を握る。「自分を売ってなんとも思わない連中と友達だったってだけでも僕は悲しいね」
どこか遠い目をしていうと視線を秋人に戻した。
「他には? そういえばその話を誰から聞いたんだ?」
急に尋ねられて答えに窮する。「えっと」と間を取ってから「その、冬子に虐めから助けられた子」といった。父は「それで? 他に情報は?」と食い気味になって聞いてくる。そのときの父はいつの間にか顔が赤くなっていた。やはり冬子と三人の友達のことに腹を立てているのだと秋人は思う。話を聞いた相手、海堂のことを一から正直に話す。
「家に手紙が来てたんだ。イモート・ワークという言葉があって、それが冬子の自殺に関連しているかもしれないって。それで気になって待ち合わせ場所に向かったら彼女、冬子と同じ学校で同級生の海堂 陸さんがいたんだ。今までの話は全部彼女から。彼女すごいんだよ。さっきの三人の話をしたでしょ? その三人を調べるのにスマホを盗み見たりして会話を写真で撮ってたんだ。だから三人の情報に関しては確実だよ。会話の中にそれらがあったからね。自白してるようなものだよ。それに僕の体調のこともぴったり言い当ててしまうし、少し失礼なところはあったけど……」
「体調? お前の体調がどうかしたのか?」
父が話の途中で口を挟んだ。秋人はしまったという顔をしたが、幸いにも父は母ほど心配性ではないため、実家に戻って来いなんていわれる心配は万に一つもないだろう。そもそも秋人が実家と同じ市内の大学なのに一人暮らしをしているのは父の方針であるところが大きかった。大学を合格した折に父は大学からは一人暮らしをしてみなさいと秋人に申しつけ、秋人は喜んで受け入れた。母はその頃から秋人の一人暮らしをよく思っていなかったので、何かと実家に戻って来てもいいといわれていた。秋人はこの問いにも正直に答えた。葬儀の後から冬子の死に顔がフラッシュバックして不眠症になっていたこと。しかし、今はもう治ったと告げる。
それを聞いて父は「そうか」と頷くと「確かに顔色は良さそうだな。でも、何かあったらすぐに病院に行くんだぞ」という。秋人は内心ホッとして頷いた。
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