The Sixth Day
朝、美結は目覚めると隣で寝てる友人を起こさないようにしてリビングへと向かった。
そして熱を測る。
40度4分。
昨日動きすぎた所為で熱が下がらず熱が続いていた。
時間は午前6時過ぎ。
美結は椅子に座るとスマホを取り出して昨日のその後のことについて横川に訊く。
返信が来るまでの間、美結は書類を書くことにした。
事件報告書的なやつだ。
微妙に震える手でボールペンを持つ。
「何してんの?」
「わ!?」
「報告書?」
「う、うん。起きたんだ。おはy・・・・・・ゴホッゴホッ・・・・・・」
「あらま、大丈夫?熱は何度ですか?」
「急に敬語・・・・・・教えません」
「じゃぁ、私が測るね?」
「・・・・・・それで最初に出てきたやつで体温を知る気でしょ?」
「へへへ、バレた?」
「へへへじゃねぇよ・・・・・・学校行け」
「何言ってるの?」
「え?」
「今日日曜」
「・・・・・・そっか」
「大丈夫?休んだほうが良いんじゃない?―――――あ〜・・・・・・寝ろ?」
知らぬ間に美結の傍らにあった体温計が消えていた。
「寝て?お願いだから寝て?」
「あ、横川さんから返信が・・・・・・あ、分かった分かった。了解です、っと」
「・・・・・・何があったの?」
「今から警察署に」
「せめて解熱剤飲んで、お願いだから飲んでから行って」
「分かってる」
美結はやれやれと薬を飲む。
本当は頼まれて飲むものでもないのだが。
約15分後。
友人と共に家を出る。
向かう先はもちろん警察署。
報告書を4枚ほど持ち、転びそうになったら友人に支えられながら家を出た。
もちろん、40度の熱は解熱剤によって下がったものの39度台。
さすがに足元がふらつくのが心許無い。
ということで友人も付いてきたのだ。
折角の休日だから良いと断ったのだが、美結と一緒に過ごしたいということだったので甘んじて受け入れた。
この前までは捜査の為に友人を遠ざけていたのだが今は近くに居てほしいと思う美結。
なんとも皮肉なことだ。
彼女らが警察署に着くと、横川が迎えてくれるなり心配そうな顔で寄って来た。
「大丈夫か?」
「・・・・・・美結は解熱剤のお陰で39度まで下がったよ」
「――――それ大丈夫じゃないよな」
「大丈――――ゴホッゴホッ・・・・・・」
「分かった。喋るな」
「美結、黙っててね?」
「・・・・・・(コクッ)」
「で、何?あ〜報告書ね?」
「・・・・・・(コクッ)」
「あぁ、ありがとな」
横川は美結から受け取った書類に目を通すと横川がある1枚の紙を持ってきた。
「これは?」
「あぁ、白紙だ」
「美結、白紙だって」
見れば分かるよ、と突っ込みたい衝動を抑えて横河に目を移す。
「そんな目をされても困るんだが・・・・・・」
「いや、その美結の目は早く内容を教えて、だって」
「おぉ、すごいなぁ」
「・・・・・・はいはい、ごめんて」
美結が友人を笑顔で見ていると察した友人が美結に謝る。
彼女は横川から紙を受け取ると美結に渡す。
「それは安斎なりの推理を書いてほしい」
「・・・・・・?」
「つまり・・・・・・事件当日の容疑者たちの動きの推理だ」
「なるほどね〜。美結、分かりやすく言うと美結が考えていたことを言語化すれば良いんだよ」
「得意な絵で漫画化してもいいぞ。俺が分かれば良い」
「・・・・・・馬鹿にしてるでしょ?」
「「いやいや、そんなことないって」」
「・・・・・・仲良しかよ・・・・・・」
「いや、会ったのは昨日が最初だよ?」
「あぁ。というか安斎のほうが付き合い長いだろ」
「・・・・・・そういうところだよ・・・・・・なんか私をいじめるコンビが出来上がったな・・・・・・」
「「いやいや、いじめてないから」」
「・・・・・・速く進めよう。私今そんな元気じゃないの」
「そういや美結熱あるんだった」
「思い出すようなことじゃないでしょ・・・・・・」
「俺も忘れてた」
「・・・・・・頼むからこの2人離れて・・・・・・」
2人のコンボに圧倒された美結は懇願するように言う。
だが2人はそれを許さない。
美結に言われても攻勢を一切弱めようとしない。
「いやいや、私は事件のことを聞かないと」
「そうだな。安斎は知ってるだろうが昨日知ったばかりのやつに何が分かるってやつだよな?」
「そう、まさにそれ」
「・・・・・・せめて私の居ないところでやって。私は漫画描くので忙しいの」
「あぁ、すまん。じゃぁ会議室へ行こうか」
「は〜い」
「・・・・・・あ、でもそっちのほうが不安かも」
という美結の声が2人に届くはずがなく、行ってしまった。
仕方なくというべきなのだろうか。
美結は目の前の紙に向かう。
が、何も思いつかない。
風邪のせいだ。
そして一瞬美結は意識が飛んだ。
無論、誰かにやられたのではない。
睡眠欲求によるものだ。
理由は言わずもがな。
そのまま美結は意識を保とうと試みるが、気が付いた頃には美結は2つの椅子を使って寝ていた。
時間は同じにして会議室。
横川は証拠品を並べていた。
「これが最初に手がかりとなったものだ」
「これは何?」
「スマホだ。見れば分かるだろ」
「確かにねw」
「天然か?」
「残念。私が天然なら美結はド天然になるよ」
「じゃぁ違うな」
「だよね」
とまぁ、こちらはこちらで楽しそうに話しながらやっていた。
その7割が美結の罵倒だが。
ちなみにこの会話の補足だが、美結は意外と天然である。
どうでもいい話なのでこれ以上の言及は控えさせていただくが。
◆
「・・・・・・て・・・・・・起きて・・・・・・・・・・・・美結、起きて!!」
「・・・・・・ふぇ?」
間抜けな声を出して美結は起き上がる。
まず視界に写ったのは心配そうな顔をしている友人。
そしてその後ろに立つ横川。
熱で意識がなくなったと2人は勘違いした。
横川に至っては携帯を構えている辺り、救急車でも呼ぶところだったのだろうか。
確かに、普通の人が倒れていたらそれを選ぶのが正解だ。
無論、救命措置などを取り救急車の到着を待つ。
しかし、今回は横川が電話をかけようとしところを友人は静止させた。
長年の経験より、美結はただ寝てるだけだと判断。
すごい判断力に横川は目を疑った。
しかも、しっかりと起こす方法もマスターしている。
これが長年の付き合いか、と思ったそこのあなた。
いや、横川もだ。
それは違う。
長年の付き合いなのではなく、美結の扱い方を習得しただけにすぎない。
大体同じなのだが、違う点が1つ。
友人は美結の生態を理解しているのだ。
恐ろしいのは、それを利用して美結をイジることだ。
まぁ、これ以上語るのも名誉毀損だろう。
美結に訴えられかねない。
「どしたの・・・・・・?」
「あれ?美結顔色良くなった?」
「確かにな。熱が引いたんじゃないか?」
「私的にも楽になったし、喉の痛みが消えた」
「――――――美結、まず、熱がある時は動かないようにね?」
「あ、はい」
「病気の時に動くと、風邪が悪化するのもそうだけど、秘密にしてたことがバレるよ?今回は私だったから良かったけど、これが親やクラスのうるさい人にバレたらどうするの?」
「返す言葉もございません」
「じゃぁ、美結は反省文のかわりにその漫画を私にも分かるように仕上げること」
「待て待て待て、ここ、俺の介入するとこじゃないと思うんだが、友人同士で反省文なんか書くの!?」
「「いやいや、悪いことをしたという自覚があるなら、言われなくても書くでしょ」」
「やべ、聞いた俺がバカだった」
「うんうん。ていうか、手紙とか書かなかったの?学生時代」
「俺は思ったこと口で伝えてたから。というか、んなこと女子しかやらないだろ」
「そう?」
「そうだ」
断言された2人は顔を見合わせると、互いに苦笑する。
そのやり取りがよく分からなかった横川はため息をつくと、美結に速く描けと目で催促する。
それに気が付いた美結は心底申し訳なくなり、ペンを持って漫画を書き始める。
その手は滑るように休みなく進む。
どれくらいの時間が立っただろうか。
A4のコピー用紙15枚ほどになった頃だろうか。
時間にして2時間。
表裏に書いたのを考えると単純計算で片面2分だ。
大した速さである。
頭の回転と画力をここまで持ち合わせた人が元来居ただろうか?
いや、いない。
「できました」
「すごいな。じゃぁ、昼飯でも奢ってやる。付いて来い」
「わ〜い」
「ありがとうございます〜」
美結が書いた漫画を読みながら横川はジャケットと財布を取ってくる。
そして時間と枚数の割に丁寧すぎて驚く。
「行こ〜」
「そうだな」
横川は仕方ない、とばかりにあるきだして本日の大仕事を終えたのだった。
≪The Sixth Day was Finishing, And To The Next Story...≫
読者の皆様。
いつもご愛読いただきありがとうございます。
作者の雪花涼麗です。
ここまでいかがだったでしょうか?
最初の出だしでは想定できない展開だったでしょう。
さて、更新頻度の話をさせていただきますが、次の本編の投稿は年明けとなりますが、ご了承ください。
これより、閑話を入れていきたいと思っております。
また、年末年始には特別編も入れたいと思っているので是非御覧ください。
あとX(旧Twitter)始めたのでフォローしてくれると嬉しいなー(小声)
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