第12話 戦闘魔人の出現 -2- 反抗の代償
アッキが企てたレジスタンスの代償は、取り返しがつかないとても大きななものになってしまった。
最強ロボットの出現により、アッキが捕まってしまった翌朝。
誰もじっとしていられなかったようで、八時には次々とアジトに集まってきた。
アッキが連行されてしまったショックは相当大きく、集まっては来たものの、全員口数が少なかった。
カコは寝込んでしまい、遂にその日は来なかった。
タケル団長が口を開く。
「みんな、昨日はお疲れさんだったな。アッキは残念だけど、あれだけのことを考えて実行したんだ。そうなることはきっと覚悟してただろう」
「予想してたのかな」
「それでもやったのか」
「アッキ……」
「アッキが辞めたいって申し出た時、あいつは自分なりのレジスタンスを示すと言った。十三歳の少年にしては、見事過ぎるほどのレジスタンスだった。俺はあいつを本当に誇りに思うよ」
団長の言葉に皆も大きくうなずく。
「でもアッキ何年くらっちゃいますかね」
「うーん、そうだな。あれだけの大騒ぎだからテレビで何かやってないか?」
団長の言葉にヒロがリモコンのスイッチを押した。
朝のワイドショーが映り、ロボットがアッキの喉元を掴むシーンの映像が流れていた。
アッキの顔にはモザイク処理がかかっている。
「いやーっ」
女子たちから一斉に悲鳴があがる。
スマホで撮影したらしい何本かの動画を繰り返し流している。皆がテレビ画面を食い入るようにのぞき込んだ。
キャスターの女性アナウンサーが手元の原稿を読み上げた。
「この昨日突如現れたロボットですが、先ほど政府から正式に発表がありました。
えー、禁句法違反者の、捜索専用高性能ロボットで、名前をスーパー・ソルジャー・マシンというそうです」
「スーパー・ソルジャー・マシン?いやーまた国が考えそうなダっさい名前ですねー、クックックックックー」
コメンテーターの金髪の元お笑い芸人が突っ込む。
「これロボットの横に映ってるの、ドクター・ワカマツさんでしょ?」
メガネの社会学者が身を乗り出す。
「はい、ロボットの開発者はドクター・ワカマツ氏だと、政府が正式発表しています」
女性アナウンサーが手元の資料に目をやった。
「ワカマツさんの作品なら今度のは当たりかね?はずれかね?あの人なんだこれってもんもたまに作るよね。ネコが怖がって全く近づかなかった自動エサやり器とか。クックックックックー」
「宇宙ステーションの通信デバイスも作ってますからね」
「そりゃまたすごい落差だねー、クックックックックー」
コメンテーター二人が顔を見合わせた。
「そしてこの画面に映っている少年ですが、禁句法違反の現行犯で身柄を拘束され、二年間の横須賀プリズン送致となった模様です。中学二年生との情報ですので、画像の方は加工させていただきました」
「えーっ!!」
「二年も!!」
女性アナウンサーの言葉に全員が声をあげた。ワイドショーの会話が続く。
「まだ中学生の子供に二年の収監とはねー」
「いやー厳しい判断ですねえ」
「はい、先ほども説明した通り、ライブイベントを無許可で決行し、千人を越える群衆を動員した点が問題視されたようです」
「二年も……」
「長いよー」
「かわいそう……」
「アッキ……」
チャンネルを変えてみたがどの局も同じような内容で、アッキとロボットの映像を延々と流していた。
新宿に突如現れた人型ロボット、スーパー・ソルジャー・マシン。
この日を境に多数の若者たちが次々とプリズンへ送られた。
マシンは昼夜を問わず、渋谷、新宿、池袋など若者が多く集まるエリアを中心に、違反者の探索と捕獲を続けた。
この結果、収監者の急激な増加に既設のプリズン収容力では追いつかず、新規のプリズン施設を全国の自衛隊敷地内などにも増設していった。
それでも首都圏の収監者数は飽和し、既にその一部を地方のプリズンへ移送し始めていた。
開発者のドクター・ワカマツは影の三悪に正式招聘され、新たに設置された国家特殊兵器開発室室長として、違反者の大量確保に特化した究極のロボット開発に当たったようだ。
マシンの性能に関しては都庁出現時にワカマツ自身が語った内容で間違いなさそうだが、まだまだ未知の部分があり、政府も国家機密として詳細を明らかにしていない。
マシンのエネルギー源についても何ら発表されておらず、様々な推測が飛び交っている。
原子力とも、高次元電磁パルスとも、はたまた未知なる宇宙エネルギーとも言われているが、ワカマツ自身も固く口を閉ざしたままだ。
マシンは二十四時間休まず活動し続けるものの、なぜか水曜日だけはその姿を見せていない。
最近では水曜日を「プレミアム・ノーマシンデー」と名付け、割引サービスをして来店利用を促す小売店や飲食店などが増えていた。
姿を見せない原因は、オーバーホールの為とも、活動エネルギー補給の為とも言われているが、詳しいことは全くわかっていなかった。
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