とある彼女のさんコマ
ジャンル:ラブコメ
キャッチコピー:お題よ、最高だっ!!
紹介文:
大学生のフユは、冬のある日、恋人のハルに帰宅した途端に、玄関先で「ぐちゃぐちゃにして」と縋られて―― まったり恋人同士のとある日常の一コマ。
お題:「ぐちゃぐちゃ」
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3月だというのに日中に5月の最高気温を叩きだしたからだろうか。
大学の6コマ目が終わって、同棲している彼女ハルの家に帰ってきてみれば、出迎えた彼女はすでに出来上がっていた。
上気した頬、潤んだ瞳はどこまでもけだるげで、ぷるんとした桃色の唇はいますぐ食べてしまいたいほどに魅力的だ。
「ねぇフユ……ぐちゃぐちゃにして?」
そのうえ誘い文句まで添えられれば、フルコース確定だろう。
大学のノートが入ったさして重くもないデイバックが思わず肩からずり落ちた。
その衝撃ではっとする。
5月の気温にあてられたからといって、そこまで熱に浮かされるか?
冷静に理性が問いかけてくる。
真夏ならともかく。初夏の陽気であてられる?
あるのか、どうか。
いや、待て待て。
落ち着け?
深く深呼吸して、彼女からふんわり漂うブランデーのような香りに酩酊感を覚える。
くらりとする頭を振って、理性を総動員する。
ここは乗ったふりをして反応を見てみればいいんじゃないか。
そうだ、いい考えだろう。
「待ってハル。先に風呂入っていい?」
「なんで、こんなに待ってたのに。手を洗うだけでいいよ、早く来て?」
え、これってどっちだ?
なんで誘い文句ってなんでもかんでも卑猥に聞こえるんだろう。
考えすぎか?
ものすごくわかりやすいのに、難解すぎる。
しかも間違えれば、きっとものすごく冷めた目で見られるのだ。
その時の虚しさといったら……っ!
同棲しているからといって毎日、体の関係があるかといえばいろんな理由で断られる。それもそれとなく仕掛けて、さりげなく逃げられるのだ。
疲れてるとか、明日が早いとか笑ってかわされると、引き下がるしかない。
別に一緒にいるだけで楽しいし癒されるけれど、まあ男なんてそれもありきで考えるわけで。
その時のことを思い出しながら、フユはハルの小柄だけれど、ふんわりとした体を抱きしめた。
「もう手を洗ってからだってば――」
にこやかに笑ってハルは洗面台に続く扉を示した。
そして残酷な言葉を続けるのだ。
「もう材料はあわせてあるから、あとはぐちゃぐちゃにするだけだからね!」
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