第9話 無情 ~美人オペレーターと、“条約違反”~

※この作品には、過激な表現が含まれています。

 ご注意ください。





『護衛の“歩行兵器”が、少ない車列から、叩くぞ。』



 “首輪付きの”若者は、僚機に、新たな攻撃目標の指示を出す。


 新兵でも、刈れる目標だろう。


「非武装の車両も、多そうだが、良いのか?」


 コードネーム:“ディノ”が、輸送トラックへの襲撃について、確認する。

 この女パイロットは、用心深い性格なのか?

 良い兵士に、なりそうだ。


 相手の状態を確認できるということは、こいつらの機体も、探査タイプなのか。


 よく見ると、2人とも、探査用のレーダーを左肩に、しょってるわ。

 薄暗い戦場で、二人の機体と、初めて遭遇したから、よくわからなかった。


「関係ないでしょ? 敵は叩けるときに、叩かなきゃ~。」

 オレは、行くよ。」


 一機の“機動兵器”が、“ブースト”を発動し、加速する。

 コードネーム:“ピーチ・ボーイ”だ。


 “少年”は、意外と冷たいなぁ。仕事と割り切り、めているのか。




 3機の“機動兵器”は、車列を見下ろせる高台に、集結した。


「よし、目標は、あの病院と大学だ。

 すでに、複数台の車両が、停車しているのが見えるな。」


 おまけに、各建屋の屋上や、校庭には、輸送ヘリが駐機してある。

 回転翼を動かして、いつでも、飛び立てそうだ。


 護衛の盾持ち、“歩行兵器”の数は、少ない。

 だが、我々に気づけば、工場地帯の連中が、こっちに来る。

 

「病院や、学校を、攻撃するのですか?」

 

 女パイロットは、常識人だなぁ。

 この新兵は、授業中、まじめに勉強していたようだ。

 たしかに、国際条約では、攻撃しちゃダメな目標って、あるよね。


 でもぉ、実際の戦場にはぁ、ルールなんてぇ、“ない”のだぁ!!


「民間施設に逃げ込んだ、敵勢力を排除し、人質となった民間人を救出するのだ。

 これは、“人質解放作戦”である。」


 “首輪付き”の若者は、言い切った。

 何事も、強気で、言い切ることが、大切なのだ。


「そんな……。無茶苦茶な……。」

 女パイロットは、絶句している。


「さっきまで、ルールを守ることの大切さを、語ってたくせに。

 相変あいかわらず、オジサンは、胡散臭いや。」


 あら、あなたも、反対なんですね?

 “少年”も、意外とノリが悪いなぁ。


 この、二人からの、好感度が、大幅に下がった気がする。

 構うものか、どうせ、仕事だけの、付き合いよッ。


「試験官に、一度、確認をッ!」


「のんびり上の許可をもらう、暇はない。

 それに、何も言って、きてない、だろ?」


「こんなことが、許されるのですかッ!」


「俺たちは、言われたハズだぞ? 旧市街の、すべてが“敵”だと。」


 無線を、モニターしているハズの試験官は、何も言ってこない。

 つまり、“そういう”ことだ。


 本当に、無線の不調かも、しれんが。



 くくくっ……。

 俺の部隊でも、“通過儀礼”だった。


 俺は、情け容赦なく“敵”を攻撃することで、反乱軍への忠誠心を、試験官に示せる。

 “少年兵”達は、任務に忠実に従うかどうかを、試験官に、示せる。


 “試験”ってのは、こうでなくちゃあ、なぁ……。



 おわかり、いただけただろうか……。


 “首輪付き”の若者は、『外道』だった。


 後ろからの不運な、“流れ弾”で死ぬタイプだ。



「1分後に、ミサイル斉射だ。準備しろ。」


「……くッ。」


 女パイロットが、歯で、唇を噛む音が、聞こえる。

 

 迷っているのか?


 まあ、俺は、お前たちの、上官でも、ないしな。

 俺の命令を、聞く義務は、ない。

 

 こいつら、撃たんかも、しれん。

 それどころか、俺を、撃ってくるかな?

 

 それも良い。

 “正当防衛”の口実になって、いい。


 所詮は、反乱軍のパイロット共。

 いずれは、敵となる連中だ。


 熟練パイロットとして、成長する前に、“始末”しなければならない。


「……撃て。」

 若者は、鋭く命じながら、マルチロックのミサイルを打つ。


 十数発のミサイルが、放物線を描いて、地上の目標に発射される。



 ドドドドドドドドドッ!!


 何ィ!

 空中で、全て、撃墜されただとッ!!


 !!

 何かが、来る!


「散開しろォ!」


 俺は、超“ブースト”を発動して、長距離を高速移動した。

 灰色の機体を、急速反転して、襲撃者に、相対する。



「ヤア、面白ソウナ、事ヲ、シテイルネ。 僕モ、混ゼテ、もらッテ、イイカナ?」

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