第2話 「家出」

ラナの不気味な高笑いが響くと、ストレはベッドから飛び起きた。汗が手や服にべったりと付着し、さっきの不吉な夢が忽然と蘇り出す。



ストレ「はぁっ…はぁ。はぁ…。」


ひたすら震える自分の手を固く握りしめながら苦悶する。



執事「(トンットンッ。)ストレ様。起きていますか?」



ストレ「!!」


 〃 「…あぁ。」



執事「支度が終わりましたら、朝ごはんの準備ができているので、ダイニングルームにお越し下さい。」



ストレ「……分かった。」



執事「はい、お待ちしております。」








ーリビングルームにて


リビングルーム中には、豆を挽く音が響き渡り、香ばしい香りが広がっている。執事は熟練した手つきでお湯を注ぎ、わずか数十分でコーヒーを作り上げた。執事がコーヒーを淹れ終わると、僕の視線に気がつき、にっこりと微笑みながら声を掛けてきた。




執事「ストレ様お待ちしておりました。」



ストレ「執事おはよう。ところでお父様とお母様は?」



執事「ただいま用事で二人共、外にでております。」



ストレはためらいながら、執事に尋ねる。


ストレ「……。お母様は怒っていた?」



執事「いいえ。あれから気持ちが落ち着いたようで気分転換に外出されましたよ。」



ストレ「そう。ありがとう執事。」



執事「いいえ。これも私の仕事の一部ですから。」



執事の言葉を聞いて、ストレは食事を始めた。



朝食を済ませた後は、勉強や鍛錬を行った。

時計を見ると、時間があっという間に進んでいて、今日はいつもより早く寝る時間がやってきたように思えた。








ー次の日(祭日)


家の中からでも人々の賑わいが感じられる。そう。今日は神様の誕生を祝う祭日の日だ。窓から人々の様子を観察していると、お母様が後ろから声を掛けてきた。



ラナ「ストレっ?この間はごめんなさい。お母さん混乱してて口調が強くなってしまったわ。…あっそうそう、昨日はストレにぴったりな服を買ったのよ。だって今日は祭日だから。」




ストレ「……うん。」








ー祭日の挨拶(噴水近くの広場)


市民たちは祭日の開催を待ちわび、街は彩りで溢れている。僕自身祭日にはあまり興味がなく、母に連れられて、ここに来たと言っても過言ではないと言える。

人々の拍手が響き渡り、国王や騎士団達が次々と姿を現す。




国王「おはようございます。この素晴らしい天候の中で祭日を迎えることができ、本当に嬉しいです。皆さん共に神の誕生を祝いましょう!」



(第一騎士団の)団長は周囲の人々を見渡す。



ストレ「(目があったような気がしたけど…気のせいだよな。)」




ストレ「…お母様。少しお花を摘みに行って参ります。」



ラナ「あら。早めにね。」









ー抜け小路


人通りが少ない道を走る人影


ストレ「はぁ…はぁ。」



ストレ「もう、うんざりだ。こんな家出てってやる。」



ストレ「今日は特別に外出許可が降りたんだ。こんなチャンス滅多にないぞ。

しかも、祭日は人が多いからな、そんな簡単には見つからないはず。けど、どこに向かえばいいんだ?」



ストレ「ひとまず、人気の無いところに走ろう。」








ー夕暮れ(森の中)

夕暮れが近づき、正午の鐘が響き始める。



ストレ「やばい。適当に走っていたから森の中に入ってしまった…。」



ストレ「早く抜け出さないと…。」







ー数十分後



ストレ「なんで…?(来た道を戻っているのに街の方に着かない。)」



ストレ「(しかも足がこれまでに無いくらい重い…息を吸うたびに冷たい空気が肺の中に。)」



ストレ「ダメだ。もうあるけ…な…い。」



バタッ



誰かの声がきこえ、

霞んだ視界が段々元に戻る。


老婆「大丈夫かい?あんた。」



ストレ「っ…。(声が出ない!?)」



老婆「??」



ストレ「ぐぅ〜〜。(お腹の音)」



老婆「ハッハ。お腹は空いているんだね。」


老婆は笑顔を浮かべながら言葉を続けた。


老婆「ちょっと行ったらわしの家があるからそこに着くまで少し我慢してね。」



そう言うと僕を背中に乗せ、軽やかに歩き始めた。木々をかき分けながらずんずん進んでいく。

すると突然彼女は歩くのを止めた。


顔を覗き込みながら、何かが起こったのかと不安になる。




老婆「ほら。着いたよ。」




老婆が見つめるその先には、一軒の家が立っていた。

木漏れ日が照らすその家は、彼女の住まいとは思えないほど美しい外観をしていた。

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