第4話

既にメールのやりとりで概要は知っていた物の、留学したときのお話から詳しく聞くことにし、とにかく色々と喋ってもらってスッキリしてもらうしかないと思いました。

なおちゃんに話を促すと、ゆっくりと留学の経緯やそこでの生活、そしてホストファミリーとの交流や、同時期に留学していた台湾の彼について話し始めました。

彼はとても紳士的な態度で、しかし話を聞いた限りでは、なかなか思わせ振りな言葉を言ったりしていたようです。

さらに詳しく話を聞いてみると、見た目は普通と感じていたし、特になおちゃんの好みのタイプでもなかったとのこと。

最初はただ一緒にホストファミリーに迎え入れられた同居人としか感じていなかったのに、彼の紳士的な態度と素敵な言葉に、いつしか強く惹かれるようになり、気が付いたら一方的に好きになっていたのだとか…。

帰国してからも定期的に連絡を取りたいと、なおちゃんの方から申し出て、彼の方も同意はしてくれたようですが、やはりお互いに距離が開き、連絡の頻度が下がると、疎遠になっていくのは時間の問題だったようです。

それでも相手に恋心を抱いてしまったなおちゃんは諦めることが出来ず、積極的に国際電話などでアプローチしていたのですが、遂に今夜「彼女が出来たので、もう連絡をする事は出来ない。」とハッキリふられてしまったのだとか…。

その話を聞き、相手の男性はとても誠実な男だなぁと私は感じました。

ズルい男であれば、いくらでも話を合わせ、二股を掛ける事だって出来たはずだし、少なくとも電話が掛かってきて応対するくらいであれば、全然損はしないはずです。

それでも、なおちゃんの側から一方的に国際電話を掛けているわけで、電話代はバカにならない事が彼にも判っていました。

そうした配慮なども見え隠れし、相手はこれ以上のお付き合いをしないと決めたのでしょう。

そこまで話すと、なおちゃんはまた小さな女の子のように、恥も外聞もなく「うわ~ん!」と泣き出しました。

その泣き方が本当に小さい女の子のようで可愛らしく、大人の女性の美しさと、小さな子供の可愛らしさの両面を感じてしまい、私まで酷く動揺してしまいました。

電話で聞いていた「な~ぐ~さ~め~てぇ~!」

という叫びが、そこでもう一度出たのですが、酷くしゃくりあげながら、訴えるその様子は本当に可愛らしい子供そのもの。

仕方がないので公園の脇に車を停めて、シートベルトを外すと、少し無理な格好ではあったのですが、『本当に良いのだろうか?』と遠慮がちに、なおちゃんをそっと抱きしめました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る