あれは流石お兄ちゃん!かっこいいと思っている顔だ!

「お兄さんお久しぶりです。また会えて嬉しいです!」


そう言いながら微笑む少女。

少し長めの黒髪に線の細い体、顔には眼鏡が知的に乗っている。

所謂文学美少女だ。


「あ、生徒会長...。」

「清香ちゃん!」

「生徒会長さんだったよね?」


三者三様の反応を返す。

芽衣は友人に対する挨拶、一誠は過去の記憶を辿っての確認、そして紡はちょっと苦手意識を持った反応。

紡の反応から察した人が多いだろう。

そう、この妄想系ブラコン妹はちょっとやりすぎだのだ。


「こんにちは皆さん。お兄さんはきょうだいの保護者役ですよね?忙しいのに流石です!」


さらっと自分のことにしたよこの子。

凄いね...ぶれないんだねぇ〜。


「そうなんだ!生徒会長さんも見てよこれ!写真いいの撮れたんだ!」


ニコニコと嬉しそうに言葉を返す一誠。

ずずいっと距離を詰めてカメラの画面を見せる。

紡、紡、紡、紡、芽衣、紡、紡、芽衣、紡、清香。

ほぼ紡の写真だが、そこにはちゃんと芽衣や清香が映っていた。


うわぁ〜、キモイくらい撮ってるよこの人。

それこそ一歩移動するごとに撮ってるし...。

でも芽衣ちゃん達も撮ってるんだ、ちょっと感心。


一誠的には将来の妹候補のことも撮っておこうと思っただけなのだが、都合よく解釈する子達にはそうではない。


「本当に私の事も撮ってたんですね。これは私も妹枠なのかな?それとも...私だから撮ってくれたり...」


恥ずかしがりながら嬉しそうに笑う芽衣。

小声で呟く声には欲望が混ざっていたけど。


「よく撮れてますね!流石お兄さんです!紡さんもそう思いませんか?」


この子はこの子で紡が沢山取られているのは、妹である自分が撮ってあるのをカモフラージュするためだと思ってる。

え?この文読んでて怖いんだけど、妄想系ブラコン妹極まっちゃってるよ。

感想はいらない?だって仕方ないじゃない!今寒気したんだもん!ちょっと位共有して紛らわせる位してもいいじゃない!もうちょっと優しくしてよね!


「そ、そうだね。生徒会長...。よく撮れてるね。」


一定の距離を取りながら頷く紡。


「もう、生徒会長だなんて呼び方嫌ですよ〜、それにもう卒業したので清香って呼んでください!」


これだけ見るとラブコメなんだよなぁ〜。

実際はすごいズレてるんだけど。


「いや、それは、その...。」


縋るように一誠を見る紡。

頼られた一誠は嬉しくなって助け船を出す。


「会長さん、じゃなかった。清香さんその辺にしてあげて、紡も美少女からそんなこと言われたら緊張しちゃうってさ。」


違う、そうじゃない。

この恋愛脳!そうじゃないって!ラブコメに持っていくの自重しなさいよ!

紡くんの顔見なさいよ!すごい沈んでるわよ!


『はぁ?何言っているんだ!紡が俺に頼ってきたのは恥ずかしいから呼べないけど、呼べないって言う勇気がないから何とかしてってことだろうが!それにあれは流石お兄ちゃん!かっこいいと思っている顔だ!』


なんでよ!どう見てもなにやってんのこのクソキモブラコン童貞野郎って思ってる顔でしょうが!


「ごめんなさい、私紡さんともっと仲良くなりたくてつい...。」

「はは、いや大丈夫だよ?ごめんね、緊張しちゃってさ...はぁ。」


ため息をつきながら顔を逸らす紡。


「いえ、高校でも仲良くさせて貰えればいいなと思ってます。今度ともよろしくお願いしますね。」

「ということは清香ちゃんも一校なのか?これからは後輩ちゃんかぁ、俺とも仲良くしてくれたら嬉しいな。」


ああ、何言ってるの貴方は...。

てか、何自然に名前呼んでるの?陽キャか?陽キャだから距離の詰め方えぐいのか!?どうせ私は男子のこと名前で呼ぶことすらできない陰キャ女ですよーだ!


「もちろんです!お兄さん♡」


うっとりした顔で答える清香。

紡くん頑張れ...この兄は君とこの子でラブコメしようとしてるんだ。


「あ〜!私も!私とももっと仲良くして欲しいです!」

「そうだね!芽衣ちゃんも後輩だからもっと仲良くしようね!今までよりも家に来て紡と遊んでくれてもいいんだよ?」

「兄貴!遊んで貰ってるんじゃなくて、遊んで上げてるの!こっちが!芽依の相手するの疲れるんだからな!」

「家来ていいよ...うひゃぁ...そんな、まだ心の準備が...あ、でもでも嫌ってやけじゃなくて、寧ろバッチコイって感じなんですけど。」


そんなことを言いながら卒業の日を終え兄弟。

これからどうなって行くのか...。


「高校生活かぁ、兄貴に心配されないようにもっと頑張らないと!」


なんて健気なんだろう紡くん。

でも一誠のそれは半分自分のためだから気をつけてね。


―――――――――――――――――――――――

次回予告


どうも〜、紡くんに母性が目覚め始めた天の声です。

は?まだ母親になる年なんかじゃないんだが?

まだまだピチピチなんですけど!!

いいもん!ご飯食べてもっとバインボインになってやるんだから!

もぐもぐ!ゴクン!

...意外と白米だけでも美味しいのね、ちょっと舐めてたわ。


次回〜美味しいけどなんか違う〜

お給料は私が取り戻す!


読んで頂きありがとうございます!

ぜひ応援していただけると嬉しいです。

ブックマークやコメント、☆ボタンなどで作品の応援をお願いいたします。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る