閑話(1)
この話は美結が最初に手掛けた事件だ。
それを美結視点でお送りしようと思う。
だが、その前に1つだけ注意がある。
今まで書いてきた美結と内面の美結はだいぶ違う。
それを注意して読んでいただきたい。
無論、他にも色々あるが、事件については、話の中で解説をしていこう。
〜安斎美結視点〜
ね、眠い。
最初に出てきた感情はこれ。
だるい、ではなく眠い、純粋に。
私は学校の窓から見える慣れた風景を眺めながら思った。
昨日、やはり絵を描くんじゃなくて、寝ればよかったと思う。
「え〜、今日は、教育委員会や警察の方々が学びの様子を見に来るとのことだったので、いつも通りでいいとは思いますが、気を引き締めてやりましょう」
警察ね〜・・・・・・私には無縁だろうな、一生。
というか何で警察?
「先生〜、何で警察なんですか〜?」
私の心を代弁するかのように、1人のクラスメイトが言う。
多分、いじめかなんかが起こって、その被害者が警察とか教育委員会に相談した結果、そうなったんだろうね。
「さぁ?先生も分からない」
絶対に知ってる口ぶりで話すね・・・・・・。
後で警察の人とかに聞こうかな?
私、そんな勇気ないけどw
「ねぇ、絶対知ってるじゃん」
「いや、本当に職員会議で何も言われてないから」
「ん〜ならしょうがないか」
そこで引き下がるんだ。
私ならもう少し聴くけど。
というか、これで多分担任は何も言わないだろうな、ということが分かった。
少しだけ考えてみよう。
昔から推理っぽいことは得意だから楽しい。
ということで捜査もどき開始。
「ねぇ、美結?」
「わぁ!?」
「また変なこと考えてるでしょ?」
「ななな、何で!?」
「今の反応と、顔に書いてあった」
彼女は私との古い友人。
小学生時代からだったと思う。
それより前なんだけど、実際に付き合いが始まったのがそれくらい。
「で、私になにか?」
「いや、何考えてるのか詳細が知りたい」
「お、教えないよ?」
「どうせ探偵のマネごとでしょ?中学生になってもやろうとしてるの?もう中2だよ?」
「わ、悪い!?」
「いや、中2病こじらせてやらかさないか超不安」
「いやいや、最初からだから。私中2病じゃないからw」
「美結の保護者として超不安」
「保護者じゃないでしょ」
「実質保護者」
実質の使い道が違うんだよなぁ・・・・・・。
「仕方ない、私も同行しよう」
「――――っていうのは表面上で、本当は同行したいだけと」
「うるさい!!」
うん、付き合いが長いということは私も分かるってことだから。
そういう訳で、まずは担任に。
「先生」
「ん?安斎さん、どうしたの?」
「何で警察の人が来るんですか?教育委員会なら分かるんですけど」
「な、先生もそう思ったよ」
いや、感想は聞いてない。
事実を聞きたい。
そのために私は罠を敷いた。
「先生、それはいつ聞いたんですか?」
「何を?」
「教育委員会と警察がいじめの捜査に来ること」
「今朝の教職員会議だ。教頭が慌ててたな。―――――って、おい、待て」
「・・・・・・何でしょう」
よし、見事にブラフにかかったな。
簡単すぎた。
「今、なんて言った?」
「教職員会議で教育委員会の人が来るって話を何時頃聞いたんですか?っていう質問です」
「あぁ、そうか。びっくりした」
私は廊下に出て考える。
教頭先生が慌てるということは相当大変だということ。
というか、いい感じにブラフにかかってくれたおかげで、すごいわかりやすくなった。
多分、今回のいじめの事件は中1か中3。
私達の学年には特に調べに来てもないし、誰も何も知らなそうな顔をしている。
そしておそらく中1というよりかは中3だと思う。
ある程度グループが固定されてその中でのハブりだとかでおそらく不登校になってしまった人がいるのだろう。
「う〜ん・・・・・・」
「美結?」
「うわ!?」
「あのさ、今後輩と先輩に聞いてきたんだけど」
「仕事早いね!?」
「ありがとう。で、後輩の方はいつもと何の変哲もないって」
「つまり、」
「そう、先輩の方はなんか先生の視線がいつもよりもきついし、空気がピリピリしてるし、何より、先生が廊下でいつも以上に徘徊してるって」
「おぉ、怖」
「どうするの?」
「私の知り合いの先輩に話を聞くしかないけど・・・・・・知ってるかな」
「空気はなんかね、全員が全員じゃないけど知ってる感じだね」
「すべてを理解した」
「本当?」
「多分。じゃぁ、まず先輩に聞きに行こう」
「そうだね。ちなみに美結に先輩がいるってのが驚き」
「あれ?馬鹿にされてる?」
「そんなことないって」
ということで、次の休み時間に行くことにした。
なにせ、もう授業始まるんで。
◆
授業が終わり、2時間目の授業まで15分ほどあるので、急いで上の階に行く。
すると、驚くほどに教員が目を光らせており、正直言うとこの階に滞在したくない。
だが、私は話を聞くために3年1組の教室へと急ぐ。
「えっと、先輩、今時間大丈夫ですか?」
「悪い。話をするなら昼休みにしてくれ。部活の予算案を書かなければいけない」
「あぁ、先輩、生徒会ですもんね。えっと、じゃぁ昼休みここに・・・・・・」
「いや・・・・・・ここはよそうか。場所が悪い。この雰囲気の中話すのは嫌だしな」
「そうですねw」
予鈴がなるのを確認すると、私たちは下の階へと移動する。
「無駄足ではなさそうだね。あの先輩に話を聞いて」
「そうだね、内容を聞くのは今日のお昼って言ってたけど、特に問題はないよね?」
「私じゃなくて美結が決めることでしょw」
「確かにね」
私は教室に急いだ。
この後、私たちの想像を超える事実が突き付けられるとも知らずに。
≪閑話(1) was Finishing, And To The Next Story...≫
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