私、天の声なんだけど...

「あんたたち〜!そろそろ行かないと!」

「わかってるよ母さん」


一誠が答える。

運命の日から15年が経ち一誠は17歳、つむぐは15歳になった。

今日は3月9日。

そう今日は兄弟の弟のそつぎょ――。

『今日は我が最高に素晴らしい弟の卒業式なのだ!

わかるか?卒業式だ!3年間の中学生活を終えてさらに大人になっていく為の神聖な儀式。

なんとしてもカメラに紡の勇姿を収めなくては!』


最新型の一眼レフを撫でながら一誠が口走る。


おい、ナレーションに割り込んでくるな!

話が進まないでしょうが!それにお前はお前で学校とかあるし、普通兄は卒業式には出ないでしょ!


『え?お前は学校とかあるだろうって?兄は卒業式に行かないだろうって?はぁ、何言ってるんだ、俺はスーパーお兄ちゃんだぞ?弟あるところに俺ありだろうが!中学の卒業式なんて人生に一回しかないんだらかな!

ん?わかったって?いやわかってない!君は紡がどれだけ素晴らしい存在なのかを1%もわかってないはずだ、これから俺が説明してやろう。何、遠慮することはない、五時間ほどで1%くらいは理解できるだろう。』


長いわ!


「ごめんね、一誠。私が仕事休めないばっかりに...。」

「全然だよ。いつもありがとね母さん。」


『そう!そうなのだ!これは母から頼まれた正当な仕事なのだ!

父さんが亡くなってから7年。

母さんは女手一つで俺たち二人を育ててくれた。

今日も本当は行きたいだろうに、どうしても抜けられない仕事があるらしい。

そこで、俺の出番ってわけだ!

残念だが、きみのような木端に裂く時間はないのだよ。

まぁ、紡の前ではどんなものでも等しく木端だけどな。』


木端ってぇ...私一応天の声よ?てか、なんで聞こえてるの?おかしくない?


『はぁ?天の声?何言ってるの君?君がどんなのでもなんでもいいんだよ。弟の話してるなら、スーパーお兄ちゃんの俺が感じ取れないわけないだろうが!』


ええぇ、ちょっとキモイんですけど...誰か変わってくれない?天の声。私はもっと普通のところ担当が良かったんですけど。あ、無理?ですよね〜、でもちょっとくらい給料上げてもらっても...?文句言うな?いいからやれ?はぁ、わかりましたよ!やればいいんでしょ!


えー、まぁそんなこんなで一誠は弟の卒業式に出ることになるのでした〜。

どたどたと言う階段を駆け降りる音の後に扉が開く。


「兄貴ごめん!遅くなった!」


弟の紡が――。

『キタァァ!つむぐー!我が推しいつ見ても良い!』


また途中で...え?割り込まれるな?ちゃんと話進めろ?...え?給料下げるぞ?ちょ、ちょっと待ってくださいよぉ!それはないって!終わった、私の人生終わった...(涙)


『使えない天の声に代わって俺が紹介してあげよう!マイウルトラブラザー四阿紡あずまつむぐを!まずはその最高な容姿から!さらさっ――。』


さらさらとした太陽の光を一身に受けたような明るめの茶髪に、キリッとした目にすっと通った鼻。身長も高く、すらっとした見るからに爽やかで優しい好青年が扉の前に立っていた。


へへんだっ!私だって割り込んでやったもんねー!どうだぁ!まいったかぁ!このこの!ばーかばーか!


『はっ!30点をくれてやろう。だけどほんの一部だけだが、紡の魅力を伝えてくれたのだ、ありがとう』


いや、あの〜、それはちょっと違くない?お礼言われるとなんか途端に申し訳無くなってきたんだけど...自分がすっごいちっぽけに感じてきたんですけど。

あと顔がいいからなんかムカつく!


「兄貴?どうしたの?」

「いや、ついに紡も卒業なんだなって思ってさ。ほら、ネクタイ曲がってる...これで良しっ!」

「ありがと、兄貴。」


手慣れた手つきでネクタイを直す一誠。

どうせ心の中だとネクタイさらっと直す俺カッコいいとか思ってんだろうなぁ〜。


『違うぞ、今の俺はお兄ちゃんカッコイイだろ?もっと憧れていいんだぞって考えてるんだ。』


「良し、じゃあ行くか!」

「おう!」


兄弟は二人仲良く歩き出す。

いやほんと、弟のこと大好きすぎでしょこの人――。


―――――――――――――――――――――――


次回予告


どうも〜、給料下げられてテンション下がってる天の声です。

仲良く歩き出した兄弟2人。

そんな2人を待ち受ける通学路の出来事とは!?

まぁ、バトルものじゃないので特に何も待ってないんですけどね笑...ネタバレするな?給料下げる?ちょっと待って!いやっ、これ以上はいやー!


次回〜天の声白米だけ炊く〜

お楽しみに!



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