第6話

「神奈川県だけど、東京都と隣接してる場所だから、ここからはそんなに遠くないね。今から向かえば開店直後の時間帯には到着出来るかも? でも本当にラーメン屋さんで良いの?」

なんとなく勝手なイメージで、ラーメン屋さんとなおちゃんはあまり結び付きませんでした。

だけど、本人が言うように、やはり女性1人では入りにくいし、一緒に行ってくれる人が居ないと、なかなか行く機会がないということも理解できました。

今とは違って、女性が1人では入りにくいお店の雰囲気がどこのラーメン屋さんにも有ったのです。

例えばお店側は大歓迎だったりしても、そこのお客さんがジロジロと無遠慮に1人で入ってきた女性を見たり、声を掛けたりするような輩も居ました。

取り敢えず有名なラーメン屋さんのラーメンを食べてみたいというなおちゃんの気持ちを理解すると、早速希望のお店に向けて車を走らせました。

その道すがら、2人で色々とこれからの話をしました。

なおちゃんは台湾の彼の事がまだ簡単には諦められなかったものの、ハッキリ断られたのにしつこく連絡をするつもりもありませんでした。

だからその心の傷が癒えるまでは、時々慰めてほしいと私に希望を出してきました。

私の方も『メル友→実際に会う→あわよくば彼女』のような期待をいつも持ちながらメール交換をしていたのですが、なおちゃんは高嶺の花過ぎることもあり、初めから釣り合ってないのを感じていました。

逆にラーメンを食べてみたい…というような、彼氏候補にはお願いしにくいようなリクエストをしてくる時点で、私が彼氏になるという可能性はないのかなぁと感じたこともあり、あくまでも友達として付き合っていこうと考えたのです。

そこで「台湾の彼のことで悲しい時はいつでも慰めるし、次の恋が見つかるまで応援もするね!」と約束をしてしまいました。

ラーメン屋さんに到着すると、普通に営業を開始しており、入ってみると何の変哲もない普通のお店でしたが、確かに美味しいと評判になるだけのラーメンでした。

なおちゃんの上品さと、ラーメンの庶民的な雰囲気がどことなくアンマッチしているのを楽しみながら、一緒にラーメンをすすり、「噂通りの美味しいラーメンだったね」とニコニコしながらお店を出ました。

今日は慰めるためにラーメン代は私が奢ろうと思っていたですが、「ワザワザ慰めに来てもらって、ラーメン屋さんにも連れてきて貰ったのだから、ここは私に出させて!」と言って、ササッと支払ってくれました。

その行動の素早さにとても驚いたのですが、有無を言わせない雰囲気だったので、黙って受け入れて感謝の気持ちを伝えました。

そのラーメン屋さんからはアクアラインの川崎側の入り口が近かったこともあり、そのままドライブで「海ほたる」まで行き、千葉県の木更津側へ抜けて、なおちゃんの住んでいる街まで送りました。

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