虚偽
いや、俺は今から行くところがあるから残念ながら星音さんに着いていくことはできないな。
昨日のこともあるし、色々とまだ整理がついていないのもある。姉さんたちの関係がどうなってしまったのか。
少なくとも良好な関係には進んでいないだろうが、俺はまだこれからも姉さんたちが仲良くしているところを見たい。
「すみません、俺今から行くところがあるのでまた別の機会にお願いします。そうだ姉さんと舞さんも誘って四人で行きましょうよ」
我ながら名案だ。
俺も一緒に混ざってどこかへ行ってみたかったし、仲直りのいい機会になるんじゃないか。
「もうそれは出来ないかな。もう私たちが三人で集まることなんてないよ」
「え、なぜですか」
「昨日の件は忘れてないと思うけど、あれから私のラインから二人の名前は消えてたんだ。連絡しようもないし、今更仲直りなんてできない。私が出来ることは奏斗くんを連れてどこかに逃げることだけなんだ」
ラインを消すなんて所業、姉さんがしたというのか。
あの優しかった姉さんの姿はもうなくなってしまっているのか。
俺ももう高校生、俺も姉さんも小学生じゃない。
自分の意志で判断して行動する。昔みたいにお互いがお互いに甘える状態は気づかぬ間に消え去っていたんだな。
そして聞き捨てならない言葉を聞いた。
「俺を連れて逃げるってのは一体?」
「もうじき鈴は感づいて学校を早退してくる。そうなればもう終わりなんだ。お願いだから一回私のいうことを聞いてくれない、奏斗くん?」
星音さんはすごく必死そうだ。
まるで何かにおびえているように。
だけど胸の奥に微かに灯る強い意志の炎が彼女を動かしている。
俺は試しに星音さんに着いて行ってみた。
後から大変な目に合わされることなんて知らずに…。
「ここが私の家、一週間前から一人暮らし始めたばっかなんだ」
「ずいぶん最近ですね」
にしては家具が整いすぎている気もするが、別にそこまで深く考えることでもないか。
「ここに私以外の人が来たのは奏斗くんが初めてだよ。すごくドキドキする」
「広いですね」
姉さんの部屋に何度もお邪魔したことがあるからか、ラブコメの主人公みたいに狼狽えることはない。
「うん、このために準備した部屋なんだ」
「このため?」
「奏斗くんにはまだ教えない。後々わかるしね」
本当に広いな。マンションなのに一軒家である俺んちと同じくらい、果たしてはそれ以上かもしれないほど大きい。
「じゃあ、まず部屋紹介するよ」
「はぁ?」
そもそも俺はなぜここに連れてこられたのだろうと不思議に思いながら、ゆっくりと星音さんのルームツアーに着いていく。
「これが最後の部屋だよ」
「こんなに部屋あるのにまだあるんですね」
「うん、ここが一番大事な部屋だよ」
星音さんが先導して部屋の扉に手をかけると、がちゃりと音を立てて開かれた。
部屋に入って真っ先に視界に入ったのは…
「寝室ですか」
一人で寝るに大きすぎるキングサイズのベッドだった。
「そ、今から私と奏斗くんが交わる
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