4-社員旅行:二日目


社員旅行:二日目


遭難しないように。


たかだか十四人くらいだったら広すぎるくらいのゲレンデ、迷路のようなホテルの敷地だったら好きなように行動するように。報連相だけは忘れないように。桑木からの伝達事項はそれだけで朝のやり取りは完結した。疲労が残っているなら部屋で休んでいてもいいし、ホテルの外から出なければいい。出る時は二人以上。連絡はする。

「ただし遭難はするな」

人気のない雪山や雪道で遭難しようものなら誰にも見つけられない可能性が大きい。それ故にスタッフのことを思う桑木は口を酸っぱくして言うのだ。


奥山は社員旅行の前日まで写真コンクールのために日本中を駆け回っていた。写真家の中で出回る、ほど良い時間帯の情報や角度を勝ち取るために人混みに紛れ込んで、押し押されをして全身筋肉痛の上に追い打ちをかけるように車で数時間揺られる。

そして雪舞う中ヴァニラを撮影するためだけに何度もリフトに乗って、降りてを繰り返していたら体の軋み方が人間とは思えない。まるでブリキの人形のような体になっていた。よってヴァニラは桑木たちに預け、一日ホテルの部屋にいることになった。

部屋にいても写真は尽きることを知らないのでパソコンを起動する。写真のデータが入っている日本中を駆け巡る旅の為だけのSDカードをカバンから取り出す。

最近はスマホでも数値を動かすことが出来る。大きすぎるレンズを持つ一眼レフが奥山の相棒。相棒はスマホとは別の良さがあり、撮るのも楽しい。簡単じゃないからこその楽しさがあり、高校生の時にそれにはまった。

ヴァニラとの出会いも写真がきっかけで。モデルになって欲しいが話す口実だった。日本語の分からないこともまだまだ多かったヴァニラに、自分の知っている偏った日本語を教えるよ、とも。茶色よりの金色っぽい髪の毛に、日本人よりも色素の薄い光彩が懐かしい感情と不思議な魅力を感じた。

我ながら素晴らしい。そんな評価の写真は現像して現物としても持っておく。中でもさらに気に入った写真は額に入れている。主はヴァニラのもの。最近はカルティンブラのスタッフも増えてきている。

飲み物が飲みたくなって部屋の冷蔵庫の中を見たけれど水の気分ではなかった。客室フロアには無料でいくらでも飲めるアップルティーと、コーヒーのマシンと普通の自販機。そして酒の自販機。四階にある自販機、マシンの気分でもなかったので外に出ようと決めた。

初日はまともに見る暇がなかったお土産コーナーも見て回りたくて一階にエレベーターで降りた。エントランスの受付カウンターの隣にかなりの種類がある自動販売機があった気がした。移動の疲れと、筋肉痛のせいで顔を上げるための首の筋肉すら動かしたくなくて手を前に出していないタイプのゾンビの姿勢で歩行中に脇目に映ったような覚えがあった。

「さむ……」

当たり前のように雪が降っているゲレンデではしゃいでいるスタッフを見た。目玉を動かす筋肉が痛い気がした。羨ましいとは思いつつも一歩歩くだけで体中がバラバラになるような感覚になる。立っているだけでしんどい奥山はスキー靴を履く元気も、スキーを担いで外に出て履いて、リフトに乗って、滑るまでの動作を繰り返す勇気は出なかった。

エレベーターが一階に到着する。その揺れに耐えるため力を入れた足が悲鳴を上げた。どうにか足を前に出してエレベーターを降りる。

受付カウンターから真っすぐ行った突き当りを右に曲がり、広くない売店の隣にあるのが奥山の降りたホテル唯一のエレベーター。逆の道をたどる。財布を持ってきたか心配になった。スマホで決済すればいいやとも思ったがスマホを忘れていることに気づいた。財布は持っていた。

記憶通り自動販売機のブースがあった。うどんやそば。以外にも熱々で持つのも一苦労になる小さいハンバーガーの自動販売機も。レトロを超越した遺産味も感じる空間にはしゃぐ。

「昼ご飯はこれだな……」

普通のカップラーメンの自販機の隣にあった、うどんそばの自販機を指で突いた。食べ物系から顔を背けて、背を向け飲み物を探す。見たこともないような蛍光色の飲み物から、どこの都道府県にもあるジュース。信じたことはない日本のどこからの山から引いたらいい天然水。炭酸、コーヒー、おしるこ、コンポタ。各種を取り揃えていた。

「どれにしよう……ヴァニラちゃんが戻って来た時に飲むやつも……上の自販機にはなかったやつにしたいんだけど」

記憶を漁って自販機を思い出そうとする。

「あ、写真撮ったわ。俺」

体中を探るけれどスマホを忘れていたこと、頼っていることを知る。

奥山は自販機を撮るのが好きで、何の変哲もない自販機から千円自販機のようなエンタメ性のあるおもしろ自販機も片っ端から写真に撮る。それをSNSに投稿し続けたところ固定のファンが増え始めた。普通の景色や、人物を取ったポートレート写真の評価よりも自販機の評価の方がよかった。

少し複雑な気分だった。

「これでいっか」

いちごミルク

「どこにでもあるよなあ」

もう一つは決まっていた。

「蛍光色のやーつっと」

ヴァニラは見たことない飲み物が大好きだ。体に悪そう、と奥山は思いながらも本人に制限する理由もないのでわざわざ止めることはもうしていない。

人工添加物、人工甘味料、人工着色料

糖分や、人工物が盛りだくさんの飲み物は案外カロリーが低かったりする。ヴァニラに勧める自分も毒されているな、と自嘲気味に笑った。後ろのラベルは見ると毎度のごとく驚くのでもう見ることはやめていた。

ゲレンデにいるスタッフはリフトを乗り継いでもう一つ上にある茶屋で昼食を取る予定だ。来られるならば来いと言われていたが行けるはずもないので断っていた。その時間、午後一時が約束の時間。それと同じくらいの時間にもう一度降りて来てうどんでも食べよう。

「そばでも食べよう」

かっこつけて右足を引いてターンをした。

ビキッ

「うお……」

陸歴半年の半魚人のように、ロボットのように、ウィーンガシャンと音が聞こえるくらいぎこちなく歩いていく。

「売店は諦めよう……」

そうせざるを得なかった。それ以外の作業もしないで寝ていた方が体が休まるかもしれない。そう思うほど。売店を通り過ぎたあたりで声が聞こえてきた。売店の中か、至るところにある休憩スペースかは分からなかった。しかし声の持ち主が知り合いに似ていたので探すことにした。

「そうなんですね。ありがとうございます。お忙しい中すいませんでした」

「いえいえ。エレベーターで何となく疑問に思われたんでしょう。大丈夫です」

「ありがとうございます。その、頑張ってください」

「ありがとうございます!」

既に会話は終わりの方が近かったようでゆっくりと音がはっきりとする距離になるまで歩いていれば盗み聞きになることはなかった。話が終わって足音が遠のいて行った。どちらのものか分からなかったがその後もほうきの音が聞こえることからホテル側の職員だと分かった。

だから事情を聞くために姿を現して尋ねた。

「あ、おはようございます。今日はゲレンデに行かれないんですか?」

「ちょっと体にガタが来てて……その、さっき誰かと話してましたよね」

誰か、を濁したのは何となく警戒心を抱かせないようにするためだった。

「うちのスタッフの最年少組の声に似てたので気になって」

「ああ、カルティンブラさんのスタッフの方でしたよ。名前は存じ上げませんが、顔は幼かったですね」

「何話してたかって、聞いても……?」

「ええ、地下駐車場のことです」

「地下駐車場?」

知らないことを聞き返すようにオウム返しをする。

「はい。エレベーターで元は行けたんですけどちょっとトラブルが起こって今は封鎖しているんです。エレベーターとか階段で行けることには行けるんですけど、お客様も少ないですし、花が見頃になってもエントランスのドアを出てすぐの駐車場でこと足りるので封鎖は続いてるんです」

「どうしてそんなことを聞いたんだろう」

「さあ?何年も前のことですがエレベーターは点検だけで今の今まで変えていないので……シールを張り直して押しちゃだめですよ!っていう風の処置のまま放置してるからじゃないですかね」

「今まで聞かれることはありましたか?」

「いえ。一度も。ゲレンデの方から場所によっては見えるのでそれで納得をされるんじゃないでしょうか」

恐らく都だったであろう人がした質問の意図は分からなかった。

エレベーターにそんなボタンってあったっけ。お礼を言ってからそこを掃き続けている職員の人の音が離れていく。気づけば重々しい扉の前に立っていた。すぐ横にレンタルスキーやスノボが大量に置いてあった。カルティンブラが一斉に借りた場所がすっぽり抜けている。

チーン

音がしてエレベーターが着く。

奥山はエレベーター下から来たことには気づかなかった。

部屋について冷蔵庫に蛍光色ドリンクを入れて画面は黒く、開いているパソコンの隣にペットボトルを置いた。SDカードを退けた。

すぐ横のまだ直されていないしわのついたベッドに寝っ転がる。瞼が重くなってきてだんだんと意識を手放していく。抗う意欲はありながらもどうせ動けないし、と無駄な争いを止めた。


すやすやと眠って目が覚めた時には昼の時間を過ぎていた。午後二時になるくらいの時間で罪悪感は少なかった。午後二時になっていたら恐らくうわあ、と言っていた。

パソコンはやっぱり点いていなくて、暖房が付いていたせいか鼻声になっていた。持ってきたときには冷たかったペットボトルのいちごミルクは今飲んだら無駄な甘さが目立つ飲み物になっている。立ち上がった時に少しは痛みがましになっていた。

いちごミルクが冷えるまでの間に売店に行って、そばを買う。はっきりとした目的のために立ち上がる。自販機の写真を撮るために枕のすぐ近くにあったスマホを手に取る。ICカードでの決済が出来るとは思えなかったので小銭も持っていく。

スマホが震えた。

新しいメッセージの到着の知らせだった。

顔認証で開いたスマホでメッセージを確認する。茶屋と思わしき場所でほぼ全員集合で撮られている写真だった。届いている料理、届いていない料理に机がまばらに埋まっている。腹が鳴った。

ゴーグルの痕がついていたり、赤い顔で笑っていたり、ピースをしていたり。もうすでに食べ始めている食べ盛りの子供たちは驚きながらスプーンを咥えながらも目線だけはカメラを向いていた。

写真を一つ右にずらすと全員が変顔をしていた。

「ヴァニラちゃん、可愛すぎるでしょ……」

自分の嫁にしか目がいかない。盲目さにも気づいていない。かなり問題や、課題を一緒に乗り越えてきたから夫婦としても、友人としても、スタッフとしても関係が続いている。盲目くらいで見たくないところを見ない方がちょうどいい。奥山のそんな感覚は奥手の由来。

売店にはサービスエリアでも見たお土産から、咲塚限定のカップラーメンまであった。その他にもほこりをかぶっているように見えるゴーグル、帽子。可愛らしいレッサーパンダや、普通のパンダの耳が着いた帽子もあった。リフト券入れも売っていた。借りたウェアには基本的にリフト券入れが付いていたので必要なかった。

めぼしいものが見つかったけど職員がいなかった。夜食にちょうどいいと思っていた限定品のカップラーメンとゴーフレットに似たクッキーの箱を抱えて呼び鈴のような鈴を鳴らした。お土産ではなく部屋で作業や、夜に食べようと思っているもの。

「すいませーん!」

「あ、はいはい。少々お待ちください」

「すいません。お願いします」

「いえいえ、お待たせしてすみませんね。こちら、合計で千四百三十二円になります。ルームキー見せていただけますか」

「はい。四〇六号室です」

「どうもね。お待たせしました。ありがとうございましたー」

素早い対応にちょっと拍子抜けした。見るからにおばあさんの曲がった背中から伸びている手は繊細な作業を実に簡単にこなした。

自販機ブースに行って近くにあった待つ人用のベンチに袋を置く。そのまま座ったら立てない気がしたので座らずに小銭をじゃらじゃら言わせて目的の自販機の前に立つ。そばかうどん。究極の二択に悩んだ末そばを選んだ。

たったの二十五秒で出来上がるそばの味が気になってしょうがなかった。

「あっつ……」

思わずそう口に出るくらい。箸と薬味を取って袋の横に座った。

はふはふと一口。

カップラーメンよりも短い時間で個人的にはカップラーメンをしのぐ美味さに驚いた。

「技術ってすげー……」

レトロ自販機というのが怖いところだった。カップラーメンにお湯を注ぐという自販機よりも複雑な工程のはず。熱すぎててべ進めるのが難しく、調べることにした。千九百七十年代に全国に広まった。単純計算で約五十年ほど前の技術でここまでのそばとうどんを作れるとは、と驚く。かきあげも汁がしみ込んでいい味を出していた。

思わず仕組みも気になって検索をかける。『そばうどん 自販機 仕組み』

カップにゆでた麺や具材が既にセットされているものが冷凍保存されている。お湯をかけて湯切りをする。その後にスープを注ぐ。その間たった二十五秒。

程よいころ合いになって一気にかき込んだ。スープも余すことなく飲み干すくらい美味しかった。よくある味だけれど黄金比だからそれぞれの家庭の味でもない。研究しつくされた結果の最も美味い割合のスープ。不味いはずがなかった。

「あれ、都くん」

一息ついていると斜めの扉から都が出てきた。

「あ、奥山さん。お疲れ様です」

「お疲れ、何してるの?階段で降りて見たかったんです。四階から」

「面白いことするな。昼ご飯は?」

「ここでカップラーメンでも食べようかなって思ってました。奥山さんはもう食べたんですね」

横に置いていたカップを見つけた都に指摘される。

「ああ。うどんとそばの自販機。すごい美味しいからおすすめ」

「食べたことないです。それにします」

「いいのか、そんな簡単に。そば食ったけど美味かった」

「じゃあうどん食べてみます」

「感想聞かせてなー。俺写真いじくらないといけなくて」

「そうなんですね。頑張ってください」

歩き出した。

「奥山さん、奥山さん!荷物忘れてます!」

「あ、ごめん。ありがとう」

颯爽と歩き去るつもりだったのに格好がつかなかった。そのまま部屋に戻って冷えたいちごミルクを飲みながら全員が帰ってくるまで作業を続けた。


ゲレンデ組は天気に恵まれ、上質な雪でスキーやスノボ各々のスポーツを楽しんでいた。腹ペコになるまでごz年中はぶっ通しで行った。

その後の茶屋での昼食は最大の調味料を味方につけていることもあっていくらでも食べられそうだった。

「都くん、残念ネ」

「別に、待ってるわけじゃないんですけど」

カレーうどんを頼んだ弓削がカレーライスを頼んだユーンと一緒に待っていた。

「二人同じ部屋だし、告白でもして仲良く過ごせバ」

「なんてこと言うんですか。ユーンさんって変態ー!」

「ただ仲良くすれば、って行っただけヨ。何をしろ、とは言ってないネ」

「それでもですよ!子供にそんなこと言っちゃだめですー」

「選挙権持ってる子供はもう立派な大人デスー」

「カレーうどん、カレーライスお待ち」

セルフサービスのネギと福神漬けをかけに横にお盆ごとスライドした。

「それにもう内季にそんな気はありません」

「そうなオー」

「信じてないですね。もうそろ、学校も卒業だしカルティンブラの中でも別の進路だから」

「大人になったネー」

「うるさいなあ……」

席に着いていただきます、と待たずに食べ始めた。

「みなさーん、こっち向いてー!来てない都内季と、奥山ディアに送り付けますよー!」

その声がした方を向くと杉澤が内カメにして全員が入るように画角を調節していた。もう食べていたものを飲み込む暇もなくシャッターが下ろされた。隣のユーンと向かい側にいた同じく食べ始めていた臣道と笑い合う。

「変顔しましょー!大人組も。日和ったらあー……まあなんかの罰ゲームを設けましょうー!」

「食べてる組は飲み込んだかー?瑠衣の絶対王政だから変顔は日和るなよー!」

出水のヘルプによりいったん飲み込んで変顔に備える。

「あははははっ、これ傑作ですよ!みんなホテル戻ったら見てくださいね。今見れるなら見てもいいけど」

琴音は隣にいたヴァニラも変顔が出来るという事実に驚いていた。変顔しても綺麗な顔は変わらなかった。肌の綺麗さ、白さ、全てを含め羨ましかった。

大人組と言われた桑木、臣道、ミカエル、矢車、ヴァニラは基本的にノリがいい人たちなので大層面白い写真になるように協力してくれたことだろう。全員気になっていたのはヴァニラが美しすぎて霞んで見えるが何気に顔のいいミカエルの変顔だった。

杉澤の独断と偏見で罰ゲームはとりあえずいない、ということになった。

カレーライス組、うどん組、ラーメン組、ポテトからあげサイド組などなど。午後の滑走に響かない程度に食事を摂った。

「わたしはぜんざいを食べると決めていたんだ」

「弓削、俺もだ」

「よし、臣道さん。奢ってください」

「お前……いいけど。金にピンチなわけでもねーくせによくたかるな。先輩に」

「臣道さんが金持ちなの知ってるんで」

「どこの誰情報だよ」

振り向いた弓削は落ち着いている矢車さんと目を合わせて親指を立ててグッドで通じ合った。

「妃美の野郎余計なこと言いやがったな」

「仲いいんですねー」

「よくねえわ」

食券を購入してもらい臣道はぜんざい、弓削はおしるこにした。

「おしるこなのか」

「あんこをダイレクトに摂取したくて。ついでに餅も」

「甘党?」

「辛ラーメン大好き」

「どっちだよ。一口やろうか?」

「わーい!臣道さん頼りになるー」

「都合いい時だけそう言いやがって」

顔が緩んでいるのを隠すつもりはないようだった。臣道はかなり後輩に弱い。後輩、と言っても弓削や都のような純粋な最年少組だが。最初からたかる目的でやって来る六波羅や、郡上、杉澤のことを臣道は悪ガキ三銃士と呼んでいる。そのくらい狡猾に近寄ってくるのだ。弓削のお願いは可愛い、そう思うくらいな後輩馬鹿だった。

「ほれ、先に食え」

「やったー、一口いります?」

「もらうわ」

ライオンが小動物を可愛がる図に思わず茶菓の中がほっこり。笑いを堪えながら六波羅は動画を取っていた。初の社員旅行のアルバム担当にじゃんけんで負けてなってしまった六波羅は自分の持てる技術の最大限を詰め込んでアルバムをを作ろうと思っていた。その為の材料としては優秀過ぎた。

「全員食べ終わった?早速ぶっ放しに行きましょうか」

「言い方が殺し屋のそれなんよな……」

プロ顔負けのスキーの腕前を持つ矢車のスピードについて行けるのは桑木か、ミカエルだけ。桑木はスノボを続けてやっておりハーフパイプも簡単な技なら青年時代に練習したそう。今やったら腰を殺る気がすると挑戦しないし、施設もない。

ミカエルは矢車と同じスキー。子供の頃に父親に何度も連れられてスキーを体で覚えさせられたとか。長年やってこなかったが久しぶりでなまっていた感覚を初日で取り戻し、二日目には矢車、桑木とスピード族になっていた。

その後ろをついていくのは久しぶりに風になる感覚に元ヤンの血を騒がせる人生ずっとパンピーの六波羅。郡上は弓削とユーンの後ろから六波羅と一緒に感覚を開けて滑っていた。

さらにその後ろにはヴァニラ、琴音。琴音に執心の杉澤、を見て笑っている出水がゆっくり滑っていた。ヴァニラはスキー派閥。出水はスノボ。それぞれ話したりしながらゆっくりなり、スピード違反なりで進んでいった。リフトも下で待つ必要はない、と全員の了解の上で繰り返されていた。

「ひゃっほー!」

「矢車サン、早い!」

「ミカエル遅い!」

「桑木サン!なんとか言って!」

一周以上の差が着いたりしながら何時間もぶっ通しでゲレンデを支配した。

その日の夜は簡素な食事だった。一日運動をして疲労がたまり、前日の疲れも積み重なるから宴会にしたとしても寝落ちする者が続出しそうだと判断したからだった。食事に関しては大量に買い込んで、初日に女性陣が買い足しに行ってくれたこともあって余裕があった。

二日目は何とも平和に終わりを迎えた。


【続き】

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