姉さん①

 先ほどから姉さんの挙動がおかしい。俺のことをじろじろと見ては俯いてを繰り返している。

 舞さんは本当に帰ってしまったらしい。この家には俺と姉さん以外の気配を感じない。


 つまり状況が悪いということだ。最近の姉さんは俺が一緒に育ってきた中で遭遇したことが無いほど行動に規則性がない。

 普段は温厚だった姉さんが、今は情緒不安定になってしまっている。


 たぶん俺にはどうすることも出来ない。出来る人を挙げるとするならば母さんだけだ。昔から俺も姉さんも母さんにだけは逆らうことが無かった。


 そもそも逆らう意味がなかったし、仮に逆らったとしても論破されて到底敵わないのは既に分かっている。間違いなく家で一番強い人は父さんでも俺達でもなく母さんだ。


「舞とは何を話していたの?」


「別に何もないよ。姉さんには関係ない」


 きっと旅行の件については話さない方がいいだろう。舞さんのためにも、俺のためにも。


「隠し事とかしてないよね?」


「うん、姉さんにするわけないじゃん」


「そ、なら別にいいけど。星音にされたことは覚えてるの?」


「正直、何も覚えてないよ。気づいたときには姉さんがいたから」


 ふと俺はさっきのことについて想いを馳せる。もし星音さんが言っていることが事実で、責任を負わないといけないのであれば俺はしっかりと星音さんに尽くすともりだ。


 レイプまがいのことをされたとはいえ、もし妊娠させてしまっていたのなら俺の責任だ。


「はぁ、奏斗?もしかして責任とか考えてる?」


「え…」


「あいつの責任なんて取らなくていいし、奏斗はまだ純潔だって私は信じてる」


「う、うん」


 なんだが姉さんが怖く感じた。良からぬことを考えているみたいで不気味な笑みを浮かべている。


「だから、私と…シよ?」


 瞬間姉さんは俺の唇を突然奪ってきた。あまりに急なことで、俺は反抗することが出来ずがっちりと身体をホールドされてしまう。


「はぁ、はぁ、はぁ」


 姉さんのピンク色の吐息が俺の息子を刺激する。

 姉さんの舌が俺の口内に侵入してきて這いまわる。


「ね、姉さんっ!」


 まるで姉さんは獲物を狙う肉食獣のような鋭い眼光で、ただ一心に俺の唇を奪い続ける。


 姉と弟という関係でこんな歪なことはあってはならない。それは分かっているとうのに身体がいうことを聞かない。

 余りに気持ちよさに俺の身体からはどんどん力が抜けていく。そして姉さん委されるがままになっていると…


「ただいまー」


 扉の向こうから聞き覚えのある声が聞こえてきた。少し声が小さいから一階から話しているようだが今帰ってくる可能性があるのは…


「お母さん?今日は遅くなるって言ってたのに」


 姉さんが母さんに声に驚きを感じてことでホールドが弱まり、俺は無事脱出することが出来た。


「あ、奏斗…」


「姉さん少し落ち着くんだ。きっと、気が動転してるんだよ。母さんも帰ってきたし一回話そう?」


「う、うん…」


 姉さんは案外簡単に納得してくれた。何も気にせず続けられると思ったのだが杞憂だった。

 流石の姉さんでも母さんの前には屈したか。まぁ、俺ももし同じ状況だったらすぐさま止めていただろうが。


「あれ、靴がある?今は学校なはずだけどなんで?」


 そりゃそうだ。普段なら俺も姉さんも学校にいる時間。玄関に革靴がある時点で疑問に思われるのは避けられない。


「もしかして、二人とも体調を崩しているのかしら」


 それにしても母さん、声が大きすぎやしないか。二階まではっきりと聞こえるのはいささか声量が大きすぎないかと突っ込みたくなる。


「奏斗、この状況どうする?」


 そうだった。今は俺も姉さんも学校をさぼっているのと同然。一応学校側は知っているから問題ないのだろうが事情を母さんに話さなくてはならない。


 先ほどの姉さんの奇襲で姉さんは服がはだけてしまっており、外から見たら明らかに事後の風景だ。

 姉弟でそんな行為に営んでいたと勘違いされてはまずい。


 俺は慌てて姉さんに部屋に戻るよう言った。






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