第5話

 俺はその子と手をつなぎながら公園を歩いていた。すると、さっきまでしゃべり続けていたのに、すっかり大人しくなっていた。


「前からこうやって女の子と来てみたかったんだよね」

 

 俺は今まで女の子と公園に来たことはない気がする。なぜかと言うと、デートが面倒臭いからだ。

「じゃあ、よかったです。エドさんって大人ですね」

 

 若いっていいなと思った。初々しい。


「彼氏いる?」

「まさか。全然です」

「意外だな。絶対いると思ったのに」


 俺は白々しく言った。印象としては、恋人いない歴=年齢のタイプだった。こうやって相手を持ち上げておけば、誘いやすくなると思っていた。


「君、かわいいね。メガネしてない方がきれいなのに」

「いえ…そうですか。やだ。照れちゃう。不細工ですよ。顔に自信ないんです」

 笑いながら俯いていた。

 オタクっぽい感じの子だ。

「あそこにホテルがあるだろ?」

 公園を見下ろす位置に大きなホテルがあった。

 ちょっと高めのやつだ。

「はい」

「あそこで休まない?」

「え?」

「すごく夜景がきれいだと思うんだよね。もっと高い位置から見てみたくない?」

「はい…でも、私…」

「どうしたの?」

「変なんで。私」

「え?」

「きっと嫌になりますよ」

 その控えめさが奥ゆかしかった。

「そんなことない。君はかわいいよ」

 俺はハグをした。香水なんかはつけてない自然な感じでよかった。あまり男性経験がなさそうな割には、嫌がる感じがなかった。


 俺たちはその後、ホテルにチェックインした。


 一緒に夜景を見ながら、自然な流れでキスをし、服を脱いで、シャワーを浴びることにした。


「恥ずかしいんで。先に入ってもらえませんか」

 その子はもうメガネを外していた。期待値が高すぎたせいか、思ったほどかわいくはなかった。

「うん。わかった」

 俺は先にシャワーを浴びることにした。スマホと財布が気になったけど、警戒していると思われたくなかったから、部屋に置きっぱなしだった。


 時間はそろそろ11時だった。俺の人生も後一時間か。

 今日はコンドームを持っていなかったけど、もう最後だから、ワンチャン妊娠したらそれでもいいやと思った。


 女性とそういうことをするのは、かなり久しぶりだったから、俺もちょっと緊張していた。




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