争いの始まり

 流石に姉さんが俺のことを勝手に休みに出来るはずがない。

 学校を欠席するには親からの連絡が必要なはずなのだ。


「お母さんに奏斗が今病気してるって言ったらすぐに休ませてくれたよ。よかったね奏斗」


 あの親ばか母さんめ。優しい所は大好きなんだけど、少し親ばかなところが玉に瑕。


「良くないよ。学校行きたかったのに」


「なんで?学校って面倒くさいものじゃないの?」


「俺は好きなんだ。友達と会えるし、勉強も好きだしさ」


「へー、まぁもう変えられないから。今日は家から出ないでね。昼食はもう準備してあるからそれを食べて。何か買いに行ったりしたらダメだからね。外にも絶対出ちゃだめだよ」


 もう学校に連絡が行ってしまったのなら仕方がない。

 だが一週間は長すぎるな。後で母さんに連絡してもう一度連絡しなおしてもらおう。


 明日からはまた普通に登校したい。


「じゃあ私はもう行くから約束ちゃんと守ってね」


 姉さんは顔は笑ってるが瞳の奥は笑っていないように見えた。

 破ったら何か危ないことに会わされる気がする。

 警戒しておこう。


「うん」


「絶対に家から出たらだめだからね」


「わかった」


 姉さんは俺の返事に満足したのか、笑みを浮かべて部屋から出て行った。

 そしてすぐに玄関から出ていく音が聞こえてきた。


 今からどうしようか。

 勉強することは確定だが、ずっとしておくわけにもいかない。


「後から考えよう」


 俺はそう言うと、とりあえず朝食を食べるために一階に向かうのだった。







 姉さんが学校へと行って二時間ほどが経った。

 俺はその間、朝食をとり朝にニュースをぼーっと眺めて時間が経つのを待った。


「暇だな」


 学校って俺が思っているよりも重要な存在なのかもしれない。


 普段はだるい、きついなんて言いながらも皆それぞれ学校生活を楽しんでいることは間違いない。


 週に二日の休みがちょうどいい。多すぎるのは多すぎるのでただ時間を持て余すだけだ。


 やっぱり家にいるのはつまらないな…


 …姉さんにバレなければ外に出ても大丈夫だよな。姉さんは今、学校にいるのだからちょっとした証拠隠滅をしたらばれないはずだ。


 そう考えた俺の行動はとても速かった。


 さっと着替えれる軽装姿になり財布とスマホと小さ目のリュックを持って玄関に向かうと、家を出た。


 まだまだ昼前ということもあり、太陽光が弱く外出には適した気温だ。


「ゲーセンにでもいくか」


 街角の所にゲームセンターがある。

 俺が最近よく通っているゲーセンであり、レトロな機種がたくさん置いてある今時珍しいタイプのやつ。


 早速歩き出そうとしたところで…


「奏斗くん!」


 聞き覚えのある声音を持つ人物が俺に話しかけてきた。


「星音さん⁈なんでここに」


 なんと俺の目の前に昨日姉さんに無理やり返された星音さんが立っていた。


 今は姉さんと同じ学校にいるはず。なんでこんな時間に、こんなところにいるんだ。


「不思議そうな顔してるね。私、今日学校休んだんだ。体調不良ってことにしてね」


「はぁ」


「まあ実際は奏斗くんに会うために休んだんだけど。単純な鈴のことだから奏斗くんを休ませてるんじゃないかって思ったけど、ドンピシャだね」


 そう言って笑いながら星音さんが徐々に距離を縮めてくる。目が笑ってない。

 なにか変なことを考えてるのがまるわかりだ。


「なにがしたいんですか?」


「とりあえずここは危ないからさ。私についてきてよ、いい所に連れて行ってあげるから」

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