第七十一話 二つ目の黒い箱

 メリッサの実力を見られればパーティに参加してもらうことも考えられたが、彼女はマドカと共に、基本的に生産職として動くことを優先するとのことだった。


「……加工なら私もできる。いい素材を持って帰ってきて」

「お兄さん、皆さん、くれぐれもお気をつけて……」

「ああ。マドカ、また大量に武器防具が手に入ると思うから、その時はよろしく頼む」

「はい、良い金額でお取引できますよう、組合と交渉します」


 二人に見送られ、俺たちは宿舎を出る。そして、シオンも伴って七人で箱屋に向かった。


(……ん? あれは……)


 ギルドの近くを通り過ぎるとき、ルイーザさんと話している鎧姿の一行が目に入る。


 あれはギルドセイバーのパーティだ。八番区を離れるので、挨拶をしているということだろうか。


「……あっ、アトベ様。良いところにいらっしゃいました」

「え……俺ですか?」

「はい、昨日『北極星』の方々を救助されたことで、ギルドセイバーのセラフィナさんが改めてお礼に上がられたのですよ」


 セラフィナさんは緑がかったさらりとした髪をかき上げつつ、俺の方を振り返った。相変わらず美人だ――だが、ルイーザさんや皆の手前、顔は引き締めておかなくては。


「彼女の言うとおり、改めて礼に上がった。あなたがたのパーティには、『セイバーチケット』を贈与させてもらいたい。これがあれば、ライセンスを介して救助要請が送られ、私達の力を借りることができる」


 俺の前に差し出されたのは、長方形の角を丸くしたような形をした、薄い金属片だった。水色の金属――何の素材なのかわからない。


「セイバーチケット……これって、貴重なものなんじゃ……」

「『クリスダイト』という金属でできている。傭兵チケットの、さらに上位のものと考えていい。この区で雇える傭兵のレベル上限は5で、ギルドセイバーは最低でも8からでしか加入できない」


 レベル8以上――その話を聞いて、俺の中に一つの考えが生まれる。


 エリーティアと互角か、それ以上の力を持つ人に、盾役を頼めたなら――一時的でいい、黒い箱を開ける前に、最初の一撃を凌ぐために少しでも防御力の高いメンバーが欲しい。


「セラフィナさん、一つ聞かせてもらってもいいですか」

「問題ない。救援要請も今のところ入っていないし、本部に戻るまでは時間がある」

「ありがとうございます。その大きな盾を見る限り、セラフィナさんは、パーティの前衛というか、守備担当ということですか」

「私は『機動歩兵ライオットソルジャー』の職についている。元々は、機動部隊……治安維持のために活動する集団といえば、伝わるだろうか」


(機動歩兵……まさか、軍人……! 軍には女性もいるっていうが、そういう人も転生してたんだな……)


「この『ライオットシールド』は、敵の攻撃を防ぐこと、そして制圧するためにも使われる。この世界には銃器がないので、私は武器としてロッドを用いるが、迷宮国においては私の職業は防御に特化している」


 彼女の持っている盾は、覗き穴のようなものがついている。銀色に輝く金属製で、鏡のように磨き上げられている――この八番区では到底手に入らないだろう、上質な装備だ。


 そして、迷宮国では近代装備がないので、女騎士のような見た目になることがわかった。持っているロッドも、先端に重りが取り付けられ、相当な破壊力がありそうだ。


「教えてくれてありがとうございます。少し相談したいことがあるので、待っていてもらえますか」

「了解した」


 セラフィナさんに待ってもらい、俺は後ろで待っていた仲間たちの元に向かう。


「後部くん、もしかして……『セイバーチケット』っていうもので、あの人に手伝ってもらおうと思ってるとか?」

「さすがですね、五十嵐さん。せっかくですから、少しでも防御力の高い人に参加してもらいたいと思いまして」

「最初の一撃がどれくらい危険か……ギルドセイバーでも受けられないなんてことは、ないと思いたいけど。シオンは装備が整っていないから、『カバーリング』で受けてもらうのは危険だものね」


 シオンは行儀よくお座りをして、スズナに身体を撫でられている。エリーティアの言うとおり、護衛犬であっても、防具をつけていないと攻撃を受けたときが心配だ。


「あの防具よりすごいの、この辺りで見たことないですよね。絶対かっちかちですよ」

「そうですね……あの鎧を着ていても軽々と動いていて、すごい……」

「…………」


 全員の意見が一致している。テレジアもセラフィナさんを見ているが、特に警戒したりはしていないようだ。


 通行を邪魔しないようにギルドの壁際に整列して待ってくれていたセラフィナさんに、俺は先ほど受け取ったセイバーチケットを差し出した。


「セラフィナさん、もし都合が合えば、これから俺たちのパーティに加わって、『箱』を開けるのに立ち会ってもらえませんか」

「……それは……パーティ外の人物に箱の開封を見せることは、基本的に推奨されない。箱は、パーティで獲得した共有財産であるから」

「それが……俺たちの見つけた箱を開けると、敵が出てくる可能性が高いんです。俺たちはどうしても、それを倒す必要がある。未知の攻撃を受けるために力を借りるというのは危険ですから、もちろん断ってもらっても大丈夫です」


 セラフィナさんはじっと俺の目を見る――思わず目を逸らしたくなるほど澄んだ瞳だ。この髪色などは、転生者なら地毛ではないのだろうが、迷宮国で暮らすうちに幻想的な色に変化したのだろうか。


「そういった用件であれば、チケットは必要ない。私たちは、特に有望なルーキーを補助することも、任務の一環として活動している。箱自体が貴重なものであるため、それほど多くはないが、箱の罠で全滅するケースも定期的に見られる。そういった事態は、可能な限り防がなくてはならない」

「っ……あ、ありがとうございます……! でも、何かの代価は払うべきです。俺たちだけが特別扱いをしてもらうわけには……」

「『北極星』を救助した手際だけではない。医療所に運び込まれた患者が意識を取り戻したのも、あなたのしたことによるものだと聞いた。個人的に、私はあなたがどのような探索者であるのかに興味を持っている。それゆえ、遠慮をする必要はない」


 可能なら、俺の『後衛』としての技能は広く知られるべきではない。


 しかし俺の技能を利用しようという考えがある人が、危険だと分かっていて箱の開封に立ち会うというのも考えづらい。


「……最後は、そちらの判断に従う。私は、可能であれば一時的であれ、協力したいと思っている。これから見たものについては、絶対に口外をしない。もし約束を破ったら、私のことを好きにしていい」

「っ……わ、分かりました。そんな、脅すみたいなことを言わないでください」

「脅す……そのようなつもりはない。信用を得るために必要な代価を払うことを提案しただけにすぎない」


 アリアドネもそうだが、自分の貞操を淡々と扱いすぎではないだろうか。俺もそのたびに動揺するのは何なので、年齢相応に落ち着きたいものだ。


「……日本人は、無骨な女を好まない傾向にあるように思う」

「そんなことは全くないです。確かに、俺のパーティはみんな線が細いですが……」

「セラフィナ様、そちらの探索者ご一行に同行されるのですか? 夕方に帰還予定となっていますから、午後三時には移動を始めたいところですが」


 セラフィナさんの側近らしい女性が、控えめに進言する。セラフィナさんは広場にある時計を見る――朝九時、まだ時間には余裕がある。


「ええと……改めてお願いします。俺たちと一緒に来てもらえますか」

「了解した。皆には、『周辺の警ら』を命じる。ギルドからの要請には各自応じてもらいたい」


 セラフィナさんの部下の男女五名はずっと直立不動だったが、命令を受けた途端に表情がほころんだ。


 『警ら』と言いつつも、事実上の自由行動ということだからだろうか。一人残ったセラフィナさんは、散開する部下たちを敬礼して見送った。


 まず、セラフィナさんにも『支援高揚』をかけておきたいところだ。時間はかかるが、これがあると無いとでは、戦闘に大きく響いてくる。


 協力してもらうことに決まって、仲間たちもこちらにやってくる。これから自己紹介タイムということになりそうだ。


   ◆◇◆


「まあ……二つ目の黒い箱を見つけるなんて。アトベ様の顔を見てもしやとは思っていましたが」

「恐縮です。今回は、箱を開けたらファルマさんにはすぐに転移するようにお願いしたいんですが……戦闘になると思うので」


 ファルマさんはさらに驚くかと思ったが、思ったよりも落ち着いていた。


「箱から魔物が出てくるときは、罠を解除しているときに分かります。ですので、開ける直前にお知らせしますね」

「そうなんですね……それじゃ、よろしくお願いします」

「かしこまりました。エイク、プラム、少しお留守番をお願いね」

「うん、わかった! アトベ兄ちゃん、みんな、気をつけてね!」

「エイクお兄ちゃんと一緒に、ここで待ってる!」


 俺たちは子どもたちに見送られ、地下への階段を降りて転移扉へと向かう。


 シオンの母犬、アシュタルテは不在だった。レベル13の彼女は、上の区に行ってギルドの仕事をすることもあるというので、それで出ているのだろう。


「……前衛を務めるのであれば、敵の注意を引きつける技能について言っておく。私は幾つか、敵対度……いわゆるヘイトを引きつけるための技能が使える。単独の敵に対してよく使用するのは『プロヴォーク』という。成功すれば、敵の攻撃はまず私に向かう」

「分かりました。セラフィナさん、俺は後ろからあなたの戦闘を補助できます。攻撃、防御を高めるなどですね……」

「さきほど、士気を高めてもらったが……私は士気を最大まで上げたことがない」

「士気を最大まで上げると、『士気解放』ができるというのは知っていると思いますが……どういうものかは分からないってことですね」


 セラフィナさんはこくりと頷く。厳格な軍人気質と思ったのは初めだけで、パーティに加わってからの彼女は、素直さが全面に出ていた。


「『士気解放』が確実に戦闘向きかはわからないんですが……切り札として使うかもしれません。一度使ってしまうと、再使用までかなり時間がかかるので、試し撃ちをすることはできないんです」

「何が起きるか分からないのなら、あなたの言うとおり、使用については最後の手段と考える。それでよろしいか」


 そこまで話したところで、五十嵐さんが気になったことがあるらしく、話に入ってきた。


「あなた、だと一瞬誰のことを言っているのか迷うから、名前で呼びあった方がいいんじゃないかしら」

「あ……そうですね。俺のことは、どう呼んでもらっても大丈夫ですよ」

「では、アトベ殿と呼ぶことにする。パーティのリーダーである以上、隊長と呼ぶべきではあるが」

「そういえばさっきの敬礼、すごくかっこよかったですよねー。アリヒト隊長、私も隊長と呼びたいのであります!」


 ミサキのギャンブラーとしての技能は、戦闘でどれくらい役に立つのか。それに期待する部分と、どうしても防御の脆い彼女を今回参加させることへの迷いが半々くらいだ。


「ミサキ、今回は、さすがに危険だから……」

「アトベ様、そんなときこそ、シオンの力を信じてあげてください。この子はお母さんのように、どんどん強くなっていきますから」

「バウッ」

「はぅっ……も、もしかしてファルマさん、私が置いていかれそうな空気を読んでくださったんですか? ママって呼んでもいいです?」

「ふふっ……私、そういうことには敏感なほうなんです」


 そうやって唇に指を当てて笑うファルマさんは――こんなときに思うのもなんだが、旦那さんが長く不在でいるうちに艶っぽさが増してしまっているように見えてならなかった。


   ◆◇◆


 今回、転移扉に表示されている番号は『25』だった。前にファルマさんが言っていた通り、箱の開封に使用する部屋は、他のパーティが使用していない空き部屋になるようだ。


 扉を開けて通過すると、前と似たような広い部屋に出る。ファルマさんは転移扉の近くで、すぐに脱出できるように位置取りをする――俺たちも、隊列を組んで戦闘に備えた。


 ◆現在のパーティ◆


 1:アリヒト ※◆$□ レベル5

 2:テレジア ローグ レベル5

 3:キョウカ ヴァルキリー レベル4

 4:エリーティア カースブレード レベル9

 5:スズナ 巫女 レベル4

 6:ミサキ ギャンブラー レベル4

 7:シオン シルバーハウンド レベル4

 8:セラフィナ 機動歩兵 レベル11


 これが八人のフルパーティ。セラフィナさんのレベルが11――そして大盾を装備している彼女は間違いなく、このパーティで最高の防御力を持っている。


 先頭にセラフィナさん、二列目にエリーティア、五十嵐さん。三列目にテレジア、シオン――その後ろにスズナ、ミサキが並び、俺は最後尾となる。


「それでは、解錠を始めます。ああ……もう一度こんなに難しい箱を開けられるなんて……」


 相変わらずむやみに色っぽいのだが、俺とは位置が離れているので、色気にあてられずに済んだ。今はとにかく、箱が開く瞬間に集中しなくては。


 ファルマさんが左手に乗せた箱に右手をかざす。そして展開された、立体的な魔法陣――結界錠は、前回の黒い箱よりもさらに大きく、複雑なものだった。


(なんだ、この……禍々しい感じは……)


「これは……ああ、なんてことなの……こんなに強い力が……これを、外に出さなければいけないなんて……そうしなければ箱が、開かない……っ」

「――みんな、来るぞ!」


 迷路のような立体魔法陣に、ファルマさんが魔力を通す――その迷路の途中にある、赤い光のようなもの。 


 そこに魔力を通さなければならないのに、塞がれている。つまり、赤い光に、ファルマさんの魔力が触れる他はなく――その瞬間。


 ――箱が、開いた。前回は、箱の表面に青い光の筋が生じて、光が溢れた――しかし。


 辺りを貫いたのは、紫色の光。視界に焼き付くような暴力的な光が、広い部屋に溢れる――ファルマさんはその場に座り込み、眼前の光景に震えている。


「ファルマさんっ、しっかりしてください! ここは俺たちだけで切り抜けます!」

「っ……!」


 辛うじて立ち上がると、ファルマさんが転移していく。そして、暴れまわっていた紫の光が落ち着き――俺たちの視界には、黒い箱の中に格納されていた、辺りを埋め尽くす金貨と武具の海と。


 空中に浮かぶ、一本の剣。紫電をほとばしらせる、日本刀のようなシルエットをした武器が現れていた。


 ――星機剣インテリジェンスソード自己防衛起動・アウェイクン――


 ◆遭遇した魔物◆


 ?知性を持つ武器 戦闘中 レベル6 ドロップ:???


 浮かんでいるだけではない――揺らめくように上下に動いている。


 刀の周りに雷が走り、稲光と共に全身を貫くような殺気が放たれる。最後衛にいる俺ですら、戦う前から死を連想させられる。


「黒い箱……その中に、剣が……あれは、カタナ……?」

「――セラフィナさん、『支援』します! アリアドネ、頼む!」


 瞬きの間に、空中に浮かぶ刀はまるで生きているかのように、最前列のセラフィナさんに斬りかかってくる。


『我が名はアリアドネ。信仰者とその盟友に、加護を与える』


「受けきる……それが私の務め……!」


 セラフィナさんの声が聞こえる――彼女の盾を俺の『支援防御』による不可視のバリアが覆い、さらに彼女の前に『片腕』ではなく、機械の『両腕』が出現し、襲い来る刀を受けとめる。


 これが信仰値を上げた成果。前回アリアドネの力を借りたときとは、全く違う――これが進化した『ガードアーム』だ。


(頼む……この一撃を凌がなけりゃ、何もならない……!)


 ◆現在の状況◆


 ・『アリヒト』の『支援防御1』が発動 →対象:セラフィナ

 ・『アリヒト』が『機神アリアドネ』に一時支援要請 →対象:セラフィナ

 ・『機神アリアドネ』が『ガードアーム・ツイン』を発動

 ・『セラフィナ』が『防御態勢』を発動

 ・『セラフィナ』が『オーラシールド』を発動

 ・『?知性を持つ武器』が『天地刃』を発動 →『セラフィナ』に命中


 上段の振りかぶりからの、稲光を纏った斬撃――それを、ガードアームが白刃取りする。剣は止めても、繰り出された威力の余波が残り、盾を構えているセラフィナさんに襲いかかる。


「くっ……うぅ……!」


 ◆現在の状況◆


 ・『天地刃』に付随して『衝撃余波』が発生  →『セラフィナ』にダメージ

 ・『セラフィナ』が『カウンター』を発動 →『セラフィナ』技能即時発動


(ダメージはほとんど軽減したが、無傷じゃない……何度も続けては受けられない。いや、彼女は受けるだけで終わりじゃない……!)


「――はぁぁぁぁっ!」


 ◆現在の状況◆


 ・『セラフィナ』の『シールドタックル』が発動 →『?知性を持つ武器』に命中 支援ダメージ11


「手応えが……金属の敵に通った……!」


 受けきっただけではない――セラフィナさんはそのまま押し返し、刀を弾き飛ばした。すかさず『支援攻撃1』を入れて、固定ダメージが入ったことを確認する。彼女も驚いているようだが、俺の方も安堵している――鷲頭の巨人兵にも通ったとはいえ、刀に打撃を与えられるかは確証がなかった。


 刀は弾き飛ばされたあと、回転して元の方向に向き直る。しかし、すかさず攻撃を仕掛けてくるわけではなく、空中に浮遊していた。


「はぁっ、はぁっ……今現れた、機械の腕は……」

「説明は後……っ、セラフィナ、もう一度来るっ!」

「私もかわせるから、負担を軽減しないと……っ!」

「無理はしないでください! 敵の攻撃の威力は尋常じゃありません!」


 エリーティアと五十嵐さんが動く――エリーティアなら、技能で加速すれば刀の動きについていけそうだ。五十嵐さんの『ブリンクステップ』も、攻撃を散らすために貢献できるが、短期決戦しか選択はない。


「今まで通り、俺の技能の効果でダメージは入れられる! 隙を見て攻撃を……」

「っ……!?」


 次に刀が狙ったのは、エリーティア――エリーティアは瞬時に反応し、『緋の帝剣』で刀を受け止める。


「くっ……!」


 袈裟斬り、払い、突き――刀の動きは流れるようで、エリーティアは切り返すことができずに防戦に回る。受けるだけでは攻撃として判定されず、刀に固定ダメージを入れることはできていなかった。


(早く割り込んで隙を作らないと……だが飛び道具は使えない。確実に当てるには……)


 『皆中』で確実に当たるようにすれば、あの刀に当てられる。だが、今の斬り合いにはやはり割り込めない。


「――エリー、逃げなさいっ!」

「キョウカ……!」


 俺の予想を超えて、動いたのは五十嵐さんだった――今までの彼女とは、動きの俊敏さがまるで違っている。


(そうか、『群狼の構え』で能力が上がって……一撃なら、割り込めるかもしれない……!)


「やぁぁぁぁっ!」


 ◆現在の状況◆


 ・『キョウカ』が『ダブルアタック』を発動

 ・『?知性を持つ武器』が一段目を回避

 ・『?知性を持つ武器』に二段目が命中 支援ダメージ11

 ・『?知性を持つ武器』が『返し斬り』を発動

 ・『キョウカ』が『ブリンクステップ』を発動 →『返し斬り』を回避


「くぅっ……か、かわせたけど……なんて速さなの……!?」


 全員が辛うじて、一度刀から距離を取る。ただの物理攻撃だけではなく、刀のまとっている雷もまた、明らかに危険だ――近づきすぎるのはまずい。


 セラフィナさんも体勢を立て直し、戦列に戻る。最初の、確実な殺意を込めて放ってきた一撃を止められた――しかし、あまりに敵の動きが速く、まとまったダメージを入れることが難しい。


(敵の注意を引きつけられれば、エリーティアのブロッサムブレードも、俺たちの攻撃も入れられる。何としてでも、動きを止めないとな……)


 浮遊する剣が再び攻撃態勢に入る。そのときセラフィナさんが、事前に言っていた技能を発動させた。


 ◆現在の状況◆


 ・『セラフィナ』が『プロヴォーク』を発動 →『?知性を持つ武器』の『セラフィナ』への敵対度が上昇

 ・『セラフィナ』が『反攻の構え』を発動 →カウンター成功率が上昇

 ・『セラフィナ』が『不動の重心』を発動 →『吹き飛ばし』が無効化

 ・『セラフィナ』が『制圧進軍』を発動 →『?知性を持つ武器』の移動範囲に干渉


「私の後ろには行かせない。『前』で止まってもらう……!」

「――みんな、一度目と同じようにセラフィナさんが受ける! 敵の攻撃を止めたら、集中砲火を浴びせるぞ! 五十嵐さん、テレジア、ミサキ! 士気解放を頼む!」

「ええ……っ、行くわよ、みんな……『ソウルブリンク』!」

「……っ!」

「忘れないでいてくれて、ありがとうございます……っ、『フォーチュンロール』!」


 ◆現在の状況◆ 


 ・キョウカが『ソウルブリンク』を発動 → パーティ全員に『戦霊』が付加

 ・テレジアが『トリプルスティール』を発動 →パーティ全員に『三奪さんだつ』効果が付加

 ・ミサキが『フォーチュンロール』を発動 →次の行動が確実に成功


 全員の戦霊が出現し、攻撃の手数が二倍に増える。セラフィナさんも驚いていたが、すぐに何が起きているのかを察してくれた。


 これで一気に勝負をかける。


 俺は敵の刀が揺らめくように動く瞬間を見ていた――セラフィナさんが攻撃を受け止め、全員で反撃に転じる、そのチャンスを決して見逃さないために。

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