閑話(3)
「・・・・・・分かったよ」
「え?」
私は帰りながらつぶやく。
「美結、何が分かったの?」
「そうだね、何から話そうか」
「最初っから」
「え〜っと、私が分かってるのは首謀者と手口、それからその手口が広まらない理由だね」
「ほとんど全部じゃん」
「まぁ、確証はない」
「え〜、美結、教えて」
「分かった分かった」
「まず最初に、今日は美結の家に泊まります」
「・・・・・・は?」
「いいじゃん〜」
「まぁ良いけど。じゃぁ、夜話す」
「そうして〜」
「あ、先輩からLINEが・・・・・・あ、連絡先貰った〜♪」
「じゃぁ、美結。夜までに整理しといてね」
「そうする」
私はSという人に色々聞くことにした。
◆
「美結〜、寝よ〜」
時間は深夜2時。
私達はというと、遊んでいた。
というよりかは、共同作品を作っていた。
「そだね、寝よ」
「あ、そうだ。例の推理の件、聞かせてくれない?」
「忘れてたよ。え〜っと、何から聞きたい?」
「同じことを言われた気がする」
「まぁ、そういうこともある」
「最初っからで」
「分かった。私が分かったのは―――――」
そう言いかけて私は止まった。
本当にこれは言って良いのかと。
流石に個人情報も含まれているので踏み込みすぎるのはよくない。
まぁ、私、プロなわけじゃないから良いか。
「えっとね、まず―――――」
再び話し始める。
すべてを。
「―――――意外。そいうことなんだ。明日先輩に話す?」
「そうだね。昼休みに先生と先輩には話そう」
ということで、私達は明日に話す内容を話し合った。
そして寝る頃には日本の朝が明けようとしていたのだった。
◆
「――――――で、どうする?」
「え?なんて?」
「だから、先輩と先生どっちを呼んでくるかって・・・・・・美結、大丈夫?」
「よく2時間睡眠でそこまでテンション高いよね」
「そりゃもちろん、オールしたから」
「マジかよ・・・・・・」
私は重い腰を上げると、先輩を呼んでくるとだけ告げて教室を出る。
ちなみに会場は空き教室。
ということで先輩のところへ。
「先輩〜?」
「おう、美結か。ちょっと、待ってな?」
「どうしたんですか?」
「三浦が来るかもしれん」
「三浦って・・・・・・Sですか?」
「そうだ。連絡先上げた時に聞かなかったのか?」
「あ、はい。まぁいいかなって」
「三浦美咲、それが彼女の名前だ」
「へ〜」
「さ、下の昇降口まで行こうか」
「え?でも会場は予備教室に・・・・・・」
「今、連絡が来て到着したそうだ。来ないのか?」
「いえ、行きます」
私と先輩は下に降りる。
昇降口付近にはお弁当を食べたり遊んでいる人がいたりでたくさん人がいるが、先輩は迷わずにとあるテーブルに歩いていく。
そこにはメガネをかけた小柄の女子が座って勉強をしていた。
「美咲、待たせた」
「・・・・・・来た」
「見ればわかる。じゃぁ行こうか」
「・・・・・・あなたは?」
「私?」
自分に矛先が向くとは思ってなかったので一瞬ビックリするが、私しか居ない。
「安斎美結です。あの、昨日LINEで色々聞いた」
「あぁ〜」
納得してくれてよかった。
ここで何のことか説明すると面倒くさいしね。
「じゃぁ、行くぞ。先生も待たせてるしな」
そう言って先輩が先導して歩き出す。
「あの、色々ご迷惑をおかけしました・・・・・・」
「あ、いや、三浦先輩も大変ですよね、って他人事ですけど・・・・・・」
「同情してくれるだけで助かります。私が出した些細な情報で犯人がわかるなら良かったです」
「あ、はい。だいぶ三浦先輩のお陰で分かりました」
「良かった・・・・・・。あ、それと私のことは『美咲』と呼んで下さい」
「え、良いんですか?」
「仲が良い人は良いんです」
「あ、仲が良い判定になった」
「フフ、良いんですよ。私とLINEをしている時点で」
「え?」
「美咲はな、信用している人以外はブロックする。私が美結のことをしっかり説明しなかったら多分ブロックされてただろうから感謝しろよ?」
「感謝してます!」
と話している内に空き教室に着いた。
先輩はドアの前で止まると美咲の方へ振り返る。
「・・・・・・大丈夫か?」
「ヒュッ――――――」
美咲の息を呑む音が聞こえる。
先輩は心配そうに肩に手を置く。
「――――うん。なんとか・・・・・・」
「私が話すので、美咲は辛くなったら先輩と一緒に出て行ってもらって大丈夫ですよ」
「分かり・・・・・・ました」
ドアを開くと一斉に目線が集まる。
セッティングは上場。
そして私が犯人と睨んだ人も居る。
よし。
居るのは、一部の関与してそうな生徒、担任。
合わせて10人前後。
「美結〜、頼んだ」
「先輩、頼みます」
そう言うと、私は前に立つ。
「美結、私から良い?」
「良いよ」
「え〜っと、今回の事件の根本は個人の偏見から生まれたものでした。そしてその偏見とはおそらくあんまり良いことではない。それで
「(美咲)」
「美咲です」
なんで名前も把握してないの・・・・・・。
私もついさっきまで知らなかったけど。
「それで、個人的な恨みをその人に間接的にぶつけていた。無論、バレないように賄賂などを利用して。協力者が増えれば増えるほど外に漏れる可能性が高くなる。が、そうならないように上手くやった。例えば――――、教育委員会に連絡が行けば、学校側に確認を求められる。そこで歯止めをする」
「・・・・・・」
一同は黙って聞いている。
そろそろ私の出番。
「・・・・・・で、仲間集めをしていたのは、生徒の1人でしょう。私は知りません。詳しくは。ですが、落書きについては確かなことが言えます。それをやっていたのは無論、先輩の目を盗んでかつ周りに他言させないように脅しをかけていたのでしょう」
「・・・・・・なんて?」
そこで美咲が私に問いかける。
一同がしんとしている中だったので、小さい声でも簡単に聞き取ることができた。
「ん〜・・・・・・私も詳しく知らないけど・・・・・・進学できなくする、とか?」
「「・・・・・・え?」」
先輩と美咲は疑問の声を発した。
私も知らないよ、そんなの。
今作ったから。
「で、調べたんだけど、この学年には深く教育委員会とかに関わっている人は居ない。つまり、毎日落書きが出来るのは、そして更にはこの事件の主導者なのは、担任の高林先生ですよね」
「・・・・・・!!」
「「・・・・・・せ、先生!?」」
美咲と先輩は先生の方を同時に振り返る。
先生は驚きに満ちた目でこちらを見る。
「・・・・・・そして私の推測からして仲間集めをしていた片柳さん、なんか言ったらどうですか?」
「!?」
「図星ですか・・・・・・」
「美結すご」
「・・・・・・でも、高林先生はいつも相談に・・・・・・」
「美咲、それはおそらく同情に見せた次の作戦の決行の仕方、美咲が嫌がることを聞き出していたんだよ」
「・・・・・・!?」
「ま、待ってくれ。俺は本当に三浦のことを思って・・・・・・」
「では聞きます。浦沢さん」
「は、はい」
浦沢さんは私が中3の中で一番関与してなさそうな人を先輩に聞いて呼んだ人。
「高柳先生は、何か解決策を用意してましたか?」
「・・・・・・そ、その・・・・・・」
「浦沢、俺は用意してたよな?」
無駄に先生は浦沢さんに圧をかけている。
仕方ない・・・・・・。
「・・・・・・浦沢さん、本当のことを言ってください。あなたの身は保証しますので」
「・・・・・・な、何を!?」
「せ、先生は・・・・・・」
「・・・・・・浦沢?」
「・・・・・・私に仲間に入らないか持ちかけてきました!!」
「・・・・・・のやろ!!」
先生はものすごい剣幕で浦沢さんを殴ろうとした。
が、私のほうが動くのが先。
「っと」
浦沢さんの前に達、先生の右手を受け流す。
「美結、大丈夫?」
「うん。それで、浦沢さん。もちろんその後脅されましたよね?」
「は、はい。このままだと進学させないぞ、って」
「やはり・・・・・・」
「生徒が先生に逆らってんじゃねぇぞ!!」
「では、生徒じゃなければ良いんですね?」
「あ?」
「お聞きになりましたか!?校長先生!?」
「冗談も程々に・・・・・・」
「冗談ではない」
そう響き渡った声に高柳先生の顔から血の気が失せていく。
「安斎くん、この件は感謝する。すべて聞かせてもらったよ、高柳先生。あなたは今日限りでクビだ」
「し、しかし校長・・・・・・」
「しかしもクソもない!!生徒を貶めて何が楽しい!?先生は生徒の見本にならなければならないのだろう!?生徒の未来を踏みにじって何が先生だ!!今すぐにでも退職だ」
「ヒッ!?」
「「「「・・・・・・」」」」
私達はそっと離れる。
「君らもだ、生徒諸君。この件に関与した生徒に関しては10日間の謹慎の罰だ。そして推薦を貰っている人はすべて取り消させてもらう」
「そ、そんな・・・・・・」
「人を弄んでおいて今更それはないだろう。すまんな、三浦美咲さん」
校長はその場に膝を付くと土下座した。
そこまで?
「こ、校長先生、頭を上げてください」
「本当に申し訳ない。私がもう少し速く気付いていれば・・・・・・」
「わ、私が速く相談しなかったのが悪いんです・・・・・・」
「それが高柳だったばかりに・・・・・・」
校長先生はそう言うと、立ち上がった。
「・・・・・・せめて・・・・・・」
高柳先生は校長の拘束から逃れる。
何をするのかわからない。
逃走だろうと、私は思った。
が、現実は違った。
「このやろう!!」
美咲に先生は飛びかかる。
「危ない!!」
先輩が叫ぶ。
美咲が避けようとするが、間に合わない。
「・・・・・・ごめんなさい!!!」
私は先に謝ると美咲を突き飛ばす。
そして先生の前に立つと回し蹴りを浴びさせる。
ふぅ、これでいいか。
「あ、ありがと」
「大丈夫ですか!?」
「なんとか私が受け止めたから」
「先生伸びちゃった・・・・・・」
「あとの処理は我々でやるから君らはもう帰りなさい。詳しくは後日聞かせてもらう」
そう校長が笑顔で言う。
私達4人と浦沢さんは共に帰路に着いた。
≪閑話(3) was Finishing, And To The Next Story...≫
〜作者あとがき〜
お読みいただきありがとうございました。
これが今年最後の投稿です。
いかがだったでしょうか?
まさか先生が犯人とは思わなかったでしょう?
さて、来年も本編の続きをお届けしてまいりますのでよろしくお願いします。
皆様、良いお年をお迎えくださいませ。
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