閑話(2)
「安斎〜来たぞ〜」
昼休み。
先輩が教室に来た。
それに気が付いた私達は先輩と共に外へと移動する。
食事スポットとなっている場所から離れて日当たりの良い場所に来た。
近くにあったベンチに先輩は腰を下ろすと、その対面に私達がすわる。
「はぁ・・・・・・どうせ、アレだろ。美結は勘付いてしまったんだろ?」
「あぁ・・・・・・はい。先輩は知ってるんですか?」
「もちろんさ。私が誰だと思ってるんだ?」
「情報屋だね・・・・・・」
「ハハハ、言うようになったな。間違ってないが」
「まぁ。戯言は話が終わってからにしようよ」
「そうだな。結構長いから忘れないようにしろよ。あ、質問あれば途中で言っていいぞ」
「了解です」
「あれ、これ私いる意味ある?」
「別に嫌なら良いんだよ?」
「やっぱりここにいる」
先輩は弁当の唐揚げを口に運ぶと、改まったように話し始めた。
「今回のいじめは非常に厄介でね。私は当事者たちから話を聞いたのさ」
「え?被害者ってこと?」
「両方だ。被害者も加害者も両方の話を聞いた。まずは被害者側から行こうか。彼女は私と仲が良くて最初に相談してきたのさ。いや、その前にいじめの経緯と原因から話すか。その方がわかりやすいだろう」
「あ、そうだね」
「ちょっとした冤罪が原因だった。クラスのカーストトップクラスのやつがその子・・・・・・Sとしておこうか。Sに冤罪を押し付けた。生憎にもその日、私は休んでいたから詳しいことは知らないが・・・・・・。Sは最初は気にしてなかった。すぐに収まるだろうと。だけど、噂は収まらずに視線が痛くなって行った。実際、Sは学校がとても好きで勉強も好きだったから学校に通えていたと言ってもいいだろう。理由はそれだけ、友人は殆ど居ないから、理由は、うん、おそらくそれだけだろうな。まぁ、それで学校に来なくなったきっかけは、実際に表面上に出てきたことだ。わかりやすく言うと、証拠を残せるようになった」
「え?証拠を取ってるんですか?」
「いや、残念ながら」
「えぇ・・・・・・」
「いや、落ち込むのはまだ速い」
「え?」
「それはあくまで教師陣の話だ」
「ということは?」
「そうだ。私が全て持っている。LINEを含めてな」
「え、LINEでも何かやってるの?」
「もちろん」
「まぁ、詳しいことは言及せずに聞いてくれ」
「わかったよ・・・・・・時間もないしね」
「分かれば良い。それで、証拠を私は集めるようになって、私がSの許可を得て教師陣と警察に相談した。以上」
「説明雑じゃね?」
「分かるだろ」
「分かるけど・・・・・・あ、その証拠って落書きとかあるの?」
「もちろん」
「誰かは分かってるんですか?」
「いや、そこまでは。見るか?」
「是非」
先輩のスマホで撮影された落書きを数枚見るうちに、私は違和感を覚えた。
「ねぇ、この字書いたのって、殆ど同じ人じゃない?」
「「え?」」
「だって、この『お前』って字の『前』の4画目」
「ホントだ!!全部外にはねてる。すごい、美結すご」
「僅かで気付かなかったが、本当だな。あ、待てよ。それなら誰か分かるかもしれない。国語の先生に書写の授業をしてもらって」
「何かしらの文章を写してもらい、それで分かると」
「そういうことだ。じゃぁ、私はそういうことだから話してくる。悪いな、先に。ゆっくり食えよ」
「は〜い」
「ありがとうございました」
「おう!?美結が急に丁寧語とは!?天変地異!?」
「バカにしてる?」
「ハハハ、戻って安心したよ」
「私は最初っからこんな感じですけど」
「そうだな」
先輩はそう言い残すと、職員室の方へ走っていった。
大丈夫かな・・・・・・。
そう思いながら残りのおかずを食べきる。
ふと、見ると、まだ右側に半分くらい残ってるやつが居た・・・・・・。
「遅くね?」
「美結が速いだけでしょ?」
「いやいや、あと15分で昼休み終わるけど・・・・・・」
「え!?ウソ!?45分もあったのに!?」
「うん」
「まぁ、はい。残念ながら先輩の話が20分くらい」
「あぁ、じゃぁ、私のせいじゃない」
「でも、話の間でも食べてたよね?」
「ウッ!?」
「あれ?私はメモ取ったりしてたけど・・・・・・」
「うるさい!!」
私から目を逸らすと、ひたすら食べ始めた。
◆
時間は放課後。
「待たせたな」
「うん。すごい」
「え。そこは『全然待ってない』とかじゃないの?」
「先輩相手にそこまでやります?」
「うわ、尊敬の意志が感じられない」
「当たり前」
「うわぁ・・・・・・まぁいいや、で、書写を貰ってきた」
「あ、もう終わったんだ」
「時間割変更を急遽してもらったんだよ」
「それはまたご迷惑を」
「ホントだよ・・・・・・」
「あれ?いやそこは『いやいや、容易いこと』じゃないの?」
「仕返しだ」
「あれま」
美結は苦笑する。
「で、どうするんだ?確かに書写はやったが・・・・・・」
「筆跡、筆跡」
「え、そんなの分かるの?」
「そうそう。今どきね。まず、全員の『前』の字を写真撮って、落書きのも取る。そのデータからAIがこの人じゃね?って推測するの」
「すげ、そんなこと可能なんだ」
「うん、知らなかったの?」
「「あれ?ディスられた?」」
いや、そんなつもりはないんだけどな・・・・・・。
「で、検索と・・・・・・」
画面に検索中の文字が出てくる。
「おぉ、すごい」
「これが現代の技術です」
「知らなかった」
「時代遅れが2人いると苦労するなぁ」
「逆逆。美結が進みすぎてるだけ」
「あれ?」
「私もそう思うぞ」
「あれぇ?」
おかしいな・・・・・・。
決して私がおかしいわけじゃないのに。
というか、これ、私も教えてもらったんだよね・・・・・・。
「どうだ?わかったか?」
「おかしいな・・・・・・該当なし」
画面には無情にもそう表示されていた。
おかしい、何かがおかしい。
3年生全体で実施してもらって、該当者が居ないはずがない。
「他の学年が関わってる可能性はあるのかな?」
「おそらくそれはないだろう。噂は知っていても直接手を下しに行くにはわざわざ階を移動しなければいけない。私が教室に一番に来るようになってからは朝、落書きする人は居なかった。そして見ているうちにわかったのさ。Sが来る日だけ狙ったかのように落書きされている。更には誰も目撃者は居ない。本当に不思議だよな」
「う〜ん・・・・・・」
「謎」
「だろ?私の目を盗むかのように書かれているんだ」
「そのSって人は予告して学校に来てるの?」
「先生には報告してるらしい。今から行きます的な連絡を」
「なるほどね〜。先輩が相談したのはいつ頃ですか?」
「いつ頃って言われても・・・・・・、1ヶ月半くらい前だな。詳しくは覚えてない」
「Sが不登校になり始めたのは?」
「半年くらい前だな」
「え〜っと、先輩が朝早くから登校し始めたのはいつ頃からですか?」
「2ヶ月くらい前かな」
「先輩の目を盗んで書かれるようになったのは?」
「1ヶ月前くらい」
「あ〜・・・・・・うん、なんとなくわかった。Sが最後に登校してきたのは?」
「10日前くらいだ」
「全てを理解した瞬間だった」
「速くね?」
「まぁまぁ、えっとね。確認のためにSの連絡先を教えてもらえます?」
「ちょい待ち。了承を貰い次第、美結に連絡するからそれまで待て」
ということで、私は先輩の連絡を待つ羽目になったが。
その後は、2人で私の家に行った。
先輩はまだ確認作業があるとかなんとか。
≪閑話(2) was Finishing, And To The Next Story...≫
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