第31話 私の見通しが甘すぎた
「壁ゴーレム」で40メートルになった私が、15メートルの白虎を倒す作戦を立てた。
餌は恐らく白虎が知らないであろう、ちょっとスパイスを振って焼いた牛肉。それを私のゴーレム脚のとこに置いてある。白虎は肉をじっと見ている。肉にかぶりつきに来たら、捕まえて、前と同じように首ちょんぱだ。
「ぐる」近づいてきた。
いきなり白虎の位置が分からなくなると、私の右脚に食いつかれた感覚があった。思わず、左足で思い切り蹴り上げた。
ぱーーーん。「あ・・・」
『レベルアップしました』
レベルは181まで上がった。レベル165でゴーレム化した体でキックをかますと、白虎は300メートル飛んだ。
1発で倒せたけど、貴重の白虎の素材はゴミ。その上にこの場所で壁から300メートル離れる勇気はない。
「ちくしょう、素材はあきらめるか」
今回は、状況を見るのが目的でもある。我慢してその場に座った。無敵のゴーレム状態は、私が解除しない限りは変身が解けない。その上にこのままで眠れるのは確認ずみ。
座っていると、白虎の残骸がダンジョンの床に吸収されるまでの2時間後も何の変化もなかった。
さらに退屈でも待っていると、何も現れず結局は7時間で白虎が前の残骸が吸い込まれた位置でリポップした。
再び白虎を焼いた牛の罠で倒して、レベルが191になった。素材はまたも蹴ってゴミだ。
ここで挑戦だ。
前に来たとき見つけたわずか80メートル先にある泉と、その横に生えている2本の植物を採取した。ドラゴンの血と混ぜて錬成するエリク草と月光草を採取した。
世界に2本しか現存しないといわれるエリクサーが作れる。ただ、この2種の草のリポップがいつなのか気になる。
簡単に進んだように言っているが、実際にはビクビクだった。わずか80メートルの距離を必死に走り、ナイフで植物を切って急いでチマランマダンジョンから出た。
「わずか80メートルの往復と採取。時間にして2分弱。だけどやっぱり超級ダンジョンは怖い」
◆◆
早くもジャンヌ様のレベルを超えてしまった。だけど反省点もある。
「壁ゴーレム」は魔法のはずなのに、40メートル性能が完全に私の身体能力に比例している。パワーは早くも破格でレベル235くらいの白虎を一撃で倒せた。それなのに私の動きが悪い。
今更だけど計画を立てた。スキル頼みとはいえ、世界に3つしかない超級ダンジョンの2つに入れて中の魔物も倒せた。だから最終目標は、貪欲にいく。残るインカリ超級ダンジョンへの侵入だ。
問題は20000キロの距離よりも、1か所だけある海峡の越え方だ。ここから東に8000キロ、50キロあるパーリング海峡をどう渡るかだ。私は泳ぎは得意だけど、船での海越えは怖い。
だから「ランダム壁移動」を利用する。こちらのシペリヤ側の端のカラフタ中級ダンジョンから穴をあける。そこからララスカ側の6つのダンジョンのどこかに跳べるまで「ランダム壁移動」を使う。
そうすれば、あとは陸路だ。それさえクリアすれば、あとはどこのダンジョンでも、どんどん潜っていいと思っている。
◆◆
このまま東へ出発しようと思ったが、一度はパリパに行って、エリクサーの製作依頼、前に依頼したポーションの受け取りがある。
シペリアまでの8000キロをレベル191の力で移動しても、ダンジョンの座標を開けながらだから時間がかかる。目安は30~40日。一旦は、そこで帰ってきていい。
だから、あちらが迷惑でもモルトの顔を見ておきたい。前に会ってから3日。彼と親しくなりたそうだったクララさんも怒らないだろう。
しばらくいなくなると言っておこう。
◆◆
セツザン近くの特級ダンジョン1~3階で2日ほど160センチのまんまで実戦訓練をした。レベル70台の魔物が素早く動く私を見失っていた。
トカゲ型魔物を20匹ほど捕まえ、ニスの街に入りった。結局、訪れるのは5日ぶりだ。
まずモルトの家に行くと、いなかった。伝言が入ってるはずだから、冒険者ギルドに行った。
今日の夕方には帰ってくるということ。獲物の換金をしてギルド併設の飲食スペースでエールをちびちびやっていた。
1時間。
モルトがOKなら、予定変更で「壁ゴーレム」を使ったレベリングをする。
2時間。
ちょっと、遅い。
「ま、冒険なんて予定より1日くらいずれるのも普通」
私の方から、モルトに伝言を残して宿泊先を探そうかと思ったときだった。
どんっ。
若い人間3人が、倒れるようにギルドに転がり込んできた。
モルトと一緒に行動している「メタモル」の3人だった。なのにモルトがいない。
骨折とかはなさそうだけど、打ち身、切り傷だらけ。
「どうしたのクララさん」
「フランさん、モルト君が!」
「モルトはどこにいるの」
「賊に襲われて、1人で戦っています」
ダンジョンから4人で帰る途中、ここから東10キロのツルタ上級ダンジョン前だそうだ。いきなり20人に囲まれた。
襲撃者の真ん中にいたオッサンはモルトの知りあいだったようだ。「親方、俺はキングダム工房とはもう関係ねえって言ってました」
「・・キングダム工房」
私が甘かった。キングダム工房から200キロ離れていれば大丈夫だと思っていた。
「モルト君は私達を逃がして、ギルドに知らせてくれって。フランさんに渡された結界石で身を守りながら、ツルタダンジョンに入っていきました」
「クララさん、それはいつ頃」
「もう1時間くらい前です。敵に斧を持った大男もいました」
私は飛び出した。
「フランさん、1人では危ない!」
ツルタダンジョンなら座標を空けている。だけど時間からして、どこにいるのか読めない。フィールド型ならいいのに、あそこは回廊型。
「壁転移」のあと走るしかない。
モルトが結界石に込めた魔力が、どのくらいの時間有効なのだろうか。
お願い、間に合って。
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