第2話
俺は軽く昼食を食べた後、出かけることにした。行き先は、前から大好きだった公園だ。
明るいうちに行くことにした。
途中の道で出くわす、すべてが新鮮に見えた。
近所にいろいろな種類の花を植えている家があるのだけど、そこでは鉢一つ一つが丁寧に手入れされている。今まで考えたこともなかったが、そうした植物を育てるのは、実に手間がかかるし、成長するまでに数カ月単位の時間が必要だ。種を植えて芽が出て、順調に伸びて行く姿を見ているのは無常の喜びだろうと思う。それに今日気が付いた。ただ、きれいだから植えているわけではないのだろう。
そこに長く立ち止まっていられないから、俺は不自然でないくらいに眺めて立ち去った。
公園までの道には、新しく建った家と空き地とが交互にある。どちらも色々な歴史を持っているはずだ。
しかし、空き地にはもう何もない。歴史上の人物でもなかったら、普通の人の人生はゴミなのかもしれない。見ず知らずの人の遺品を見たら、しんみりはするが、そうした物を取っておくのは難しい。
俺なき後、自宅と持ち物はどうなるのかとぼんやりと考えた。
その後、俺は公園に着いてベンチに座った。喉が渇いていたわけではないが、途中のコンビニで買ったドリンクを飲んだ。それほどおいしくなかった。
一息ついて周囲のベンチを見ると一人で来ている人ばかりだった。中年の男性と高齢者。みんな、何をするでもなし、ぼんやり座っている。
年をとると、金もなく、行く先もなくなるのかもしれない。もしかしたら、俺みたいに今日が最後だと思って座っているのかもしれない。明るい日差しが、葉の影から差し込んできて、俺の腕の上にチラチラと揺れていた。当たり前の景色が美しい。
これから、どうしようかと考える。やりたいと思ってできていないことはたくさんあるのに、くだらないことしか思いつかない。美味いものを食いに行くか、それとも風俗でも行くか。教会に行くのもいいかもしれない。
祈りながら死んでいけたら、恐怖はないに違いない。
最後だから、以前マッチングアプリで出会った大学生の子に連絡をしてみた。大して可愛くもないけど、喋りやすい子で人間的には好きだった。最後だから何か欲しい物を買ってやろうと思った。この際だから高い物でも構わない。
しかし、LINEを送っても、いつまでも既読にならなかった。ブロックされているのかもしれないが、よくわからない。
さよならを言う相手もいない。それが俺の人生だった。
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