色濃いのか、そうか。

エリー.ファー

色濃いのか、そうか。

 仮初の自由には、僕たちの思い出が詰まっていた。

 データだけではない、語れない。

 何かがある。

 もっともらしい言葉を連ねることで、個性的であることを維持しようとしているが、そもそも目指す先にある個性が、無個性な人間が想像する個性の範囲内であるので、無意味そのものである。

 いつか、何者かになるだろうと思っていた。

 しかし。

 なれなかった。

 その思考の沼に浸かったまま死を迎える人々のために。

 老いた人々のために。

 時間を浪費する人々のために。

 敬礼。

 さらば、愛しき日々よ。

 さらば、流れゆく日々よ。

 さらば、薄暗い日々よ。

 この色濃さの中に私を見つけてくれた、社会に大きな感謝を。

 そして。

 利き手の中指で魅せる死への誘いを。

 

「人生には必ず笑いが必要であると思っているのですが、お笑い芸人という職業は見下される傾向があると思います。しかし、若干見下されていることによって生み出されるハードルの低さが笑いやすい雰囲気を作り出していることも事実なのです。権威は、笑いを邪魔するものでしょうか。それとも、権威が笑いをより面白くするのでしょうか。教えて下さい。よろしくお願いいたします」

「時と場合によります」


「性犯罪について、どのようにお考えですか」

「許すべきではないですね。ただし、適切な治療が被害者にも加害者にも必要であると言っておきます」


「公式とは、どのような意味なのでしょうか」

「公式以外を作って冷遇するという意味です」


「恋愛をしなくても生きていけると思いますか」

「はい。ただし、寂しいとは思いますよ」


「熱い紅茶を使ったダイナマイトアタックは、本番あり、ですか」

「本番は、どんな状況でもなしです」


「緊張してますねっ。今、あなたはっ、緊張をっ、してますねっ」

「はいっ、緊張っ、緊張っ、してますっ。緊張っ、最高っ、最高っ、緊張っ、完璧緊張、大丈夫人生っ」


「タンクトップで僕を活かして下さい」

「いいですよ。ただし、少しだけ落ち着いて下さいね」


「世界で一番下らない。でも、最高だ。そうだろう」

「えぇ、全くですよ。ふふふ」


「笑えない毎日から逃れるためのタイミング。君はどうする」

「ずれても良いじゃん、タイミング。いえーいっ」


「スタジオの青いカーテンで肉を包んで焼売にします」

「やってみろ、この野郎。いいから、やってみろって言ってんだよ、この野郎。バカが、死ねっ、ボケ」


「笑えなきゃ意味がないんだよ。エンターテイメントじゃなきゃ意味がないんだよ。アートじゃなきゃ意味がないんだよ。価値がなきゃ意味がないんだよ。分かるだろ」

「全部だよ。全部だって話だって、そうだろ。大丈夫だ、全部抱えて、一流になってやるよ。そうだろ。え、違うのかよ。え、やっぱり合ってるのかよ。いやいや、どっちだよ。マジで、なにこれ。え、いいやつなの、これ、大丈夫なやつなのかな。凄く怖いんだけど。ねぇ、どうすりゃいいわけ。ねぇ、どうすりゃいいわけよ」


「どら焼きバッタモンダンス」

「よし、やるかダンス。もう両手を両脚を使って」


「釦って漢字、結構好きなんだよね」

「あっ、そっ」


「全部、奪って下さい」

「もう、全部、奪っちゃったよ」

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