第11話 赤弟子と情熱

 エルブレンに着いた。御者とは直ぐに別れた。

 俺とユリアはお礼を言うと『気にしないでいいですよ。私も楽しかったですから』と言っていた。

 御者はこれから冒険者ギルドに行って魔王の事を伝えてから戻るらしい。行ったり来たりで大変そうだ。


 それから俺達はさっそく宿をとった。宿主から鍵を貰った。二階の奥の部屋で二○六室だ。

 部屋に空きが無いらしく、俺とユリアは一緒の部屋で寝ることになった。ベッドは二つある為、狭くて困るということにはならなそうだった。良かった。本当にね…。

 そして、俺達は荷物を部屋に置き、グラウスから貰ったローブを着て、町の酒場に行くことにした。

 宿主にこの町で一番美味しい料理が出てくる店は何処だと聞くと酒場だと言われたからだ。

 何でもここの鶏肉料理は絶品らしい。楽しみだ。


 それから俺達は料理に期待しながらその酒場へとやって来た。入る前から賑わっているのが分かる。


 席空いてるかな?


 そんなことを思いながら酒場の扉を開けた。


「いらっしゃい!今、テーブルは埋まっててな、カウンターで良ければどうぞ」


「どうする?」


「いいよ」


 そんな会話をした後、俺とユリアはカウンターの席に着いた。

 俺はチラッと周りの奴らのことを見た。お酒を飲んでかなり酔っ払っている様子だ。


「酒が美味い!料理も美味い!最高だぜ!!」


「後は女がいればもっと最高なんだけどな」


「お前、このあいだフラれてたろ?」


「シ〜〜、声がデカいんだよ!バカ!」


 何処の席の奴らもどんちゃん騒ぎだ。正直、少しうるさい。


「あの人達、楽しそうだね?」


「ん?ああ、まあな」


 意外にもユリアは面白そうにしていた。こういうの好きなのかな。

 それから俺達はお品書きを見てどれを食べようかと迷っていた。

 暫く悩んだ末、お互い好きな物を注文した。


「人族のああいう姿を見ると、悩み事なんか何処かに吹き飛んでいきそう」


「まあ、確かに…そうかもね」


 俺はユリアにそう言われてもう一度彼らの方を見る。

 確かに悩みなんて一つも無さそうなそんな顔をしている。実に楽しそうだ。


「ユリアはこういうのは好きなの?」


「フフフ、ここまで大騒ぎしないけど、でも、好きだよ。こういうの」


「へぇ〜…」


 微笑んでいるユリアを見ると、羨望の眼差しを向けているように感じる。何かを思い出しているんだろうか?



 それから少しすると、俺達の頼んだ料理が来た。俺は鶏肉を素揚げした物、ユリアは焼いた鶏肉にタレを掛けた物だ。


「美味しそう」


「そうだな」


 ユリアは目を輝かせている。そんな姿を見て俺はつい頬が緩んでしまう。


「ん?どうかした?私のも少しあげようか?」


「ああ、うん。ありがとな」


 それから俺達はお互いの料理を一口分だけ交換した。


「それじゃあ、いただきます!」


「いただきます」


 美味い。あの宿主がこの町で一番と言うだけのことはある。

 それから俺は交換したユリアの方の料理も食べた。こっちも美味い。

 もしかしたら、ここの料理は全部美味しいかもしれない。

 そんなことを思っていたら、ユリアは幸せそうな顔をして頬を押さえていた。可愛いな、おい。

 その後、俺達二人はこの美味しい料理を堪能していた。

 馬車では持ってきた食料を大事に食べていた所為か尚更この料理が美味く感じた。

 と、料理に感動していると、俺の二つ隣のカウンター席に客が一人座った。


「ここの一番人気のメシをくれ。腹が減ってるんだ」


 俺はその声の主を見た。何故見たかと聞かれると答えは簡単だ。その座った女性は目立つのだ。それも遠目からでも目立つぐらいに。

 女性は癖のある長い赤髪。女性なのに筋肉質な体つきで日焼けした様な薄黒い肌。腰には刀身が太そうな剣を下げている。

 そして、胸はかなり大きい。胸当てを着けていても存在感がある。多分、ユリアと同じぐらいだ。体型が筋肉質とはいえ、すらりとしている為、尚更目立つ。この体付きを目指す女性もいるだろう。

 しかし、何と言っても一番の特徴は頭と腰にあるものだ。赤い毛で覆われた狐耳と狐の尻尾。

 この女性は大人の雰囲気を持った美人の獣人だった。


「ん?」


 俺がこの女性を見ていると目が合った。赤い目は鋭い目付きでこちらを見ており、不思議そうな顔で狐耳をピクつかせている。


「どうかしたか?」


「あっ…いえ」


 俺はここで目を逸らした。目付きの所為もあるのかもしれないが、全体的にキツい感じの印象を受ける。

 もし、何かの間違いで触ったら火傷しそうだ。


「なあ、姉ちゃん!一緒に俺達と飲まねえか?」


 酔っ払いが女性に話し掛ける。こいつら勇気あるな…

 そんな事を思っていると、女性ははぁと溜め息をついて見向きもせず、


「飲むわけないだろ?お前らで勝手にやってろ」


 そう言って、女性はコップに入った水を一気に飲み干した。


「ええ〜、何だよ!つれねぇなぁ〜!!」


「何だよ!断られてんじゃねぇ〜か!!」


 その場に居た酔っ払い連中が騒がしく笑っていた。どうやら、ウケたらしい。少し飲み過ぎじゃないか?

 そう思っていると、女性は小さな声で「男はどいつもこいつも何でこうなのか…」と言って、コップに水を注ぎながらつまらなそうな顔をしている。

 もしかしたら、過去に何か苦い思いでもしたのだろうか?


「あの…」


 俺は声のした方へ振り返る。

 そこには茶髪で片目の隠れた二十歳ぐらいの顔が整った青年が立っていた。確か一番端のテーブルに座っていた唯一、大人しくしていた青年だ。

 しかし、声を掛けられたのは俺ではなく、あの女性だった。


「はぁ……今度は何だ?私は疲れているんだが?」


 女性は青年の方へ振り返って面倒臭そうな顔をしている。

 そして、左手はカウンターに乗せたまま寄り掛かるようにしている。完全にダルいんですけどという雰囲気を出していた。

 しかし、青年は少しも引き下がらない。そして、顔を赤くして緊張した口調で、


「俺の名前はウェッヂ。いま貴方の事を見て衝撃が走ったんだ!一目惚れだ!俺と結婚してくれ!!!」


 その余りにも唐突で衝撃的な告白に俺とユリアは思わず「えっ!?」と驚きの声を上げていた。


「お前、正気か?」


 女性はさっきまでと変わらない強い感じの口調で言った。


「俺は本気だ!何処までも貴方と一緒に居たい!」


 ウェッヂのこの熱い告白にここにいる酔っ払い連中の盛り上がりは最高潮に達していた。「いいぞ!」「頑張れ!ウェッヂ!」などと言う声があちらこちらから聞こえてくる。見世物だな、こりゃ。


「……駄目だ」


 女性はウェッヂの目を真っ直ぐ見て今までの怠い感じではなく、真剣な感じで言った。


「そんな!どうして!」


 ウェッヂは必死になって聞く。すると、女性は腕を前で組んで、


「私は冒険者だ。いつ死んでもおかしくない。それに今は人を探して旅をしている途中だ。友達との約束でな、途中で諦めるわけにはいかない」


 女性は淡々と言った。


 なるほど、だから剣を持っていたり、胸当てをしてたりするのか。


「なら、俺も付いて行く!」


「いや、お前話し聞いてたのか?何処に行くかもどれだけ時間が掛かるかも分からないんだぞ?」


 今までと変わらない口調で言っていたが、俺には女性が初めて狼狽したように思えた。


「貴方となら何処にでも行ける!どれだけ時間が掛かってもいい!貴方と一緒に居られるなら、俺はそれがいい!それ以外要らない!!!」


「……」


 ウェッヂの言葉に女性は初めて少し分かるぐらい戸惑っていた。

 顔には出ていないが、狐耳も尻尾もピンと立っている。獣人族の癖のようなものなのだろうか。

 と、その時、女性は何かを振り払うように顔を横に振った。そして、コホンと咳払いをすると、


「駄目だ。旅は危険だ。それにお前はまだ若い。私より十は下だ。考え直せ」


 断られた。ウェッヂはどうするんだ。

 気付けば俺はこの二人の行く末が気になり、食べるのもやめて見入っていた。


「いやだ!俺は貴方が好きなんだ!」


 それからはウェッヂがこの女性の好きな所を一つ一つ言って褒めていた。女性は最初こそ顔に出していなかったものの、褒められすぎたことで顔を真っ赤にして狐耳と尻尾を立てていた。

 しかし、ウェッヂの猛攻はまだ止まらなかった。

 赤い目が宝石みたいで綺麗だとか、赤い髪が太陽みたいに俺の心を温かくしてくれるとか、それはもう丁寧に何処がどう素晴らしいのか力説していた。

 ウェッヂがもし何かの商売をすることになったら、恐らく、かなり繁盛するだろう。そう思えるぐらい口からすらすらと言葉が出ていた。


「ダ、」


 と、その時、何かを言いたそうにしながら真っ赤な女性は立ち上がった。そして、


「ダメなものはダメなんだ!!!」


 そう言いながら腰を落とすと、左足で勢いよくウェッヂの顔面に向けて蹴った。

 ウェッヂは酒場の入り口の方まで体を回転させながら空を飛んでいった。

 その蹴りの威力が大きくて、旋風を起こし、俺とユリアのフードが脱げた。

 と、伸びているウェッヂの様子を見た酔っ払い達が笑いながら「派手にやられたな」「こちら側へようこそ」とか言いながら騒いでいた。本当に呑気な奴らだ。


「これで良かったんだ」


 そう言って顔を真っ赤にしながら座った。すると、女性は俺達の方を見て驚いた顔をしていた。


「貴方はもしかして、エルフか?」


「あっ!」


 ユリアは急いでフードを被る。

 周りの奴らはウェッヂの方を見ている為、他にはバレていないようだ。俺も遅れて一応、フードを被る。


「聞きたいことがあるのだが、エルフの村に十歳ぐらいの女の子の獣人を知らないか?」


「「女の子の獣人?」」


 それから俺達はこの女性から話を聞いた。まず、この女性の名前はヴァイオレッドというらしい。

 ヴァイオレッドが旅をする理由。

 それは親友の娘さんが人攫いにあったそうだ。それでその攫われた娘さんを助ける為、現在、一人で旅をしているらしい。

 攫われた娘さんの親、つまり、ヴァイオレッドの親友はいま妊娠していて身動きがとれず、夫も生活の為に働かないとお腹に子供を宿した最愛の妻諸共、餓死してしまう。

 そこで村のみんなで手分けして攫われた娘を探すということになったらしい。

 実はこういうことは初めてではないらしい。というか四、五年に一回は起きるんだとか。

 何でも獣人族の子供は忠実で体は丈夫、物覚えも良く、奴隷としてとても高く売れるらしい。

 そこに目を付けた悪党共が一生懸命人の目を盗んで人攫いをするということだった。

 話しているヴァイオレッドの声音は怒りを帯びていた。そりゃそうだ。俺もミーシャの件で同じ思いをした。


「だから、こっちの地域には私が来ているが他の場所にはまた別の奴が探しに行っている」


「なるほど」


「そういうことだったんですね」


「ああ。だが、正直、攫われた者が村へ無事に戻ってくることはほぼ無い」


「そんな…」


「何処に行ったのかも分からない。どんな姿でいるのかも分からないでは探すのが難しいんだ。何年か経てば子供は成長して大きくなる。特に獣人族の子供は大人になるまでが他の種族に比べて早いからな」


 獣人族の子供は成長が早いのか。初めて知った。


「それに奴隷として買われると買った本人の”物”扱いになる。所有物になった奴隷をタダで渡してくれる者は本当に稀だ」


「……」


 ユリアはその話を浮かない顔で聞いている。俺も似た様な顔をしているだろう。


「かく言う私も子供の頃に攫われたからな」


「えっ!?ヴァイオレッドさんも?」


 俺は驚いた声で聞いた。ユリアも声には出していないが驚いている。


「ああ。私が確か…十歳になる少し前ぐらいにな」


 と、その時、ヴァイオレッドの料理が運ばれてきた。ユリアと同じ物だ。


「美味そうだな」


 そう言って料理を一口食べた。


「美味い!」


 よっぽど腹が減っていたのか、ヴァイオレッドはあっという間に料理を食べ切った。


「私はただただ運が良かった。師匠に拾われたからな」


 ヴァイオレッドは何事もなかったように話を続けた。


「師匠というのは?」


 ユリアが不思議そうに聞く。


「ああ、私の師匠は剣神、オルファリオンという」


「なんか聞いたことあるような…ないような…」


 剣神もオルファリオンも聞いたことがない。

 長耳〈エルフ〉族のユリアでも聞いた可能性があるぐらい有名な名前なのだろうか?


「師匠はよく奴隷になった子供や攫われた子供を助けたりしていた。困った者がいれば手を貸してやったりもした」


「へぇ〜」


「良い人なんですね」


「いや、アイツ〈師匠〉はゴミ屑だ」


 そう言われた瞬間、俺とユリアはぽかんとした顔をしていた。

 今の今まで好印象だった『師匠』がアイツ呼ばわりされ、剰えゴミ屑と言われている。一体、何をどうしたらそんなことになるんだ?


「まあ、人助けに関して言えば私も尊敬している。だが、それ以外が駄目だ。はっきり言って終わっている」


 ヴァイオレッドさん、言い過ぎじゃないか?


「事あるごとに適当なこと言って私達の胸や尻を触り過ぎだ。あのエロジジイめ…」


 ヴァイオレッドはそう言って、拳を握り締める。林檎ぐらいなら木っ端微塵になっているだろう。そのぐらい力強く拳を握っていた。


「あの…私達というのは?他にもいたんですか?」


 ユリアが苦笑いしながら聞く。


「ああ、私とヒルダとラーチェル。いつも三人で師匠に付いて旅をしていた。赤髪のヴァイオレッド、黒髪のヒルダ、青髪のラーチェル。髪の色がみんな違ったからな。他の奴らからはそれぞれ赤弟子、黒弟子、青弟子と呼ばれていたこともあった」


「へぇ〜、仲良かったんですか?」


「ああ。十年近く一緒に旅をした。私達は姉妹だ。少なくとも私はそう思ってる。今は何処で何をしているやら」


「分からないんですか?」


「ああ、私が一番最初の弟子だったからな。離れるのも一番最初だったんだ」


「なるほど」


 黒弟子のヒルダに青弟子のラーチェル…どんな人なんだろうか。それに師匠との関係性もあまりよく分かっていない。


「ヒルダさんとラーチェルさんはどんな人なんですか?」


「そうだな…ヒルダは鬼族〈オーガ〉だ。長い黒髪に赤い目で一本角がある。他の特徴は…ヒルダは美人だ。私達の中で一番モテた。黒髪、赤目、そして、白い肌。あの色彩は綺麗だったな……」


 そう言って遠い目をするヴァイオレッド。思い出して懐かしんでいるのだろう。

 しかし、ヴァイオレッドもかなり美人だと思う。その本人が一番モテて美人だという人物なのか、絶世の美女ってやつか?


「それとラーチェル。彼女はノレイド族だ。肩ぐらいの青い髪に紫色の目をした妹みたいな子だった。ノレイド族は魔法が得意な種族なのに師匠が剣を教えると言って聞かなくてな。大変だった覚えがある。結局、ラーチェルが一番剣の腕が伸びるのが遅かった。だから私は…」


 そう言って、ヴァイオレッドはまた拳を握る。よほど師匠に恨みでも持っているのだろう。

 しかし、ノレイド族か…聞いたことがない気がする。やはり、記憶が飛んだりしてるんだろうか?


「ノレイド族っていうのは?」


「確か封印魔法が得意な種族で薄い空色のような青い髪が特徴的な殆ど人族と変わらない種族だった気がする」


「ほお」


 なるほどね。


「そうだ。久々に会いたくなったな……師匠には会いたくないが。…ったく、なんで、あんなに剣の腕が良いんだ。腹が立つエロジジイだ」


 剣神って言うぐらいだしな。ヴァイオレッドの反応から見ても剣の腕は相当良いらしい。


「因みにその師匠はどのぐらい強いんですか?」


 俺は単純に気になることを聞いてみる。


「どのぐらいか…そうだな…私は一度も勝ったことが無い。真剣を使った模擬戦でも掠りすらしなかった。それどころか私達三人が束になって掛かっても全く話にならなかった」


 そんなに強いのか。さっきのヴァイオレッドの動きはかなり洗練されていたように思えた。それでも手も足も出ないというんだから、凄いなこの師匠。


「そして、負けた罰として胸や尻を揉まれた。三人とも全員だ。暴れても勝てないからされるがままなのが尚更腹が立つ。何が悲しくて胸や尻を揉まれなければいけないんだ」


 ヴァイオレッドはかなり苦労されたご様子だった。


「まあ、誰にでも欠点はありますから。きっと、三人の弟子が可愛かったんですよ」


「うむ…まあ、そうなのかもしれない……いや、よくよく考えて師匠はいつも女性を助けていた。男性は私達が助けていた。もしかして、わざとやっていたのか……」


「まあ、とにかく、今は行方不明の娘さんについて教えてくれ」


 これ以上、変態師匠の株を下げることもないだろう。


「ああ、そうだったな」


 そこでヴァイオレッドはハッとした顔をし、いつもの調子を取り戻した。


「その子の名前はヒカリ。小麦の色を薄くしたような色の髪をした女の子で少し垂れ目の黄色い目をした、おっとりとした雰囲気のある子だ。猫耳で今は確か七歳だった筈だ」


「ん〜、俺は知らないな」


「ごめんなさい。私も見覚えは無いかな。そもそもエルフの村は簡単に出入りできないし…」


「そうか……」


 明らかに落ち込むヴァイオレッド。

 俺も奴隷として暫く生活してたから何となく他の奴隷の顔は覚えてる。でも、その中にいま言った特徴に当てはまる子はいなかった。


「まあ、地道に探すしかないな」


 そう言ってヴァイオレッドはいつもの調子に戻った。


「俺達も探してみるよ。暫く旅をすると思うし」


「本当か!」


 狐耳と尻尾をピンと立て反応する。


「はい。これも何かの縁です」


「そうか、すまない。もし、見つけたら冒険者ギルドに伝えてくれ。時間は掛かると思うが私の所まで情報が来る筈だ」


「冒険者ギルドか…」


 バスクホロウを出る時、グラウスに困ったら冒険者ギルドに行ってみるといいと言われたな。

 まさか、こんなに早く世話になるとは思わなかった。でも、どんなとこなのかイマイチ分からないんだよな。


「もしかして、冒険者ギルドに行ったことないのか?」


「はい。私達はこれから旅を始める所なので」


「なるほど。だったら、明日時間はあるか?ヒカリの為にも貴方たちの今後の旅の為にも、冒険者ギルドがどんな場所か簡単に説明したい」


「分かりました。いいよね?」


「うん」


 願ったり叶ったりだ。いつかはお世話になっていただろうし、ヒカリという獣人の女の子のこともある。旅が少し遅れるぐらいで長い目で見たら誤差だろう。

 なんなら冒険者ギルドのことを知れる分、こっちの方が早道になるかもしれない。


「それじゃあ、明日の朝、九時頃に冒険者ギルドで待っている」


「「はい」」


 ここで俺達とヴァイオレッドは解散した。

 その後、ヴァイオレッドは酒場の入り口で伸びているウェッヂを担いだ。そういえば、いたね。忘れてたよ。

 その時、「こいつの家は何処だ?」と酔っ払い共に聞くと「何だ?嫁入りするのか?」と茶化しながら笑っていた。

 それから彼女は茶化されながらも教えてもらい、ウェッヂの家に向かって酒場を出て行った。大変だな。

 まあ、ヴァイオレッドも悪いことをしたなという顔をしていたしな。力を込めすぎたのかもしれない。


 それから俺とユリアは会話に夢中で冷えたしまった料理を食べて宿に戻った。

 帰り道はヴァイオレッドとウェッヂの話で盛り上がった。ああいうこともあるんだな…

 因みにあの店の料理は冷めても美味かった。

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