とある彼女のよんコマ

ジャンル:ラブコメ

キャッチコピー:深夜の散歩か……。

紹介文:

大学生のフユは、冬のある日、大学のサークルの飲み会の帰りに恋人のハルに罵られて―― まったり恋人同士のとある日常の一コマ。

お題:「深夜の散歩」


::::::::::::::::::::::;:::::::::::::::


大学生のフユには彼女のハルがいる。


大学に入学してすぐに、もみくちゃにされたサークル勧誘の中から、唯一穏やかに声をかけてきたのがハルだった。

一つ年上のサークルの先輩で、フユはその後輩にあたる。


四年生と修士二年生と博士二年生がいなくなるこの時期は、追い出しコンパなる飲み会が数回開催される。

単純に飲みたい需要と騒ぎたい需要が合わさって、開催されるだけなのだが、平日のそれも水曜日に深夜まで三次会と称して付き合わされるのはいかがなものかと思う。


明日は普通に一コマ目から講義がある。

そのうえ、必修で日頃の出席率が成績の半分を占める教授の授業だ。

後期の授業の最後の日に、出席点を落とすのは問題だ。これまでパーフェクトを貫いてきたのならなおさらに。


けれど、サークルの飲み会など魔窟である。

酒好きが集まって、好きなことを気兼ねなく語り合う時間――同士たちにとっては至福だろうが、そこまで踏み込めないと苦行だ。無秩序で混沌としている。


そんな中に可愛いハルを放り込むのは気が引けて、フユは結局三次会まで付き合う破目になるのだが。

たとえ、混沌の中心にいるのがハルだったとしても。


恋は盲目……いや、わかっている。

最初から、彼女がこのサークルが好きで活動していることは。


だというのに、なぜか深夜に解散した飲み会からの帰り道、散歩と称してふらふらと家路につかずに酔いを醒ましがてら歩いているフユは、ハルにこんこんと罵られているのだ。


なぜだ。

理不尽なのでは?


酒は嗜む程度にしか飲んでいないのに、しっかりがっつり酔っているハルになぜ叱られるのか。

彼女の方が明らかにご機嫌であるはずなのに、なぜか彼女の方が不満そうではある。


「どうしてフユは、そうなの? てっきり出会って一年以内に行くと思ってたのになあ。一目見たときにぴんと来たのになあ。ねえ、なんで?」

「酔ってるよね?」

「酔ってないよ、真剣だよ! ねえ、どうして!? 異世界への扉はすぐそこでしょう――!!!???」


うん、酔ってるね。

フユはふらふら歩くハルの腕を優しく掴んで引き寄せるのだった。


フユが入っているサークルは『異世界探求同好会』という――。

昨今の異世界召喚ならびに異世界転生ブームに対応するため、日夜、異世界への扉を探し異世界に召喚(転生)された際にどんな世界でも対処できるためにどうすればいいかを追求する同好会である。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る