【父性小説大賞】評議員ピックアップ【10/22〆・あと一週間】
【父性小説大賞】という自主企画に評者で関わっているので、企画終了(10/22 23:59)まで一週間のここでピックアップを。現在「完結」ステータスで16作エントリーされているので、その中から2つ選ぶことにしました。
▼企画ページはこちら
https://kakuyomu.jp/user_events/16817330664442007076?order=published_at
なお、「16作の中から」と書いたのですが、下記二作はちょっと逆贔屓とさせていただきます。流石の書籍化作家二名、ちょっと自分の土俵に持ち込むパワーが強すぎです。(実質ピックアップなので許してほしい……)
スワンソング/草森ゆき
https://kakuyomu.jp/works/16817330664050389072
きみのいいパパじゃなかった/尾八原ジュージ
https://kakuyomu.jp/works/16817330665125914630
◆ピックアップ①
初秋/るつぺる
https://kakuyomu.jp/works/16817330664514648686
シングルファーザー家庭に育った女性が、その父も亡くしてしまったあとの日々で父からの影響を自覚するようないくつかの非日常の出来事に出会う、その様子を淡々とした筆致で描く作品。淡々と安定した筆致であることがかなりいい方向に働いており、参加作の中でも短い部類の掌編ながら、屈指の余白の広がりを感じさせる一作です。書かれていることは読みやすく、書かれていないことは豊か、という純粋に筆力の高さを感じさせられました。小説ならではの魅力を感じたい方におすすめです。
◆ピックアップ②
不正発覚/金沢出流
https://kakuyomu.jp/works/16817330663857624350
こちらは広くおすすめしたい①とは全く逆、問題作枠でのピックアップです。講評以外に伝えたいことがあってのピックアップともいいます。端的に結論から言うと、この小説を(おそらく)適切に読めたのがおれだけでした。主題とか解釈とかのレベルではなくて、具体的な描写のレベルで評者3名の読みが割れてしまいました。そういう欠陥というか、おそらく経験不足からくる読者への不親切さがある。少なくとも具体的な情報のレベルではきちんと伝わるようにという配慮はもう少し必要だったでしょう。シンプルに言葉数が足りていません。
それでもなぜピックアップしたのかというと、個人的に「他の人とかぶらない、わかりにくい」ものを書こうという意思については、それが可能である背景まで含めて好ましいと感じるタイプだからです。別な言い方をするなら、わかりにくいものをどうにかわかるかたちにしたいという思いを込め、他者とやりとりすることが創作には可能だと思っているからです。本作の場合それは、鬱でニートでヒモの男が父になってしまう、という出来事を真っ向からその男の目線で描こうという部分に当たります。上手くいっているかどうかとは別のレベルで、そういうことを感じられたのでピックアップしました。
というわけで、ピックアップについては以上となりますが、最後におまけで自作も宣伝させてください。
十月と十日とかつての十年のそのあと/君足巳足
https://kakuyomu.jp/works/16817330664615089954
ざっくり言うと「無精子症、父になる」小説です。読み手への負荷が妙に高い文章になってしまったのでその点もう少しなんとかならなかったかなあとか我ながら思うのですが、この文字数に落とし込むための工夫は詰めたので読んでいただけたら幸いです。
あ、あと二周目で印象が変わるようになっていますので周回プレイ推奨です(小賢しいエクスキューズ)。
それではあと一週間、引き続き皆様の作品を楽しみにお待ちしています。
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