第10話 緊急突発初めての凸配信
配信のチャット欄に現れたエリザベアーに通話をかけることになったマレ熊。
突発初凸は果たしてどうなるのか? リスナー達が見守る中、通話に出る音が響いた。
ピロン♪
「こんばんは。エリザベアーです」
「わ、わ、こんばんは。マレ熊です」
「あの、まず謝らせてください」
「ふへ」
エリザベアーからの突然の謝罪に、マレ熊は口から間抜けな音をもらしてしまった。
「急にコメントして配信を荒らしてしまってすみません。マレ熊さんのリスナーさんも……急にお邪魔してしまって申し訳ありませんでした」
コメント:いーえ、とんでもないベア様ようこそおいでくださいました!!
コメント:むさくるしいところですがどうぞ!
クッチャマ:うちのマレ熊を何卒よろしくお願いします
「そんな荒らすだなんて、全然そんなことないですよエリザベアーさん!
ほら、リスナーも喜んでますし。わたしも通話してもらって感謝こそすれ……」
「そう言ってもらえるとありがたいです。……実は、私も以前風邪をおして配信した結果、ひどくこじらせてしまったことがあるんです。その時のことを思うと心配でつい」
「気にかけてくださったんですね、ほんとに通話ありがとうございます。心に沁みます」
「風邪の時は心細くなりますからね。熱は上がってないですか?」
「あ、ずっと測ってないかも。今測ってみます」
「結果が出たら教えてくださいね。ご飯は何を食べましたか? 薬は?」
「(あれなんかわたし尋問されてる?)うどん食べて薬は飲みました。あ、熱測れました……えーと、……38.5℃です」
「……上がってますね」
「はい、安静にしなきゃですね。でもこの後配信切って、みんなのコメントも見れずエリザベアーさんともお話しできず部屋に一人きり……ううっ孤独すぎるそんなの……スン」
「マレ熊さん? もしかして泣いてます? 泣くほど心細いんですか? うーん、
そんなマレ熊さんに配信ストップかけるのは忍びないのですが……」
「忍びないですよね。こんなわたしを孤独にするのは」
「え? あ、はい。(……マレ熊さん、言動がおかしくなってきましたね。これは一刻も早く休ませなければ)私に何かできることありますか? 通話以外でもお役に立てることがあれば……」
「ほんとですか!? じゃあエリザベアーさんうちに遊びに来てください!」
「え?」
「ディスコードのチャットに住所はりますね! えい!」
「わ、本当に住所を……マレ熊さん前も言ったけど無防備すぎますよ」
「だってだってエリザベアーさんが来てくれたら寂しいのも治るはずです……スン」
「あぁ、泣かないでくださいよ。困りましたね、さすがに家に行くのは……。マレ熊さん、それ以外で私にしてほしいことないですか? 実現可能なことなら何でもしますよ」
「なんでも、ですか」
「え、えぇ何でも……」
「じゃあじゃあ今度一緒にゲームしてください!」
「……えっと、それはコラボってことでしょうか?」
「配信外でもいいし、配信でもどちらでも! エリザベアーさんと一緒にゲームで遊んでみたいんです!」
「ん……まぁ、それなら実現可能ですね」
「!! なら、OKですか?」
「えぇ、いいですよ。それであなたが満足するなら……」
「やたーーー!! みんなやったよーーー!」
シベチャチャ:マレ熊よかったな
クッチャマ:配信でしてくれ頼む!
コメント:配信してほしいけど、裏でやるならあとでその時の話絶対聞かせてくれ
コメント:早くもコラボ実現か
コメント:まさかマレ熊がコラボのお誘いできるとは。まぁ半分熱で正気じゃないが
「みんな、ありがとう! みんなが凸しろって言ってくれたおかげだよ。あーなんか嬉しさでクラクラしてきた」
「それ、風邪が悪化してません? 今度あなたが好きなだけ付き合いますから、今日は休みましょ? ね?」
「は~い。わかりました~ごめんね、みんなゲームの途中で」
シベチャチャ:いや気にすんな。体調悪いのに無理することない
クッチャマ:ベア様との緊急凸配信、最高だったぞ! もう休んでよし!
コメント:まさか本当に凸るとはwお疲れ~お大事にな
「うぅ、みんな優しい、なんかまた涙が……だめだ情緒おかしい。寝た方がいいですね……エリザベアーさん本当に通話ありがとうございました」
「私こそありがとうございました。マレ熊さんのリスナーさん達も急な配信参加にも関わらず暖かく見守ってくださり、感謝いたします。それではお大事に」
「おやすみなさい、エリザベアーさん」
「おやすみなさい、マレ熊さん」
ポロン♪
「ふぅ~あー熱上がってきた感じする……じゃあみんな、お言葉に甘えて今日の配信はここまで。また遊ぼうね」
シベチャチャ:お疲れ。しっかり休んで
クッチャマ:おつおつ。お大事にな~
この配信は終了しました。
通話を切ったエリザベアーは呆然と呟いた。
「流れでコラボすることに……どうしよう、1対1でコラボなんて初めてだ」
翌日。しっかり睡眠をとって熱も大分下がったマレ熊は撃沈していた。
「やらかした……かんっぜんにやらかした」
マレ熊は昨日の自分の配信アーカイブを見直していた。画面から自分の甘えた声が聞こえてくる。
『ほんとですか!? じゃあエリザベアーさんうちに遊びに来てください!』
「ぎゃーやめてわたし!」
『だってだってエリザベアーさんが来てくれたら寂しいのも治るはずです……スン』
「うう……コロシテ……コロシテ……」
『エリザベアーさんと一緒にゲームで遊んでみたいんです!』
「で、結局厚かましくコラボの約束取り付けちゃってるしーー! リスナーの皆も止めてよ~~!」
(エリザベアーさん、困っただろうな。心配して配信に来てくれたのにこんな絡まれ方して)
「あ~早くエリザベアーさんにお詫びのチャット送らなきゃ。それで昨日のことは忘れてくださいって言わなきゃ!」
うんうん唸って文章を考える。結局一時間も熟考し、ひねりだした文章は非常に固いものだった。
『エリザベアー様、お疲れ様でございます。マレ熊 茶子です。昨日は大変失礼な態度をとってしまい、誠に申し訳ありませんでした。
通話の際、私は熱で
コラボの件につきましては、万一にもエリザベアー様に迷惑がかからないよう、私からリスナーへしっかり説明させていただきます。
本当にこのたびはご迷惑をおかけいたしました。深く反省し、今後このようなことがないよう注意を払って活動して参ります。大変申し訳ございませんでした。』
「……できた。これ以上はもう思いつかない」
渾身の謝罪文をエリザベアーに送ろうとしたところ、チャットが来ていることに気付いた。文章を考えるのに集中していたせいで見逃していたのだ。
【マレ熊さん、風邪はどうですか? 元気になったら、二人でやるゲームのことなど相談したいです。体調良くなったら教えてください。ではお大事に】
エリザベアーからのチャットだった。
「!!!???」
そのあと、マレ熊は再び謝罪文を考え始めたが、結局思いつかず、すみませんを連発したチャットを打ち、それをエリザベアーがフォローして……なんだかんだでコラボは行う、という結論になったのだった。
これがリスナーも知らぬマレ熊とエリザベアーのコラボ配信始動の瞬間だった。
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