第2話

 稲妻のような激しい笑い声で、まどろんでいたわたしの目が開いた。画面の中、いくつもの照明に照らされた眩しい舞台には、額に汗を抱えた二人組がぼんやりと映っている。目を細めて見ても、二人の輪郭は霞んでいる。眼鏡を探そうとする手が生まれたてのヤギみたいに机を這い回って、やっと捕まえたのは眼鏡ではなくて携帯電話だった。

 時刻は20時を回っている。そして、25件もの通知が画面を覆い尽くしている。

「最悪。」

 小さくそう呟いた理由は、まどろみに負けて寝ていたからではない。いや、それもあるが、むしろもっと良くないことに対してだ。『20時、東京』の通知。電車はもうとっくに出ている。手遅れだった。地元で開かれる同窓会、それに間に合う最終電車だった。


 大きなため息と一緒に


 「死にたい。」


意味もなく呟いてみる。誰もいない部屋に、死を轟かせる。死にたい。死にたい。・・・本当に?


 意味のない呟きに、無意味な自問自答がぶつかる。狭い頭の中で何度も反響する「死にたい」が、やがて意味の薄れた単語に変わるまで わたしは呟き続けた。


 夜が容赦なく更けていく。薄暗い灯りのもとで、生ぬるい部屋の中で、わたしの夜は更けていく。

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