新年のくつろぎ

「はぁぁぁぁ・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・美結、はいみかん」

「ありがとぉ」


今は美結と友人の2人でこたつに入っている。

もちろん出ることなんか出来ないから一生中に入っている。

彼女らの視線の先にはテレビ。

お笑い番組から新年のおめでたい番組まで様々である。

彼女らがどんな番組を見るのかと言えば、ニュース番組。

―――――ではない。

美結も1人の学生だ。

故に好きな歌手なども居る。

年末の歌合戦も見たし、更には今も音楽番組を見ている。


「あ〜私この曲知ってる〜」

「私は知らないな〜」


そんなふうに会話しながら見ていると、美結の携帯が鳴る。


「まさか新年早々・・・・・・」

「ハハハ、まさか・・・・・・」


苦笑いをしながら美結はディスプレイを見る。

そこには無情にも『横川警部』と書かれていた。


「ぐはぁ・・・・・・」

「美結!?」


無理もない。

正月早々仕事などしたい人は居ない。

しかし、仕事は仕事だ。

美結は渋々と携帯を手に取ると電話に出る。


「あけましておめでとうございます、横川さん。それで、新年早々何の用事ですか?」

『おう、あけおめ。別に仕事じゃないからな?』

「あマジ?やった〜」

『声がメチャクチャ明るくなったのは気の所為ということにしておこう』

「で、じゃぁなんでかけてきたの?」

『安斎は・・・・・・初詣、行ったか?』

「行ってないけど」

「美結、即答しないで」

『じゃぁ、近くに俺が居るから来てくれ』

「外出たくない・・・・・・」

『運動だと思ってきてくれ。お年玉あげるから』

「よし行こう」

「美結、即答しないで」


お年玉に惹かれた美結は速攻で外出する準備をする。


「お賽銭とお守り、それから・・・・・・」

「あれ、寒いからカイロ」

「了解。それじゃぁ美結、行こうか」

「うん」


―――――ということで、彼女らは横川からお年玉と言う名の賄賂を受け取りに行くことにした。



「「あけましておめでとうございます〜」」

「おうあけましておめでとう」

「「はいっ」」

「んん?何だこの手は?」

「「え?」」

「え?」


無論、お年玉を貰う手だ。

それを察したのか否か、横川は財布を取り出す。


「いくら欲しい?」

「できるだけ多く」

「右に同じ」

「じゃぁ2人で半分な」

「横川さん、ありがとうございます」

「ん?」

「いつもお疲れ様です、そしてありがとうございます」

「そんなこと言っても増えないからな――――って、それ俺の財布・・・・・・」


横川が気付いたときには時すでに遅し。

有り金を3等分して分配する。

つまり


「あれ、残り4万ちょいになったんだが・・・・・・。窃盗罪で訴えていいかな?」

「なお、本人の許可は得てます」

「変なところでその知識を使うな」

「―――――で、俺の金はどうする気だ?」

「募金?」

「あ、安斎はあれか。お年玉全額募金するタイプの人か」

「いや、そういうわけじゃなくて。10円くらいは」

「少しでもそう考えてしまった俺が馬鹿だった」

「残りはアニメ◯トで使う」

「どんだけアニメ見る気だよ」

「推しのグッツが欲しいので」

「あっそう」


横川はというと、ため息混じりに呼ばなければよかったと後悔していた。

当初の予定の少なくとも倍以上を失ったのだから当たり前だ。


「はぁ・・・・・・。正月早々・・・・・・」

「参拝も終わったことだし」

「ん?した記憶がないが?」

「それは・・・・・・ご都合主義で」

「おい安斎・・・・・・」

「おみくじ引こう!!」

「展開速いな」

「よし!!私から!!」

「頑張れ美結!!」

「え〜っと」


美結は100円を納めて引く。


【第十番 大吉

 このみくじにあう人は

 古く悪いしきたりを

 改め新しく

 時代に

 適した姿を

 求める相で

 再生の喜びが運を導き

 枯木に春が来て

 花開くようである】


出たのは大吉。

かなりの運だ。


「やった〜大吉♪」

「お、安斎はすごいな」

「なんかかっこいい冒頭」

「な」


一方の友人。


「私は――――大凶」

「え」

「大凶なんて初めて見たぞ、俺」

「わ、私も。え、美結交換して」

「交換してもいいけど・・・・・・神が各々に与えてくれた運は変わらないと思うけど」

「・・・・・・美結の意地悪」

「なんでそうなるの・・・・・・」

「俺も引くか」


横川はみくじを引く。

そこに書いてあった文字を見て横川は微妙な表情を浮かべる。


「ん〜・・・・・・」

「どれ?あ〜小吉ね〜、一番困るよね〜」

「病気:回復する

 恋愛・縁談:この人を逃すな

 待人:来ない

 訴訟:叶わない、諦めよ

 失物:家の中を探せ

 売買:売るに吉、買うのは控えよ

 建築:配慮すれば良し

 旅行:諦めよ

 金運:周囲の人に配慮すればよし

 受験:落ちる」

「なんか・・・・・・私よりマシなんだけど」

「というか、金運マジでそうじゃん」

「周囲の人に――――って私達かw」

「まったくもってその通りだ」

「元日早々8万失う人って中々いないよね」

「というかこれもう凶の類だよね~」

「ホント」


横川と友人はみくじを結びに行った。

一方の美結。

写真を撮って持ち帰ることにしたようだ。

ところで。


「この後どうする?」

「え~どしよ。私たちは帰ってテレビ見たい」

「連行な」

「年始早々警察署には行きたくないかな~」

「俺は明日から出勤だが?」

「「ご苦労様です」」

「讃えてもお金は出てこないからな?」

「まぁ、知ってた」

「うん」


そして遠くから悲鳴に近い叫び声が聞こえたのは、3人がまったりといつも通りの会話を繰り広げていた時のことだった。




≪新年のくつろぎ was Finishing, And To The Next Story...≫

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