私を、貴方の妹にしてくれませんか? side松本 清香
あれは3ヶ月前の寒い日のことです。
いつも通り生徒会の仕事を終えた私は玄関に向かって校内を歩いていました。
外からは運動部が部活をする声、音楽室からは吹奏楽の音色が微かに耳に響く。
そんな当たり前の日常。
ふと、窓の外を覗くとそんな日常の中にひとつの異物がありました。
「また、あの人だ。」
ついつい言葉が漏れてしまいます。
校門のところでじっと何かを伺いながら校内を除く人影。
いえ、人影と言うにははっきりしすぎですね。
この中学校からも近いとある高校の制服を着た男性が1人で立っていました。
私は、彼が気になって仕方がないのです。
シュッとした出で立ち、遠くからでもわかる整った顔、そして何より雰囲気が大人です。
聞けばこの学校の卒業生にして、とある生徒のお兄さんだとか。
校門で学校の先生と談笑している所を見た子から聞きました。
私は大人びている自覚はありますが、まだまだ子供です。
そんな私には彼がとても大人に感じられました。
先生や他の大人と話す時は年相応な顔をするのに、彼の弟にはとても優しく、とても柔らかい顔を向けるのです。
それは私の知らない顔でした。
いえ、正確には知っています。
おばあちゃんが私に向けてくれるのと同じような顔だから。
でも私たちとそう変わらない高校生があの顔をできることに驚きと憧れを抱きました。
あの人みたいな人がお兄さんなんて羨ましい...。
そう1度思ってしまうともう止められませんでした。
普段であれば絶対にしない選択、絶対に選ばない行動のはずでした。
ですが、何故か動いてしまったのです。
「私を、貴方の妹にしてくれませんか?」
言ってしまいました。
我ながらなんて突然なんだろう、意味もわかんないし。
「ええっと、君は?」
そんな私に優しく答えるお兄さん。
あぁ、この人だ。
この人が私のお兄さんなんだ。
「松本清香15歳、庭蓮中学3年生で生徒会長です!よろしくお願いします!」
勢いよく頭を下げて自己紹介をする。
「君が生徒会長さんかぁ、いつも弟がお世話になってるね。ありがと。」
お礼言われちゃった!これってもう公認ってことだよね!ね!もう妹って認めてくれたってことだよね!
「でも妹ってどういうこと?」
お兄さんの目が試すような目に変わる。
あぁ、そういう顔もできるんだ...!
知れば知るほど私のお兄さんだよぉ〜。
「もしかして、君って紡と付き合ってるとかかな?将来の義妹的な意味合いだったりするの?」
お兄さんが距離を詰めてくる。
目と目を合わせるように私の顔を覗き込む。
ち、近い!お兄さんがこんなに近い!これは抱きついてもいいのかな?甘えてもいいのかな?
「四阿さんとはお付き合いしていませんよ。四阿さんとはクラスも違いますし...でも今度話して見ようかなって思ってます!」
そう!お兄さんともっと近づいて甘えるために!
「そっか...これはラブコメなのか?優等生系妹属性美少女か、有りかもな...」
「なにか?」
小声で何かを言ったお兄さんの言葉を聞き逃す。
ごめんなさい!お兄さんの言葉を聞き逃すなんて妹失格です!なんでもするので妹にしてください!
「ううん、なんでもないよ。でもそっかじゃあこれから紡と仲良くしてね。君のお兄さんになるかはまだわかんないけど。」
「はいっ!全力で仲良くさせていただきます!待っててくださいね!お兄さん!お兄さんにふさわしい妹になって見せます!」
そうだ、四阿さんと仲良くすればお兄さんの妹になれる...久しぶりに全力で頑張ろう!
「ははっ、俺の為じゃなくて紡にふさわしい人になってくれればいいのに。よろしくね清香ちゃん。」
お兄さんが私の名前を呼ぶ。
それだけで天にも登る気持ちだった。
そこからはあまり覚えて居ない。
気づいたら家にいていつものようにご飯を食べていた。
いつものように1人で薄暗い部屋の中で。
「ふふっ、お兄さん...。やっと私の、私だけの大切な人が出来たんだ...あはは、はははっ!」
久しぶりに寂しくなかった。
壊れてしまった私の心にお兄さんという1つの幸せ《よりどころ》ができたんだもん。
明日から忙しくなるぞぉ〜!
まずは四阿さんの情報集めからだね。
「覚悟しててくださいね、私のお兄さんを独り占めする悪い
―――――――――――――――――――――――
次回予告
どうも〜、文句を言ったら出させて貰えなかった天の声です。
清香ちゃん、ヤバい子だったんだね!
あんなのの妹になりたいとか...。
え?そこじゃない?まぁまぁそんなことはどうでもいい事よ!てか、今回ってあの子がただモテるってだけのエピソードよね!?私は飯うま回を望んでるのに!いつになったら美味しく食べられるのよ!もっと味の濃い飯うま展開プリーズ!!
次回〜白米だけでも意外と行ける〜
ターゲット、ロック・オン!
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